日本経済

黒田日銀残り1年半。日銀の金融緩和は本当に限界なのか?

 

 

2016年9月20、21日の日銀金融政策決定会合でこの3年半の総括的な検証が行われ新しい枠組みとして「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の導入が決定されました。マイナス金利の深堀り等追加緩和がなかったことなどから金融緩和は限界であるという声も少なからず挙がっています。今回は本当にそう言い切れるのか考えていきましょう。

 

「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の具体的な内容
長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)、オーバーシュート型コミットメントとは

まずは、この3年半に行われてきた「量的・質的金融緩和」、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の総括的な検証の結果を簡単に説明します。

一言でいえば、概ね有効な政策運営がなされたということになるかと思います。

しかし、現実には以下のように2%の物価安定目標は達成されていません。

 

インフレ率から見る日本経済の現状

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総務省統計局「消費者物価指数年報 平成27年」を基に作成

 

この2%の物価安定目標を阻害した要因としては、①原油価格の下落、②消費税率引き上げ(2014年4月5%→8%)後の需要の弱さ、③新興国経済の減速とその下での国際金融市場の不安定な動きの3点が挙げられています。

こうした総括的な検証の結果、今回導入が決定されたのが「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」ということになります。

それでは次にこの「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の具体的な内容についてお話していきます。

「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」は以下の図のように「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)」と「オーバーシュート型コミットメント」の2つに大きく分けることができます。

 

「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の具体的な内容

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日本銀行「金融緩和強化のための新しい枠組み:「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」」(2016年9月21日)を基に作成

 

「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)」についてとくに注目されるのは長期金利のほうです。

短期金利は今年(2016年)1月29日に導入決定され、2月16日より実施されているマイナス金利政策そのもので現状維持となっています。

一方、長期金利は今回初めて0%程度という操作目標が設けられました。

そして、これを行うにあたって新型オペレーションとして日銀が指定する利回りによる国債買入れ(指値オペ)とこれまで1年としていた固定金利の資金供給オペレーションを行うことができる期間を10年に延長を導入することとしています。

ここでイールドカーブについて簡単に説明しておきましょう。

イールドカーブとは縦軸を債券の利回り、横軸を債券の残存期間(満期までの年数)として両者の関係を表す曲線のことです。

 

イールドカーブのイメージ図

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ここで上図のように短期金利と長期金利の差が小さくなることをイールドカーブのフラット化、短期金利と長期金利の差が大きくなることをイールドカーブのスティープ化といいます。

通常は横軸の債券の残存期間が長くなるほど利回りが高くなります。

しかしながら現状はマイナス金利導入によってイールドカーブが全体的に低下する一方でフラット化している状態にあります。

そこでこの「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)」によってイールドカーブを意図的にスティープ化させる、つまり短期金利を低く保つ一方、長期金利を0%程度に(現状からすると)やや持ち上げようということになったわけです。

ただ、これは長期金利がマイナス利回りで推移している限りにおいては長期国債の買入れを縮小させる、つまりテーパリングに他なりません。

日銀は”買入れ額については、概ね現状程度の買入れペース(保有残高の増加額年間約80兆円)をめどとしつつ、金利操作方針を実現するよう運営する。”と説明していますし、また黒田日銀総裁も会合後の会見で明確にテーパリングを否定していますので、実際の政策運営がどのようになされるか気になるところです。

「オーバーシュート型コミットメント」については2%の物価安定目標が安定的に実現するまではマネタリーベースの拡大方針を継続するというものです。

とはいえ、これについても前述したように長期金利がマイナス利回りで推移しており結果的にテーパリングせざるをえない状況下で、本当にコミットメント(約束)できるものなのかどうか懸念が拭えません。

 

それでも日銀の金融緩和が限界とは言い切れない理由

ここまでをお読みいただくと「やっぱり日銀の金融緩和は限界ってことだよね」と結論づけられても致し方ないように見えます。

しかし、実は重要な点が一つ抜け落ちています。

それは日銀ではなく、政府の財政政策がどのように運営されるかということです。

長期金利の上下動は外的要因にも左右されますが、一般に財政支出の縮小は長期金利低下要因、財政支出の拡大は長期金利上昇要因といえます。

この前提で考えると、財政支出の縮小(緊縮財政)を政府が行うと長期金利は現状よりもさらに低下するので、長期国債の買入れを弱める、つまり先ほど申し上げたテーパリングせざるをえないことになります。

これは緊縮財政+金融引き締めのポリシーミックスということになりますので、これによって日本経済は悪化する可能性が高まります。

一方、財政支出の拡大(財政拡張)を政府が行うと長期金利は現状より上昇することになるので、この上昇を抑えるために、より一層長期国債の買入れを強める必要があります。

これは財政拡張+金融緩和のポリシーミックスということになりますので、これによって日本経済は好転する可能性が高まります。

後者については安倍政権発足当初に想定していたアベノミクスの財政金融政策(※)に他なりません。

※ ヘリコプターマネー政策は日本経済の特効薬となるか?を参照のこと。

 

財政拡張と金融緩和のポリシーミックス「アベノミクスの財政金融政策」

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こう考えていくと、今回の会合による日銀の「長短金利付き量的・質的金融緩和」の導入決定は、今後の金融政策の方向性を政府の財政政策に紐付けたという見方もできるかと思います。

もちろん2020年までのプライマリーバランス黒字化目標を前面に出して政府が緊縮財政を行えば、日銀も事実上の金融引き締めを行うことになるでしょうし、そうなれば巷間言われている金融緩和の限界が現実のものとなってしまうでしょう。

しかし、世界的に需要不足が懸念され財政支出の拡大が望まれている現状を踏まえれば、現時点では政府が財政拡張を行い、これに伴って日銀がより一層金融緩和を行う可能性は残されています。

この点からいえば、日銀の金融緩和は少なくともまだ限界とは言い切れないのです。

 

 

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