ですが、少し立ち止まって考えてみましょう。その制度、本当に皆さんに合っていますか?その情報、本当に皆さんに共通して言える内容になっていますか?
ここでは、本件について筆者が普段感じていることを少しだけお話ししていきたいと思います。
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、老後の資産形成をする制度として税制メリットも大きく、よい制度であると筆者も感じています。iDeCoについて内容を確認したい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
筆者がそのように思っているわけですから、SNSなどではとにかくiDeCoをやるべき!まずiDeCoから!なんていう投稿も見受けられるくらいです。
そう、老後資産のためにお金を貯めて増やしたい!という意向なのであればこの制度ほど素晴らしい制度もなかなか見つけることができないのが実情です。
ですが、これは特に20~30代の方や手元の現金が少ない方などにお伝えしているのですが、そのお金は本当に老後のためだけにお金を貯めると決めてしまってよいのでしょうか?
これはよくお客様にもお話ししていることですが、何も考えずにとりあえず60歳まで原則下ろすことができない箱にお金を貯めてしまうと、住宅資金や、教育資金などに利用することができなくなってしまいます。
確かにiDeCoはよい制度ですし、老後に向けた資産形成は必要だと思いますので、使いたい制度ではあるのですが…物事には順番があると思っています。特によくSNSなどで謳われている税制メリットの部分は、所得が高い人ほど効果が大きいため、一般の新卒社員の方などはその恩恵を大きく受けることはできません。
iDeCoと同じように長期的にお金を貯めて増やしていく制度としてつみたてNISAもあります。目的に応じて使う制度を選ばないと税制メリットだけを見ると失敗しかねません。
みなさんはちゃんと目的から制度を選んでいますか?
これもSNSでよく見るものですが、生命保険は今すぐ解約し、つみたて投資をするべき!という論調です。
生命保険は効率が悪いため不要!医療保険も不要!果たして本当にそうなのでしょうか?
筆者も全ての方に保険が必要だとは思いませんし、保険だけで全てが解決できるなんていう魔法みたいな言葉も違うと思っています。十分な貯蓄があるならば保険は保障という観点では不要なのかもしれません。(保険の使い方という点では富裕層の方にも有効なツールだと思いますが、ここでは長くなるため割愛します。)
ですが、もし万が一何かあったときに十分な貯蓄がなかったらどうでしょう?
確かに遺族年金というものもありますが、どれくらいの金額をもらうことができるか調べてみるとよいかもしれません。
また、医療保険不要!という論調の前提にあるのは、今の日本の社会保障制度が継続するということが大前提です。ついこの間、後期高齢者医療制度が改正され1割負担が2割負担になることが決まったように、国の制度は刻々と変わるのです。
確かに保険にお金を回すより、貯蓄や投資にお金を回した方がお金を増やすことはできるかもしれません。ですが、そこだけがSNSで強調され、そこだけに視点が行ってしまうことで大切なことを見失っているような気がします。
そもそも、保険と証券では税制も商品内容も異なるわけですから、これらを一緒に比較するという行為そのものが少し違うのではないかとすら思います。
保険は保障を得るためのツール、投資信託は投資を行うツールです。ですから、保障が必要な人には保険が必要ですし、投資をしたい人には投資信託が必要です。
つまり、必要か不要かという判断はその人のライフプランや家族背景、持ち家か賃貸かなどによって異なり、全ての人に総じて不要!ということはないと思うのです。
他にもこのようなケースはたくさんあるのですが、時間があったら他のケースも記事にしてみたいと思います。
あくまでも筆者の考えであるということはお伝えした上で、ファイナンシャルプランナーとしてはこのような偏ったプランニングはできないなと思いながらたくさんのSNSを見ることにしています。
そういった意味でも、全ての分野を1つの窓口で相談できるということが正しいということを再認識するきっかけにもなったと思っています。
過去記事はこちら
【FP目線で考える5】給与明細とは?給与明細の見方と控除項目について
【FP目線で考える6】初心者の方必見!資産形成や資産運用(積立投資)をいつから始めればよいのか?
【FP目線で考える7】資産形成や資産運用における情報選択の必要性とは?
【FP目線で考える8】レディットやロビンフッドで熱狂!米国GameStop株が乱高下した、SNS時代ならではの理由とは?
The post 【FP目線で考える】その情報・その制度あなたに合っていますか!?SNS全盛期に思うこととは? first appeared on 資産形成.com .]]>収益力というのは、簡単に言えば「お金を稼ぐ力」で会社の価値を図る、そして今後の成長性を知る上でも非常に大切な指標です。
それでは詳しく見ていきましょう。
会社の価値は簡単に言ってしまえば、その会社が有する「収益力」と「資産」を合わせたものになりますが、会社の「収益力」を計るのは意外と難しいものです。
(注1)ちなみに「収益力」ではなく、「資産」を計るのは簡単です。会社が保有している世間で資産と認定されている「モノ」を足し算すれば良いだけですから、決算書の資産の部分を見れば誰でもわかります。
(注1)ここでは初心者が初めて株式投資を勉強することを前提に講義を行なっていますので、「のれん代」や「ブランド力」、「組織マネジメント力」「熟練工の技」といった帳簿に記載されない、「目に見えない資産」や「知的資本」といったものの説明は省いています。まずは削ぎ落とせるものは削ぎ落として簡単に全体像を掴み、そこから細かい分野を勉強していくということを資産形成.comでは推奨しております。
「収益力はお金を稼ぐ力だから、決算書とかの「売上」とか「純利益」って項目を見れば簡単にわかるのでは?」
というお声も聞こえてきそうですが、売上や純利益の金額の大小だけを見ても実は収益「力」というのはわかりません。
例えば「純利益10億円」の会社(A社)と、「純利益1億円」の会社(B社)があったとしましょう。数字の大小だけで言えば、B社よりもA社の方が純利益金額が9億円も多いので優秀な会社である、と感じるのではないでしょうか?
ここでA社とB社に以下の状況を加えてみましょう。
・A社はとても大きな会社で建設費100億円の大工場で製品を作っていて純利益10億円。
・B社は小さな会社で建設費5000万円の工場で製品を作っていて純利益1億円。
この状況が付け加えられた後だと、
A社は100億円の工場で10億円の利益なので、利益率は10%である。
B社は5000万円の工場で1億円の利益なので、利益率は200%である。
と表現できます。
実はこの例だけで、「ROE」と「ROA」の説明はほぼできるのですが、「会社が保有している資産をどれだけ効率良く活用して、「純利益」を挙げることが出来ているのか」を計算するのが「ROE」と「ROA」です。
先ほどの例でいえば、
「A社は100億円の資産があって、その資産に対して10%分にしか該当しない純利益金額は10億円である。」
と表現でき、
「B社は5000万円の資産しかないのに、その資産に対して2倍(+200%)に該当する純利益金額は1億円である。」
ということがわかりました。
そしてA社とB社を比較すると「利益金額はA社の方が大きいが、B社の方が収益力の高い会社である」とわかります。
このことはほぼ全てのファンダメンタルズ分析に言えることですが、決算書の1項目(例:売上や純利益)の数字の大小だけでは会社の能力を図ることはできません。
純利益が「1億円の会社」と「100億円の会社」だったら100億円の会社の方が優秀である、と単純に言うこともできます。
しかしファンダメンタルズ分析というのは、決算書に書かれている金額の大小に惑わされることなく、その会社が有能で価値ある会社なのか、無能で価値の無い会社なのかを判断するための分析手法です。
金額の大小ではなく、比率や倍率を使って会社の能力を評価していく作業である、と覚えておいてください。
それでは、イメージが掴めたところでROEについて見ていきましょう。
ROEとは「Return On Equity」の略で、自己資本利益率のことです。「自己資本に対して、どれだけ効率良く利益を生み出しているか」を判断するための指標です。
自己資本を簡単に言うと、他人から借りていないお金(資本)で、「誰にも返済する必要がない、自分が持っている自分のお金(資本)」という意味です。
自分が持っているお金というのは、株式会社は設立時に投資家から返済義務の無いお金を投資してもらって事業を始めますので、株主資本のことを言います。
「自己資本」=「株主資本」=「純資産」と初めは覚えてください。(注2)
(注2)厳密に言うと、会計上では株主資本と自己資本、純資産は違うものです。しかしここでは、財務分析をする上で、「自己資本」=「株主資本」=「純資産」とする方がわかりやすいのでそのように説明をしています。
そういった意味で、あなたはこれから株式投資を通じて株主になるわけです。そこでROEは投資先が株主の皆さんから集めたお金を使って、会社がどれくらい効率よく利益を生み出せるかがわかる指標であるとも言えます。
ROEの計算方法を見ていきましょう。
ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100
(その他の計算方法)
= EPS ÷ BPS
= 売上高純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ
(例)当期純利益が1億円、自己資本が8億円の会社の場合のROEは?
1億円 ÷ 8億円 × 100 = ROE 12.5%
という計算になります。
ROEは一般的に10%を超えると優秀な経営ができているとされますが、業種の違いや国の経済文化の違い(例:日本とアメリカ)によって評価は一律ではありません。
自己資本が大きい会社というのは、借金が少ない会社なわけですから安定経営だともいえるでしょう。一方で自己資本が大きい会社のROEを計算すると、分母の自己資本が大きいがためにROEは低い値が出てしまいます。
つまり『経営効率が悪い会社だよね』となってしまうのです。実際には景気動向や会社の歴史等々を見て、自己資本が大きい会社が優秀という場面だってたくさんあるのですが、ROEでの評価は低くなる場合があります。
(2)は(1)の反対で自己資本が少ない、つまり借入金が多くそのお金を上手に使って純利益が大きく挙げている会社の場合には、ROEは高い数値が出ます。
つまり自分たちの自己資本は少なく、金融機関等から借り入れして積極的に事業を行なって利益を上げている会社が、ROEの計算上ではとても優秀とされてしまう場合があるのです。
そのため知っていただきたいのが、1つの指標だけを見て投資判断をするのではなく、決算書やその他の財務指標、テクニカル分析等々を総合的に使用して、株式投資をすることを忘れないでください。
それでは次にROAを見ていきましょう。
ROAとは「Return On Assets」の略で、総資本利益率のことです。「総資本に対して、どれだけ効率良く利益を生み出しているか」を判断するための指標となります。
なんとなく聞くと、『さっきのROEと何が違うの?』と思ってしまいますよね。ROEは「自己資本」、ROAは「総資本」である点が違いますから、間違わないようにしてください。
それでは総資本を簡単に言うと、他人(金融機関等)から借りているお金(資本)も含めて会社が保有する全ての資産のことを指します。「いずれ返済する必要があっても、自分の手元に今ある全てのお金(資本)」という意味です。
つまり、とにかく会社が保有している全ての資産で、どれくらい効率良く純利益を稼ぐことができているか、を計算する指標です。
それではROAの計算式を見て行きましょう。
ROA = 当期純利益 ÷ 総資本 × 100
(その他の計算方法)
= 売上高利益率 × 資産回転率
(例)当期純利益が1億円、総資本が25億円の会社の場合のROAは?
1億円 ÷ 25億円 × 100 = ROA 4%
という計算となります。
ROAは一般的に5%を超えると優秀な経営ができているとされますが、ROEと同様に業種の違いや国の経済文化の違い(例:日本とアメリカ)によって評価は一律ではありません。
ROEとROAは先ほどもお伝えしたように、純利益を基準にする指標である点は同じですが、分母が「自己資本」なのか「総資本」なのかの違いがあります。
例えばですが、IT企業の場合には工場のような大きな設備を持っていないので、総資本を基準にして計算したところで企業の実態として見えてくるものは少ないはずです。
逆に、製造業の場合で大きな土地や工場を保有している会社については、総資本を基準に計算してみることでわかることも多いと言えます。
つまりどちらの指標が「良い」とか「重要」ということではなく、その業種や業界に当てはまるかが大事です。もっと言えば、業種や業界ごとにどちらの指標で判断すれば、「会社の実態」を把握できるかが変わりますので、双方共に計算できるようにしておくのが良いでしょう。
以上、ROEとROAについて解説しました。
そこで「EPS・BPS」と「PER・PBR」も学び、それぞれが何を計るための指標で会社の何の状態がわかるのかをもう一度おさらいし、投資に活かしましょう。
(参考)「EPS」と「BPS」とは? ファンダメンタルズ分析の代表指標の計算方法について解説
(参考)「PER」と「PBR」とは?株価の割安性を見る2つの指標についてわかりやすく解説
最後に、実は筆者は国内大手証券会社出身なのですが、入社前の大学時代に証券外務員の勉強をしていた時の思い出として、「PER」のようなアルファベット3文字の羅列が、どれも似てるため非常に覚えづらかったり、それぞれの計算方法を混同して覚えてしまったりと、きちんと覚えられるまでに結構苦労した記憶があります。
そこでもしあなたが各項目を復習する際には、3文字のアルファベットを暗記しようとするのではなく、アルファベットが何の頭文字なのかをきちんと覚えることをお勧めします。
例えば、今日学んだROEは「Return On Equity」の略。Equityは自己資本のことで、リターンは収益・利益を表す言葉なので、「自己資本利益率のことだ」と、覚えやすくなると思います。
みなさんの勉強の小さな助けになれば幸いです。
The post 「ROE」と「ROA」とは?株式投資において大切な会社の収益力を計る指標をわかりやすく解説 first appeared on 資産形成.com .]]>これが出来れば株式投資はうまくいくわけですが、株価が「安い時」や「高い時」って、どう判断すれば良いのでしょうか?
家や車、その他食材でも洋服でもなんでも良いですが、実物がある商品の値段が「安い」「高い」というのは、感覚でわかります。しかし「会社」という「人と人が集まって運営している組織」の値段が安いとか高いということを感覚的にわかる人っていませんよね。
そこで『株価が安いか高いかを判断できる基準を作ろう』ということで生み出されたのが、「PER」と「PBR」という指標です。
そこで本記事では、ファンダメンタルズ分析の代表格である「PER」と「PBR」についてわかりやすく解説していきます。
ちなみに「PER」と「PBR」を計算する上では、「EPS」と「BPS」という概念が大切になってきます。初心者の方はまずこちらの記事をご覧になって先を読み進めてください!
(参考)「EPS」と「BPS」とは? ファンダメンタルズ分析の代表指標の計算方法について解説
まずはイメージを掴んでもらいたいので、それぞれを手短に説明します。
前提として会社は、その会社が有している「収益力」と「資産」を足したものが企業価値とされています。
会社はお金儲けをするために作られるので、たくさんお金を稼げる会社は「価値が高い会社」となるわけです。ですからお金を稼ぐ能力である、収益力を判断する材料としては会社の「当期純利益」に着目します。そして「当期純利益」をベースに今の「株価」が高いのか安いのか計算してみよう、とする分析方法が「PER」です。
次に、会社が保有している「資産」に着目して株価の割安割高を判断しようというのが、「PBR」という指標です。会社がお金を稼ぐためには資産を保有する必要が出てきます。
例えば『会社で自動車を作って販売しよう!』と思ったら、自動車を作るための工場が必要になります。工場を作るためには大きな土地も必要になるはずです。
土地を買って、鉄板を切ったり曲げたりできる機械も買うから自動車を作ることができるのです。ですから、会社は土地や機械を保有することになります。
その保有している土地の値段が1億円で、機械の値段が5,000万円だとすると、その会社は「1億5,000万円の資産を保有している」となるわけです。
そして、その会社が保有している資産総額と比較して、会社自体の値段(=時価総額と言います)が高いか安いかがわかれば、株価が高いのか安いのかも判断できる、としたのが「PBR」です。
それではPERとPBRについて大枠のイメージを掴んでいただいたところで、それぞれを詳細に見ていきましょう。
PERは「株価収益率」=「Price Earnings Ratio」の頭文字を取って、PERと呼んでいます。
会社の収益力を基準に、株価が高いのか安いのかを分析するための手法であり、PERを計算してみて数値が高い場合に株価は「割高」となり、数値が低い場合には「割安」となります。
PERの計算方法はとても簡単で、
PER(株価収益率)= 株価 ÷ 1株あたりの収益率(EPS)
で計算することができます。
(例)A社の株価3,000円、1株あたりの純利益250円の場合のPERは、
3,000円 ÷ 250円 = 12 (倍)
よってA社のPERは12倍になります。
PERは現在の株価が「一株あたりの純利益」の何倍であるか?を表す指標なので、「倍」という単位で表します。
ちなみにPERが12倍というのは、現在の株価は会社が1年間で稼ぐ純利益の12倍、つまり今の利益水準が続けば12年後に投資した金額を全額回収できる、という意味となります。
投資した金額が100万円だったとして、その100万円全額がもう一度手元に戻ってくるまでの期間は短い方が良いですよね。20年後に100万円戻ってくるより、5年後に戻ってくる方が嬉しいですから。
ですので、この「倍」で表される数字が小さい程、投資資金の回収が早く見込める有望な会社であると投資家は判断できるので、会社の収益力から判断して現在の株価は「割安」と見れるわけです。
日本の証券市場では、PERが15倍程度で適正水準、10倍だと割安、20倍以上だと割高とされることが多いですが、その会社の業種やビジネスモデルによって判断は変わってきます。
つまりPERだけに固執していると、成長性のある高PERの株(グロース株といいます)は全て割高となり購入できなくなってしまいます。
あくまでも1つの指標程度に思っておくのが良いでしょう。
PBRは「株価純資産倍率」=「Price Book-value Ratio」の頭文字を取って、PBRと呼んでいます。
PBRは企業が保有する純資産(総資産から負債を差し引いた資産)を基準に、株価が高いのか安いのかを分析する手法です。PBRを計算してみて数値が高い場合には株価は「割高」となり、数値が低い場合には「割安」となります。
PBRの計算方法はとても簡単です。
PBR(株価純資産倍率) = 株価 ÷ 1株あたりの純資産(BPS)
となります。
PBRを計算してみて、「1倍」よりも高ければ株価は「割高」であり、低ければ「割安」と判断します。
先に学んだPERとの違いで抑えておきたい点は、PERはある意味では何倍が適正水準なのかという基準が存在しないのに対して、PBRは明確に「1倍」という基準をベースに株価が割高か割安かを判断していくことになる点です。
例えば、10億円のダイヤが付いている時計があったとします。
『その時計の値段っていくらですか?』と質問されたら、誰もが「10億円のダイヤが付いているのだから、その時計は10億円です。」と答えますよね。
しかし、それが会社の場合だと10億円のダイヤを保有している会社なのに、会社自体の値段が8億円という状況になったりするのです。
上場企業の株価というのは、経済情勢や投資する人々の感情の変化によって毎日変動しています。その結果、会社が保有している資産よりも、会社自体の株価が安くなってしまう異常なケースが存在するのです。
ですのでPBR1倍割れの会社というのは、今の異常な状態から将来的に正常な状態、つまり10億円の評価の会社に戻るであろう(今よりも株価は上がるだろう)と予想がつきます。
その一方でPBRが1倍より高い株は割高だから購入を控える判断をしたり、既にPBRが高い株を保有している場合には売却を検討してもよいでしょう。
PBRは『現在における企業の株価は、保有する純資産に対して何倍であるか』を表す指標なので、全ての会社に有効な指標ではありません。原材料を仕入れて商品を作って売る、という企業活動がメインだった昔とは違い、現代では物を一切保有せず大金を稼ぐ会社もたくさんあるためです。
どういうことかというと例えばサービス業、特に経営コンサルティングや人材紹介を行なっているような会社は、物ではなく人の頭の中にある「知識や情報」が価値の源泉なので、社内にほとんど物体の資産が無い場合があります。
また携帯用ゲームアプリを作っているIT企業も、保有している資産は机とパソコンだけのケースが多いはずです。そしてパソコンでアプリを作って販売することで、何百億円も売上を計上している会社もたくさんあります。
これらの企業をPBRで分析しても、会社の株価の割高・割安を判断することは難しいでしょう。
そこで「一つの指標で分析は完結しづらい」ことを忘れずに、様々な情報を総合的に判断して株式を購入もしくは売却する点を忘れないでください。
以上、PERとPBRについてまとめますと、
・PERは株価収益率のことで会社の収益力を基準
・PBRは株価純資産倍率を指し、企業が保有する純資産を基準
に株価の高い低いを分析する手法になります。
これらの指標はどちらが重要で、どちらが優れているということではありません。
分析指標の1つとして利用し、総合的な判断の中で株式の購入・売却を決めるのがよいでしょう。
The post 「PER」と「PBR」とは?株価の割安性を見る2つの指標についてわかりやすく解説 first appeared on 資産形成.com .]]>参考記事:ファンダメンタルズ分析とは?「国や企業の今の状況を知るための分析手法の基本についてわかりやすく解説
今回からは、ファンダメンタルズ分析の詳しい内容、特に「EPS」と「BPS」を取り上げていきます。
ファンダメンタルズ分析というのは、「会社が今どういう状況にあり、その状況と照らし合わせて株価が割高なのか、割安なのか」を判断するために行います。
純利益と比較して株価が高いのか安いのかを計算してみたり、純資産と比較して株価が高いのか安いのかを計算してみたりと、会社の経営状況の各項目と株価を対比して計算することが多いです。
なぜ「EPS」「BPS」から勉強するのかと言うと、この2つを用いて計算する分析方法がこの後にたくさん出てくるからです。正直、EPSとBPSの2つがとても有益な情報かというと、そうでもありません。これだけでは、株価が割高なのか割安なのかの判断は出来ないためです。
しかし、この2つが計算できないと、この後に学んでいく分析方法が計算できなくなってしまうでしょう。
もしくは、計算式の意味(何を知りたくて計算しているのか)が理解できなくなる恐れがあるので、ファンダメンタルズ分析の基本の「き」みたいな指標がこの2つなのです。
それでは早速、EPSから見ていきましょう!
EPSは、「一株あたりの純利益」=「Earnings Per Share」の略です。会社の収益力を判断するために計算をします。EPSが高い会社は収益力が高く、低い会社は収益力が低いという評価となります。
計算方法は、会社の1年間の活動の成果である「当期純利益」を、「発行済株式総数」で除して求めます。
EPS(円)=当期純利益÷発行済株式総数
この計算式からもわかる通り、投資家が1株を買った時に、その1株は会社の利益の何円分かが理解できます。
具体例を見ていきましょう。
ある会社の1年間の純利益が1億円だったとして、発行済株式総数が2万株だったとすると、
1億(円)÷ 2万(株)=5,000円 EPSは5,000円
となります。
この会社の場合には、会社が発行している1株あたりの純利益は5,000円ということです。
EPSは経営が好調な会社は上昇傾向となり、反対に経営が不調の会社は下降傾向となります。ここまでを聞くと、「なるほど。EPSは大きいほど良いんだな。」と思うでしょう。
しかしEPSは一時的な純利益の増加や減少でも大きく変わりますし、発行済株式総数が増加・減少した際にも変わります。
そこで、現時点のEPSの大小だけを見て投資判断するのではなく、1年前や2年前といった過去と比較して、どういった理由でEPSが増えたのか、減ったのかという推移と理由までしっかり調べることが大切です。
それでは続いてBPSです。
BPSは「一株あたりの純資産」=「Book-value Per Share」の略で、経営の安定度を判定するために計算します。一般的に会社も個人もそうですが、負債が多い、つまり借金が多いと危ないとされますよね。
BPSは「一株あたりの純資産」を表す指標なので、借金が多い会社はBPSが低くなり、借金が少なく自分の資産である純資産が多い会社はBPSが高くなります。
よって、BPSが高い会社は経営が安定的、低い会社は経営が不安定と判断できることとなります。
計算方法としては、会社が保有している「純資産」を「発行済株式総数」で除して求めます。
BPS(円)=純資産÷発行済株式総数
投資家が1株を買った時に、その1株は会社の資産の何円分なのかがわかる、というわけです。
具体例を見ていきましょう。
ある会社の資産が1億円、負債(借入金)が3,000万円、発行済株式総数が2万株の場合、
1億円-3,000万円=7,000万円が純資産
7,000万(円)÷2万(株)=BPSは3,500円 となります。
この会社の1株は会社の資産の3,500円分の価値がある1株である、ということがわかりました。
BPSは、経営の安定度を測ることができる指標ですが、実際にどれくらいの数値なら安定的で、どのくらいの数値なら不安定なのか、とする明確な数値基準はありません。
同業他社と比較したり、当該会社の1年前、2年前のBPSと比較して、経営が安定してきているのか、それとも不安定な経営になっているのか、という見方をするために計算する指標、と覚えておいてください。
EPSは、「一株あたりの純利益」で、会社の収益力を判断するために計算を行い、EPSが高い会社は収益力が高く、低い会社は収益力が低いと判断できます。
また、BPSは「一株あたりの純資産」で、経営の安定度を判定するために計算を行い、BPSが高い会社は経営が安定的、低い会社は経営が不安定と判断できます。
この2つの指標は、以後に学んでいく分析方法の計算でも出てくる指標になります。ぜひ覚えておいてください!
それでは、次回はこのEPSとBPSを使って、ファンダメンタルズ分析の大御所である「PER」と「PBS」を勉強していきましょう!
The post 「EPS」と「BPS」とは? ファンダメンタルズ分析の代表指標の計算方法について解説 first appeared on 資産形成.com .]]>「家族や自分が亡くなったときのことを考えるのは縁起が悪い」とか、「兄弟姉妹と遺産のことについて話し合わなきゃいけないのは面倒だし、人の嫌な部分が見えて苦痛だ」など、とかくマイナスな印象を持っている方も多いのではないでしょうか。
本記事は主に、「相続対策を始めたいと思っているけれど、マイナスイメージがまとわりついて第一歩を踏み出せない!」という方に向けたものです。疑問に思われがちな点を、事例を踏まえながら分かりやすく解説していきますので、この記事が相続対策を考え始める一つのきっかけとなれば幸いです。
参考記事:【意外と簡単】IFAが教える相続手続きに必要な7つの書類を徹底解説!
「相続対策」とは、一言でいえば「相続問題」を避けるための対策です。
「相続問題」とは、相続をめぐって家族間で争いが起きてしまったり、遺産を利用したくても必要な手続が完了せず利用ができなかったり、予想外の相続税がとられてしまったりなど、相続を発端とした様々なトラブルのことを言います。
相続問題の具体的な相談事例をいくつか紹介しましょう。
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私の実家は酒屋を営んでおり、祖父が約60年前に取得した土地上に店舗を構えて商売を続けてきました。祖父や父(いずれも既に亡くなっている)からは、「家業と土地は長男が継ぐ」と言い伝えられてきたため、特に遺言は作られず、遺産分割協議も行っていませんでした。
この度、3代目の私の代でやむなく家業を廃業することとなり、代々伝わってきた土地上にはマンションを建てて有効活用したいと考え、建築資金の借入れのために銀行に相談に行きました。
しかし、銀行からは、「土地の登記名義が祖父のままとなっている。このままでは抵当権を設定できないので、融資することは難しい」と言われてしまいました。
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銀行から資金の融資を受けるためには,担保を提供する必要があります。相談者Aさんは,父親から相続した土地を担保に入れてマンションの建築資金を借り入れようと考えましたが,銀行が担保権(抵当権)の登記をするためには,融資を受ける予定の人(Aさん)がこの土地の所有者であることが登記上明らかになっていることが必要となります。
Aさんが土地所有権の登記をするためには,まず,Aさんが父親からこの土地を「単独で」相続したといえることが必要です。父親が遺言で「この土地をAに相続させる」と残しておいてくれればよかったのですが,それがない場合,父親の相続人全員で遺産分割協議を行い,Aさんがこの土地を相続することについての遺産分割協議書を作成しなければなりません。
さらにこの事例では,土地の現在の名義がAさんの祖父となっていますので,父親が祖父からこの土地を「単独で」相続したことも必要になってきます。祖父も遺言を残していないようですので,祖父の相続人(たとえば父親の兄弟姉妹など。兄弟姉妹が亡くなっている場合はその子など)の間でも遺産分割協議を行わなければなりません。
この事例のように、第1次相続(祖父の相続)について協議をせず放置している間に第2次相続(父親の相続)が発生してしまうケースのことを数次相続といいますが、放置期間が長くなればなるほど相続人の総数が増え、互いに面識がない人も出てきて、遺産分割協議を取りまとめることが困難になってきます。そうすると、いつまで経っても遺産を活用することができないというトラブルに巻き込まれてしまうのです。
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先日、私の父が亡くなりました。相続人は、私、弟、妹の3人です。
相続財産は、実家の土地建物(5,000万円)と預金2口(500万円×2)で、これを誰がどのように相続するかについて議論となりました。私は、長年住み続けてきた実家の土地建物を自分で取得したいと考えているのですが、弟や妹はこれを売却して代金を等分すべきだと言っています。
何度も話し合ったのですが全くまとまらず、私が老後の父の世話を一人でしてきたこと、弟・妹はそれぞれ父から事業資金や結婚資金を譲り受けていることなど、主張したいことが山ほどあるのですが、全く聞き入れてくれません。しまいには3人とも感情的になって、話合いどころではなくなってしまいました。
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相続人間での遺産分割協議がまとまらないときは、家庭裁判所の調停や審判の手続を経ることになりますが、これらの手続を行うには膨大な時間を要し、解決まで2~3年かかる事案も少なくありません。そして何より、親族間で争うことは非常に心苦しいことであり、当事者の精神面に多大な負担をもたらします。
この事案でも、Bさんの父親は遺言を残していなかったようです。この場合、Bさんと弟・妹はそれぞれ3分の1ずつの法定相続分を有しており、裁判所はこの法定相続分を基準として調停・審判を進めます。そうすると、それぞれの取り分の額は2,000万円ずつということになりますが、Bさんが5,000万円の実家の土地建物を取得するとなると、3,000万円分の「貰いすぎ」になってしまいますので、弟と妹にそれぞれ1,500万円ずつの代償金を支払わなければなりません。この金銭的負担は極めて大きく、Bさんは残念ながら実家の土地建物を手放さなければなりませんでした。
他方、もし父親が「実家の土地建物をBに相続させる」という遺言を残しておいてくれれば、弟と妹は遺留分の主張ができるだけにとどまります。遺留分とは、遺言があったとしても最低限留保しておかなければならない取り分のことであり,この事例では弟・妹それぞれ6分の1ずつ、金額的には1,000万円ずつです。Bさんは,弟と妹にそれぞれ預金500万円を取得させ、それ以外に500万円ずつ計1,000万円を支払うことによって、実家の土地建物を取得することができたのです。
このような相続問題を未然に防ぐための最大の相続対策が、「遺言」を作っておくことです。
遺言さえあれば、遺産分割協議を行わなくても遺産を決められた相続人に承継させることができるため、Case1のような面倒な事態を回避することができます。また遺言には、相続人の貢献度を考慮して遺産を適切に分配することができるというメリットもあるため、Case2のBさんのように、実家で生活の面倒を見てくれた子の頑張りに報いることができるのです。
相続対策は「分割」「節税」「納税」の3本柱が重要だと言われますが、この中で真っ先に取り組まなければいけないのが「分割」=誰に何を相続させるかという点です。この「分割」対策のキモが遺言なのですが、従来は作成するにあたって厳しい要件が課せられ、少しでも方式が間違っていると遺言全体が無効とされてしまうというリスクがあり、なかなか遺言を利用しづらいというのが現実でした。
それが民法の改正により,2019年1月からは自筆証書遺言の作成要件が一部緩和され、自分で遺言書を簡単に作成しやすくなるとともに、2020年7月からは自筆証書遺言保管制度が始まり、全国各地の法務局・地方法務局で遺言書を預かってもらうことができるようになりました。
従来は、遺言といえば「一生に一度書くかどうか」のイメージでしたが、これからは「相続問題を避けるためにとりあえず書いておく」というような軽い気持ちでどんどん作成してほしい(内容を変えたいと思ったら後で書き換えればいい)というのが、この度の民法改正に込められたメッセージなのです。
人の死について考えるのは確かにとても辛いことであり、相続や遺言に関する話題が忌み嫌われる理由の一端であるのは疑いないでしょう。そのようなマイナスな感情を抱いたときは、相続を「価値の継承」と考えてみてはいかがでしょうか。
人は、自身が生前に有していた「価値」を、次の世代に引き継いでいくことができます。ここでいう価値には、有形の財産だけでなく、知識、ノウハウ、伝統、他者との信頼関係などありとあらゆるものが含まれます。適切に引き継がれた価値は、継承者の手によってさらに大きく育てていくことができるのです。遺言は,遺された家族に対し,自身の一生涯で生み出された価値を継承させていくための手段なのです。「秘伝の書」や「最後のラブレター」と言ってもいいかもしれません。
相続対策は「分割」「節税」「納税」の3本柱の中で真っ先に取り組むべきことが「分割」対策であり、そのための第一歩が遺言を作ることです。
相続や遺言には,法律的にもイメージ的にも,このようなプラスの側面があることをぜひ知っていただき,相続対策の第一歩を踏み出していただけたら幸いです。
■執筆者紹介
セブンライツ法律事務所
パートナー 藤木 友太(ふじき ゆうた)
弁護士
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®
明治大学法学部、同大学法科大学院を卒業後、2014年弁護士登録。2017年にセブンライツ法律事務所に参画。主な取扱分野は、企業のビジネスモデル構築・資金調達・労務・M&Aなどの法的支援、不動産関係法務、相続・事業承継法務。実家は三代続く日本茶卸売店。幼い頃から多くの地元企業に接し、様々な経営者の本音を聞く中で、円滑な相続・事業承継ができなかったために閉鎖する企業が増えつつある現状に直面する。弁護士として、また自身も家業の次期後継者として、日本のSuccession(承継)を法律面から支えることに使命感を燃やす。
The post トラブル事例を踏まえて考える!弁護士が話す相続問題と相続対策の基本とは? first appeared on 資産形成.com .]]>その中でもよく耳にするものの1つが、NYダウ(ダウ平均)ではないでしょうか?このNYダウは、米国の景気動向を知る上でも非常に大切な株価指数になります。
そこで当記事では、NYダウがどのような株価指数なのかわかりやすく解説していきます。
当記事を読むことで、NYダウの銘柄構成やその特徴について知ることができます。
ぜひ最後までお付き合いください。
参考記事:世界の主要株価指数まとめ~日本以外にも目を向けよう~
NYダウ(ニューヨークダウ)とは米国の代表的な株価指数であり、正式名称は「ダウ・ジョーンズ工業株価平均(Dow Jones Industrial Average)」と言います。
米国経済新聞であるウォール・ストリート・ジャーナルを発行する、ダウ・ジョーンズ社が発表する平均株価指数のことです。
「ダウ・ジョーンズ工業株価平均」は「工業株30種平均」とも言われ、ニューヨーク証券取引所やNASDAQ(ナスダック)市場に上場している企業の中から、代表的な30銘柄を構成銘柄とします。
ですので、日本の株価指数である日経平均株価に似ている性格のものと言えます。
NYダウは、基本的に選定された30銘柄の株価を「単純平均」して算出しています。構成銘柄の入れ替え時などに、必要に応じて除数で調整し、指数の連続性を保つようにしています。
単純平均という点でも、除数で調整する点についても、日経平均株価と同じ計算方法ということになります。
NYダウは、選定され30銘柄の株価の「単純平均」したものでした。
ここから導き出されるNYダウの特徴は、日経平均株価と同様に値がさ株(株価が大きい銘柄)の影響を受けやすいという特徴です。
NYダウは30銘柄で構成されており、Bloombergで確認できます。
NYダウについても構成銘柄の入れ替えが行われます。ただし、日経平均株価と異なり構成銘柄の入れ替えは不定期となります。
構成銘柄は、米国の産業変化に合わせて変更が行われます。現在の構成銘柄は、上記の通りAAPL(アップル)やMSFT(マイクロソフト)のような世界を代表する有名企業ばかりです。
ここまで、NYダウの特徴などを見てきましたが、NYダウの動きは日本の株価指数(日経平均株価やTOPIX)とどのような関係があるのでしょうか?
NYダウと日本の株価指数では、そもそも国が異なりますし、組み入れられている銘柄が異なるため直接的な影響はありません。
ですが、米国市場は我々が寝ている時間に動いています。日本の朝のニュースでは必ずNYダウを中心とした米国株の動きが報道されることに。
日本の投資家の方は、その動きを見て本日の取引を予想し動きます。
ですので、前日にNYダウが上がれば、日本の株価指数も上がりやすく、逆に下がれば、日本の株価指数も下がりやすいという傾向にあると言えます。
もちろん、前述のとおり直接的な影響があるわけではありませんので、傾向があるということに過ぎないこと注意しましょう。
過去のNYダウの動きもSBI証券のチャートで確認可能ですので、参考にしてみてください。
NYダウは米国の代表的な株価指数の1つで、NYダウの動きを見ることで米国の景気の動きを知ることができます。また、直接的な影響はないもののNYダウの動きは日本の株の動きに少なからず影響を与えるケースが多いのも事実です。
株式投資をする際にはNYダウの動きを見ることで、考え方の幅も広がることと思います。ぜひ確認する癖をつけてみて下さい!
The post NYダウ(ダウ平均)とは?米国の代表的な株価指数についてわかりやすく解説 first appeared on 資産形成.com .]]>そこで、「不動産」の基本的なことから、何回かに分けて説明していきたいと思います。
参考記事:不動産投資のメリットとデメリット(リスク)をわかりやすく解説
「不動産」とは、民法第86条において、「土地及びその定着物は、不動産とする」と定義されており、同86条において、「不動産以外の物は、すべて動産とする。」とも定義されております。
ローランド的に説明すると、「不動産か、不動産以外か。」ということになりますが、民法上では、「不動産か、動産か。」となりますね。
つまり、不動産とは土地や、土地及びその定着物(建物)等の動かすことの出来ない財産です。一方、不動産以外の動かすことの出来る財産、現金・商品・家具などは動産とみなされます。
不動産には、「固定性(動かない)」「永続性(土地は消滅しない)」「不増性(土地・建物は増えたりしない)」「個別性(同じ不動産は2つとして存在しない)」という特徴があります。
特に、動産と違って一番特徴的なところは、2つとして同じ不動産は存在しないという「個別性」でしょうか。
例えば、文房具は同一の商品を大量生産することが可能であり、世の中に同じ文房具が供給されております。しかしながら、不動産においては例え隣りあった土地やマンションだとしても、同じ不動産ではなく、どの不動産も「この世に一つしかない」のです。
また、不動産の別の特徴として、「用途の多様性」が挙げられます。用途の多様性とは、土地の活用方法としては単純に1つではなく、住宅も建てることが出来れば、事務所やホテルでも色々な用途の建物を建築出来るということです(都市計画法上、建設可能な建物の種類は土地毎に定められているので、その点はご注意ください)。
例えば、ボールペンは書くこと、自転車は乗ることにしか使えませんが、不動産はただ住宅を建てるだけでなく、事務所ビル、ホテルや老人ホームを建設する等、色々な活用方法があるということです。
不動産の活用方法はその時代や経済動向等の影響を受けます。分かりやすく言うと、コロナ禍前のオリンピックブームやインバウンドブームにより、都心には数多くのシティホテル・ビジネスホテルが建設されました。
そのブームが起きる前であれば、極端に言えば都心の土地は事務所ビルを建てるか、マンションを建てるかの2択でした。
しかしながら、東京オリンピックが決定し、海外からの旅行客が増え続けることにより、土地の活用として新たに「ホテルを建設する」という選択肢が生まれたのです。それが、時代や経済動向等の影響を受けるということです。
以上、不動産の特徴について簡潔に記述しましたが、「不動産価格」について説明していきたいと思います。
動産である一般の商品の価格は、どのように決まるのでしょうか。家電製品、服飾品、他には食料品等、商品を販売している小売業者が販売価格を決めるかと思います。
定価で売れると判断すれば定価で販売し、売れ行きが悪ければ、多少値引きして販売します。一般的に需要と供給のバランスで価格が決まりますが、売主(小売業者等)と買主(消費者)間で価格に関して個別交渉するケースはあまり多くないかと思います。
つまり、売主(小売業者等)から提示された金額で買主(消費者)が納得した場合には、売買が成立するものということですね。
一方、不動産価格は売主と買主の当事者間での交渉により決まります(間に仲介業者が入ることが多いですが、仲介業者は当事者のエージェント的立場であるので、やはり当事者の価格に対する考えが反映されます)。
また、新築マンションや新築建売住宅では売主である不動産会社が、動産の商品と同様に値段を提示するとは思いますが、不動産は値段が張る買い物なので、買主である皆さんは売主に対して交渉をしようと考えておりますよね?
交渉事により売買が成立する場合では、売主もしくは買主のどちらかが、不動産に対する知識がない、交渉事に弱い、またはどちらかが交渉上手であった場合等には、相場と乖離した価格で取引してしまい、どちらか一方が損を被る可能性があります。
但し、少し難しい言葉ですが、民法には「私的自治の原則」というものがあり、簡潔に言うと、5,000万円程度のマンションを1,000万円で売買しようが、1億円で売買しようが当事者の自由であり、第三者が単純には介入できるものではないのです(脱税行為などは除きます)。
5,000万円の価値があると思われるマンションを4,000万円で売った場合には、売主は1,000万円を損することになりますが、後日売主が5,000万円の価値があることを知ったとしても、「差額の1,000万円を買主に請求する」とか、「安く売らされたということで、買主や仲介業者を訴える」ということは現実的ではないのです。
では、なぜ「不動産価格」を知らずに安く売ってしまい、もしくは高く買ってしまい、失敗してしまう人が出るのでしょうか?
それは、動産である一般的な商品の価格や、サービスの価格の水準は、いまやスマートフォン1つで簡単に調べることが出来ますが、不動産価格の水準を把握することは難しいのです。
今でこそインターネットの進展やAI(人工知能)により、不動産価格の相場を把握しやすくなっておりますが、万能であるとは言い切れないでしょう。
一般の方にとって、不動産を売買するということは人生において何度もあることではないと思います。ですので、数少ない機会で失敗しないように、「不動産価格」の考え方を少しは身に着けておいた方がよいです。
この「不動産価格」の詳しい考え方については、次回においてお話ししたいと思います。
株式会社ケーアイティーシー マネージャー
岡野 将之(おかの まさゆき)
不動産鑑定士、宅地建物取引士
一橋大学経済学部を卒業後、住友不動産に入社。三井不動産リアルティ株式会社にて不動産鑑定士資格を取得後、事業用不動産仲介業務に従事。有限責任あずさ監査法人にて、会計監査業務支援、コンプライアンス態勢アドバイザリー業務に従事。
現在は株式会社ケーアイティーシーにて、弁護士(賃料地代増減額請求、争続問題)や税理士(相続、節税スキーム)等の各種士業と協業し、不動産鑑定評価・簡易査定業務を提供しつつ、売買仲介業務にも携わり、不動産のワンストップサービスを提供している。
The post 不動産鑑定士が語る不動産とは?不動産の定義と価格の決まり方についてわかりやすく解説 first appeared on 資産形成.com .]]>「NISAとiDeCoはどちらがいいの?」
という質問をよく受けます。どちらも資産運用にまつわる制度なのですが、どちらがよいかという問題は常につきまとって来るように思えます。
今回は、そんな関心が高まってきているNISAとiDeCoの節税効果の違いについて、まとめてみたいと思います。
当記事を読んで、ご自身がどちらの制度に合っているのかを考えるきっかけになれば幸いです。
参考記事:NISAの基本的な運用方法~コツをつかんで賢明な投資を~
通常、株式や投資信託などの金融商品に投資をした場合、これらを売却して得た利益や受け取った配当・分配金に対して20.315%の税金がかかります。
NISAは、「NISA口座(非課税口座)」内で、毎年一定金額の範囲内で購入したこれらの金融商品から得られる利益が非課税になる、つまり税金がかからなくなる制度です。
イギリスのISA(Individual Savings Account=個人貯蓄口座)をモデルにした日本版ISAとして、NISA(ニーサ・Nippon Individual Savings Account)という愛称がついています。
NISAは現状、2タイプに分けられています。
・売買目的の一般NISA
・つみたて投資目的のつみたてNISA
※この2タイプの他に、ジュニアNISAもありますが、今回は基本2パターンのお話です。
参考記事:NISA(ニーサ)とは?一般NISAとつみたてNISAの基本をわかりやすく解説
ところで、私は「15%以上値上がりしたら売却」という自分ルールを決めて運用しています。したがって、NISAの満額である1,200,000円全てが15%値上がりした場合、
1,200,000円×15%=180,000円
の利益を手にすることができます。株式等の売却にかかる税率は20.315%ですので、節税効果は36,567円となります。
一方、つみたてNISAはつみたて投資目的ですので、一般NISAに比べ、上限額が少ないため、同じように15%の値上がりをしたと仮定すると、手にする利益は、
400,000円×15%=60,000円です。
同じように税率は20.315%ですので12,189円の節税効果です。
どちらのNISAも一長一短ありますが、節税効果が高いのは一般NISAと言うことができます。
iDeCo(イデコ/個人型確定拠出年金)は、自分が拠出した掛金を、自分で運用し、資産を形成する年金制度です。掛金を60歳になるまで拠出(2022年5月以降は65歳まで延長予定)し、老齢給付年金(雑所得)を受け取る、もしくは一括で受け取る(退職所得)ことができます。
※60歳になるまで、原則として資産を引き出すことはできませんので注意が必要です。
基本的に20歳以上60歳未満の全ての方(※)が加入でき、より豊かな老後の生活を送っていただくための資産形成方法のひとつとして位置づけられています。
※企業型確定拠出年金に加入している方は、企業型年金規約でiDeCoに同時加入できる旨を定めている場合のみiDeCoに加入できます。
掛金は最少月額5,000円から最大月額23,000円です。つみたてNISA同様に、運用期間中は利益に対して税金は発生しません。
しかし、前述の通り60歳まで引き出せないデメリットがありますので、余剰資金での運用が望ましいと思います。
iDeCo最大のメリットは、掛金全額が所得控除となり、年末調整や確定申告をすることにより、ご自身の収入に応じて、その掛金の15~55%分税金が下がることです。
※個人最低税率は所得税5%+住民税10%=15%です。
したがって、掛金を満額拠出した場合には、
276,000円×15%=41,400円
の節税効果を最低でも得ることができます。そこに、運用期間中の利益が非課税(繰り延べ)、そして受取時についても所得控除を活用できるという制度なのです。
節税効果という観点でお話をするならば、NISAでiDeCoと同じ節税効果を得るためには、株式売却益や配当金が203,800円必要になりますので、iDeCoではお手軽に節税効果が得られることがご理解頂けると思います。
ですので、私の結論としては、
「生活資金や以後のライフプランに余裕のある人、所得の高い方についてはiDeCoで掛金満額276,000円/年を拠出した上で、まだ余剰資金がある場合にNISAを利用する」
ことが最も節税効果が高くなります。
税務上の節税効果という観点で考えれば、上記の結論でよいと思うのですが、原則60歳まで資金が下せないことを考えれば、老後資金には対応できても、結婚や教育費、住宅費には利用できないことになります。
ですので、どちらがよいかというのは、その人の所得額や貯蓄額、ライフプランなどによって異なる可能性があります。
そこでiDeCoも活用しつつ、並行して他の方法でも貯蓄や資産運用を行う、ということが大切ではないでしょうか?
青山赤坂会計事務所
税理士 小栗直哉(おぐりなおや)
早稲田大学を卒業後、新卒で旅行会社のJTBに就職。大小様々な法人営業を担当すると同時に新規開拓部門に従事。資格取得後、税理士法人TOTALに参画。年間100件以上の会社設立を支援し、30社以上の法人顧問を担当。2016年に、現事務所に合流。2代目税理士ならではの、蓄積された事例を活かした実践的なアドバイスが強みで、経営者・富裕層を中心に高い評価を得ている。
The post NISAとiDeCoどちらがおすすめ??資産運用をしている税理士が話す、節税効果とは? first appeared on 資産形成.com .]]>なぜGameStop株は急騰したのか?そこには、複雑かつ現代的な理由が潜んでいます。2021年に起きた波乱を簡単に紐解いていくことにしましょう。
参考記事:【FP目線で考える】資産形成や資産運用における情報選択の必要性とは?
今回の出来事を話すには、「ロビンフッド(robinhood)」という投資アプリと、「レディット(reddit)」という交流サイトの内容を先に話しておく必要があると思います。
「ロビンフッド」は、ロビンフッド証券という米国の証券会社が提供している手数料無料の投資アプリのことです。
新型コロナウイルスの影響により、このロビンフッドを使って株式投資をする若い個人投資家が増えたといわれており、彼らのことをロビンフッド族と呼んだりしています。その半分は、株の取引が初めてという投資家が多いのもポイントです。
「レディット」は、米国の掲示板型サイトのことです。日本でいえば、5ちゃんねる(昔の2ちゃんねる)みたいなものと言えば、わかりやすいかもしれませんね。
書き込みには登録が必要ではありますが、閲覧は自由にできることや、好きな話題を自由にやりとりができることから、月の利用者は4億人を超える、いわば巨大SNSのようなものです。
そして、レディットの投資コミュニティー「ウォールストリートベッツ(WallStreetBets)」には、前述のロビンフッド族の投稿が非常に活発に行われています。
今回の出来事には、この巨大SNSと無料投資アプリの存在が際立っています。どのような背景で、GameStop株は急騰することになったのでしょうか?
今回の出来事には、実は主役が二人います。個人投資家とヘッジファンドです。この個人投資家というのは、先ほどお話したロビンフッド族です。出来事の背景は、分かりやすく言えば個人投資家 vs ヘッジファンドだったということです。
ヘッジファンドとは、様々な投資手法を駆使して市場が上がっても下がっても利益を追求することを目的としたファンドです。元々は、「ロングポジション(買い)」と「ショートポジション(売り)」を両方保有することで、リスクを回避するという発想から始まりましたが、今では、ハイリスク・ハイリターンの投資のひとつとなっています。「ショートポジション(売り)」を持つことも可能な投資なので、割高だと判断した株については、売建をすることで利益を取ろうとします。
※ヘッジファンドの詳しい解説については、別記事で記載する予定です。
今回の出来事の中心にあるGameStopという会社は米国のゲーム小売会社で決算も赤字でした。そのため、現在の株価は割高であると判断したヘッジファンドは空売りを仕掛けていました。
そんな時、レディットの投資コミュニティーに「空売り勢を締め上げろ!」と書き込みがあり、ロビンフッドを利用している個人投資家が共闘をしてヘッジファンドに立ち向かうことになりました。
個人投資家がGameStopの株を買う、もしくはコールオプション(買う権利)の買いをすることで、株価が急騰すると、空売り(売建)をしているヘッジファンドは損が拡大していきます。すると、売っている株を買い戻しせざるを得なくなり、さらに株が買われて上がることになります。
つまり、個人投資家が空売りをしているヘッジファンドを標的に攻撃、買い戻しをさせることで巨額の資金が動き、株価が急騰したというのが、今回の出来事の急騰の全容だったというわけです。
いわば相場操縦的な動きではありますが、このようにヘッジファンドを攻撃する動きが強まってきているのです。
この事件を受け、アプリ提供会社であるロビンフッドは、GameStop株などの取引を制限することを決定しました。
すると、GameStopの株は急落、そして乱高下することとなり、高値で購入した個人投資家は損をすることになったわけです。
この制限について、個人投資家は取引を制限されたと反発し、米国の議員からも批判が上がりました。米国証券取引委員会(SEC)もロビンフッド側の取引制限についても特定銘柄の取引を「不当に阻害する」可能性があると調査をすることとなりました。
今後の動きが注目されます。
GameStop株乱高下の背景には、SNSやアプリを活用し、共闘をした個人投資家によるヘッジファンド潰しがあったということです。
SNSでのやり取りが活発に行われる、現代社会ならではの事件と言えるでしょう。しかしながら、相場操舵的な動きでもあることもあること、証券会社側が個人投資家に対して、個別銘柄の取引を停止する行為が不当かどうかなど、当局などの今後の動きが注目されます。
The post 【FP目線で考える】レディットやロビンフッドで熱狂!米国GameStop株が乱高下した、SNS時代ならではの理由とは? first appeared on 資産形成.com .]]>「相続対策をしていなかったことが原因だ。」
そう思われる方も多いのではないでしょうか。たしかに、相続対策をしていなかったことによるトラブルも多いです。しかし、相続対策として遺言を作ったことが原因となって、トラブル・紛争になってしまっていることも比較的多く存在します。
そこで、今回は「遺言を作ってしまったために生じた相続トラブル」のご紹介です。
とある山田さんの事例—————————————————————————–
都内に住む山田太郎は、結婚して妻と二人で暮らすようになって数年してから、親同士の付き合いがあった菊地さんから借地をした後、その上に自宅を建てた。
山田さんは、子どもがほしいと思っていたが、残念ながら妻との間に子どもはできず、このことや色々なことで行き違いが多くなり、妻と離婚をした。
その後、一人で数十年暮らしていたが、自分も高齢となって相続が気になった。
「両親は他界している。自分には兄弟もいない。子どももいないとなると、自分には相続人がいないことになる。このまま自分が死んでしまったら、自分が住んでいるこの家はどうなるのだろう。そういえば、ここ10年間くらい、隣りの家に住んでいる田中さんが良くしてくれている。彼らに、この自宅建物を譲ることにしよう!」
そう思い、田中さんに、自分が亡くなった場合には自宅を田中さんに譲る話を持ちかけたところ、田中さんも快諾してくれた。
そこで、自分の死後、他人に財産を譲るためには遺言が必要だということを調べて、専門家に相談しに行ったところ、公正証書遺言を勧められた。これを受け公証役場に行き、建物と、敷地に関する借地権を田中さんに遺贈する内容の公正証書遺言を作り、この旨を田中さんにも伝え、田中さんにも遺言書の謄本をお渡しした。
あぁ、これで安心だ。田中さんも喜んでくれるだろう。
———————————————————————————————————–
このような遺言、稀に作られていることがあります。
しかし、この遺言は、残念ながら、多くの場合できっと上手くいきません。それどころか、この遺言を作ったがために、田中さんに迷惑がかかってしまう可能性があります。それはなぜでしょうか。
それは、今回の遺贈の対象物が、借地権付建物だからです。
当然のことですが、建物を利用するには、建物の敷地の利用権も必要です。
そのため、借地権付建物の遺贈の場合、遺贈を受けた方が建物を利用するには、建物の遺贈を受けるだけでなく、土地の利用権である借地権も遺贈を受けなければいけません。
事前に法律家に相談した山田さんの遺言でも、借地権も遺贈されています。だから大丈夫…とは、法律上はならないのが、今回のトラブルの原因です。
借地権の遺贈とは、簡単にいうと「借地人(土地の借主)が死亡を理由に他人に借地権を贈与すること」をいいます。
たしかに、法律上、財産の贈与は、通常は、所有者・権利者が自由に行うことができるのが原則ですが、借地権や賃借権(借地権は、土地の賃借権)となると、話は違います。
借地権や賃借権の場合、通常、借主が貸主に無断で他人に贈与等をすることが禁止されているからです。
このような借地権・賃借権の性質から、借地権を遺贈する遺言を作り、遺言者(今回の山田さん)が亡くなって遺言の効力が発生し、そのあと、遺贈を受けた方(今回の田中さん)が遺贈を受けることを承諾したとしても、法律上は、その借地権の遺贈は当然には有効になりません。
この遺贈を有効にするためには、遺贈を受けた方(今回の田中さん)が遺贈を受けることを承諾した後、その遺贈を、貸主である地主さん(今回の菊地さん)が承諾する必要があります。そのため、地主さんが遺贈に反対すると、その遺贈は有効にならないのです。
参考記事:トラブル事例を踏まえて考える!弁護士が話す相続問題と相続対策の基本とは?
よって、遺贈を受けた方としては、まずは地主さんに、遺贈を承諾してもらうよう協議・交渉をすることになります。
そこで地主さんが承諾してくれれば、それでOKです。
しかし、地主さんとしては、慣例にならい、承諾料(遺贈の例はあまり公表等されていないのですが、一般売買の場合、更地価格の約10%が相場と言われています。)の支払いを求めてくるのが通常でしょう(ちなみに、相続により借地権が移転する場合、承諾料の支払いは必要ありません。ひょっとすると、今回のような遺言は、この点を混同した結果作られてしまっているのかもしれません)。
ここで、他人に金銭的負担なく借地権(付建物)を渡したい、という山田さんの遺言の作成目的は実現不可能になります。
もし、田中さんが「借地権を無料で入手すること(そして、その後何らかの形で利益を得ること)」を狙っていたなら「当てが外れて残念でした」ともいえるだけかもしれませんが、山田さんの遺志が反映できないとなると、不憫でなりません。
なお、地主さんが遺贈を承諾してくれない場合に備えた制度も、借地借家法という法律に用意されています。
裁判所に「(承諾すべきなのに)地主が借地権の遺贈を承諾してくれないため、代わりに許可してほしい」と求める制度です。
この制度を使えば、建物の実質的な利用形態に変更等がないこと等を条件に、裁判所は遺贈を許可してくれます。しかし、裁判所が許可しない場合もありますし、許可する場合でも、先ほどの金額に近い承諾料の支払いを条件とすることが多いです。
しかも、このような場合、弁護士に委任せざるを得ないことが多く、弁護士費用も負担しないといけないことも多いです。
とすると、やはり無償で手に入れることはできない、となってしまいます。
ちなみに、この場合の弁護士費用の目安は以下のとおりです(計算してみると、かなりの額に上ってしまうことが多いです。)。
《借地権紛争に関する弁護士費用の目安(旧日本弁護士連合会報酬基準に準拠)》
土地の時価の2分の1(又はこれより借地権価格が高い場合には借地権価格)×以下の%
時価の2分の1か借地権価格のいずれか高い方 | 着手金
(契約時に発生。成功・不成功に関わらず発生) |
報酬金
(成功報酬。ご依頼が終了した際に発生) |
300万円以下の場合 | 8% | 16% |
300万円を超え、3000万円以下の場合 | (5%+9万円) | (10%+18万円) |
3000万円を超え、3億円以下の場合 | (3%+69万円) | (6%+138万円) |
3億円を超える場合 | (2%+369万円) | (4%+738万円) |
事件内容により30%の範囲内で増減額することができ、それ以上に実態に合わせて変動することもある。なお、着手金の最低額は10万円。いずれも消費税別。 |
そして、このようなケースでは、どうしても地主との信頼関係が壊れやすいようです(地主さんからしてみると、何の断りもなく贈与された借地権を、法制度により無理やり承諾させられた、ともいえる事態になりやすいからです。)。
そのため、残念ながら、遺贈を承諾してもらった後も上手くいかないことが多くなってしまいます。
よりイメージを持っていただくために、次のことを考えてみてください。
「借地権付建物の遺贈を受けた田中さんは、遺贈を受けた後、その借地や建物を、どのように利用するか?」です。
田中さんは、もともと隣に住んでいます。つまり、自宅はすでに持っています。
このような田中さんは、山田さんから譲り受けた借地権付建物にそのまま住むのでしょうか?(もちろん、そのまま住むこともあるでしょうが)他人が住んでいた築数十年の家にそのまま住む方というのは、一般的には少ないと思います。
となると、そのまま住まない。他人に売る。または転貸する。そこまでいかなくても、大規模リフォームをする又は建て替えてから住む。田中さんが、このような希望を持っても不思議ではないでしょう。
しかし、借地上の建物を売るのも遺贈と同じで、他人に借地権を移さないと利用できません。そのため、先ほどと同様、通常は承諾料が必要になります(更地価格の10%程度が相場でしたね。)。
では転貸ならどうか。転貸も、地主にとっては売買されてしまうのと同様の影響が出かねない等の理由から、無断転貸は原則として禁止されています。そのため、転貸を承諾するよう、地主に求めないと転貸できないことは贈与や売買と同じで、ここでも承諾料が必要になることが多いです(売買の場合よりもデータが少ないのですが、この場合の承諾料の相場は、借地権価格の5%~15%といわれています)。
また、借地権上の建物の大改築や建替えも、多くの場合で、地主の許可なく行えません。そのため、ここでも承諾料が必要になることが多いです(ちなみに、建替えの場合の承諾料の相場は、木造(非堅固建物)であれば、更地価格×2〜5%前後、鉄筋(堅固建物)であれば更地価格×8~12%前後だと言われています。)。
以上のとおり、借地について何か行うためには、地主さんの許可や承諾料の支払いが必要になることが多いです。
そして、このように多額の金銭の支払いが余儀なくされてしまうのでは、山田さん達が借地権の遺贈をする・受けるときに描いていたであろう計画は、まず達成できません。
しかも、今回の田中さんのような経緯で借地権を入手した場合、承諾料の支払いだけでは、通常済みません。今回の田中さんのように地主さんと揉めてしまっては、地主さんとの信頼関係が破壊されてしまうことが多いです。
そのため、おそらく、最初の遺贈を、裁判所を利用して承諾してもらったとしても、その後に処分や利用を試みる都度、地主さんと紛争になってしまう可能性が高いです。
となると、そのことごとくに、先ほどの承諾料に加えて、弁護士費用の支払いが追加され続けていきかねません。のみならず、地主さんと揉めている土地を買ったり、借り受けてくれたりしてくれる人など、そもそも存在するのか、という問題もあります。
この結果、田中さんは、借地権の遺贈を受けたところで、やりたいことは何もできないとなりかねません。
残念ながら、弁護士のもとに相談にいらっしゃる案件の中には、このようなケースが、まま見られます。では、今回の山田さん、田中さんのようにならないためには、どうすべきだったのでしょうか?
そもそも、今回の地主さんのような方が、弁護士を関与させる程にまで遺贈を承諾し難いのは「自分に黙ってやられていたから」という面が大きいと思います。しかも、遺贈の場合、もともと地主さんと繋がりや関係があった旧借主は死亡してしまっていて、間を取り持つこともできません。
このような面からすると、実は、借地権の遺贈をすることは悪手と言える場合も多いのです。このようなことから、今回のような場合には、そもそも遺贈ではなく生前贈与にしたり、せめて借地権建物を遺贈したことを、地主さんに生前に話しておく。
これらのやり方の方が、借地権を譲り受けられ、その後の利用も上手くいったのではないでしょうか。
いかがでしたでしょうか?
「遺言を作ったから安心…ではない」
「遺言を作る際には、遺言を作った後に起きることをしっかりと考える必要がある」
ことの一例として把握いただき、資産保全・運用に役立てていただけると嬉しいです。
■執筆者紹介
弁護士 上田 貴之(うえだ たかゆき)
平成29年3月に独立。現在、千代田区にて上田&パートナーズ法律事務所(https://www.up-law.jp/)を営み、離婚や相続・遺言、成年後見等の家事事件のほか、不動産案件、各種損害賠償(士業に対する損害賠償含む)、契約紛争、交通事故等や労働事件、刑事事件、倒産案件等を扱いつつ、企業の顧問弁護士として活動中。
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