資産形成を行う上で投資信託は大きな武器になります。投資信託は様々な種類がありますが、主に株式で運用する「株式型投資信託」と主に債券で運用する「債券型投資信託」の2つが大きなウェートを占めています。今回は、株式と債券の金融資産としての違いを説明した上で、これからの日本で資産形成をしていくのに株式型投信と債券型投信のどっちが適した運用といえるかについてお話していきます。
投資信託を活用する際の資産形成と資産運用の違いとは?
まずは資産形成と資産運用の違いからお話していきましょう。
資産形成とは…「現在資産のほとんどない状態の方」が0→1→2→3→4→5と資産を着実に増加させていこうとすること。資産運用の前段階といえる。最低1000万円の金融資産までは資産形成の段階。
資産運用とは…「既に形成された資産のある方」が金融資産や不動産資産への投資を通じて、さらなる利益を求めたり、減らさないように資産を利用すること。イメージとしては10ある資産を配分を考えながら増やすこと。
上記から投資信託を活用する際の資産形成と資産運用の違いは以下のとおりになります。
資産形成を行う上での投資信託活用とは…0から投資信託を積み立てで購入していくことで最低1000万円の金融資産を築いていくこと。
資産運用を行う上での投資信託活用とは…現在保有している資産を投資信託に配分することで資産価値を減らさないようにすること。
このように投資信託という同一の金融商品でも、資産形成と資産運用のどちらを目的とするかによって活用の仕方は全く違うものとなりますので、まずはここをしっかりと理解するようにしてくださいね。
資産形成を行う上で投資信託を活用するためには?
資産形成を行う上で投資信託を活用するには、資産運用を行う上で投資信託を活用するよりも長期的な視野が必要です。
これは、資産運用では「現在保有している資産」のみを原資として投資信託を購入するのに対して、資産形成では「0から投資信託を積み立てで購入していく」わけですから、「現在保有している資産」のみならず将来保有することとなる資産も合わせて原資として投資信託を購入することになります。
ですから、資産形成では資産運用を考えるよりも長期的な視野で検討することが必要不可欠なのです。
それでは、この長期的な視野とはどのようなことをいうのでしょうか?
それは、現在の日本や世界の経済情勢から将来にわたって考えうる最悪のリスクシナリオを想定するということです。
では、具体的に現在の経済情勢から考えうる最悪のリスクシナリオとはどういうものでしょうか?
一言でいえば、急激なインフレ(物価上昇)がその一つといえるでしょう。
この詳細な検証はまた別の回に譲りたいと思いますが、少なからず現在の日本はアベノミクスの第一の矢である日銀の金融緩和政策に象徴されるように、国策としてインフレ誘導が行われています。
仮にこのインフレ誘導が行き過ぎてしまった場合、また別の角度からいえば専門家から指摘されている首都直下型地震や南海トラフ地震が現実のものとなり首都圏が壊滅的な打撃を受けてしまった場合等々、日本国内が急激なインフレに見舞われる可能性は想定されうる範囲内の(最悪の)リスクシナリオといえるでしょう。
ここまでをまとめると、より長期的な視野で考える必要のある資産形成を行う上で投資信託を活用するためには、最悪のリスクシナリオである日本国内の急激なインフレ(物価上昇)への対策に主眼をおくことが必要不可欠ということです。
比較してみよう!株式vs債券 ”本物の資産形成”に適した投資信託はどっち?
上図をご覧ください。
かなりざっくりとした区分けではありますが、インフレ(物価上昇)期には株価(株式の価格)は上昇/債券価格は下落、その一方でデフレ(物価下落)期には株価は下落/債券価格は上昇となっています。
上記は理論上の動きであって、短期的には複合的な要因によりこの通りに動かない場合というのも多々見受けられます。
ただし、先ほどからお話していますが、そもそも資産形成とは長期的な視野に立ったものですから、実際の動きがこの理論上の動きに集約される可能性は非常に高いといえるでしょう。
すなわち、これから日本国内が最悪のリスクシナリオに基づいて急激なインフレ(物価上昇)に見舞われることを想定した上で資産形成を行なっていく際には、債券よりも株式で運用を行っていくことが重要といえます。
もちろん、ここでいう”債券よりも株式”というのは物価の動向という観点から見た場合に二元論的にどちらかといった形で比較しているにすぎません。
実際には、ご自身やご家族の現在から将来にわたる収支状況や資産負債状況、ライフイベント等に基づいたライフプランに応じて、株式や債券、その他資産を投資信託を活用して上手く組み合わせていく、また投資信託に限定せずに他の金融商品や不動産の活用も検討する必要がありますので、その点は十分ご留意ください。