毎月分配金を受け取ることのできる毎月分配型投信が最近の投資信託人気ランキングでも上位を独占している状態が続いています。とくに分配金利回りランキングでも上位に入るような高分配の毎月分配型投信は根強い人気を誇っていますね。しかし資産形成を行うにあたって毎月分配型投信は本当に有利な金融商品といえるのでしょうか?今回はそこのところを詳しくお話していきます。
投資信託の分配金とは?
まずは投資信託の分配金とは何かについてお話していきます。
これについては以前の記事でも説明しましたので、以下に引用します。
投資信託の分配金とは、投資信託が株式や債券等に対して投資し、運用して得た収益を、投資家のみなさんへその保有している口数に応じて分配したお金のことです。
ここで先ほどお話した誤解を生じやすい点とはどこにあるでしょうか?
それは一言でいってしまうと、分配金の「出所」にあります。
正確にお伝えすると、投資信託の分配金の出所は、「投資信託の信託財産」です。
これが何を意味するかわかるでしょうか?
分配金が支払われると、「純資産総額」や「基準価額」は下がります。
つまり、投資信託の「分配金」は預金や債券の「利子」とは決定的に違うということです。
ここは大事な点なので、イメージ図も合わせて以下に記載しておきますね。
上記の図にも記載していますが、最近でも根強く人気の投資信託の種類に「毎月分配型」のものがあります。
これは、その名のとおりですが、毎月決算を行い、その都度分配金を支払うタイプの投資信託です。
毎月分配金を受け取れるということを理由として、とくに相対的に高めの分配金の投資信託が人気ですが・・・
ここまでの説明をきちんと理解できた方はもうお分かりですよね?
毎月支払われた分配金相当額、基準価額は下がるわけですから、全く有利ではないということです。
それどころか、分配金相当額をそのまま投資信託の信託財産として運用されていれば複利効果も取れたはずのところを逃してしまうため、投資効率の観点からは相対的に不利になる可能性が高いといえます。
投資信託の分配金より引用
投資信託の分配金利回りランキングは要注意!
上記の投資信託の分配金とは何か、預金や債券の利子とはどう違うのかを踏まえた上で、ここでは投資信託の販売会社である証券会社や銀行がHP等でよく提示している毎月分配型投信の分配金利回りランキングについてお話していきます。
投資信託の分配金利回りとは?
まず、「分配金利回り」とは何でしょうか?
「分配金利回り」とは、過去1年間の分配実績の累計を最近の一時点の基準価額で割ることで算出される利回りのことです。
たとえば、過去1年間の分配実績が毎月一万口あたり50円で、直近の基準価額が10,000円の投資信託の分配金利回りは、
(50円/月×12ヶ月)÷10,000円×100=6%
となります。
投資信託の分配金利回りの注意点
上記の例では、利回りが年6%ですから、現在の銀行の平均的な普通預金金利である年0.02%と単純比較すると、実に300倍も高いということになりますね。
しかし、世の中そんなにうまい話はなかなかありません。
分配金利回りは、あくまでも過去1年間の分配実績が今後も変わらず、かつ基準価額も一定であると仮定したものです。
実際には、分配金をいくら出すかについては運用会社が決定することができますので今後も一定であったとしても、先ほどからお話しているとおり”分配金が支払われると、「純資産総額」や「基準価額」は下がる”わけですから、基準価額も一定に保たれるというのは至難と言わざるを得ません。
その一方で、預金や債券の金利は固定金利であれば一定ですし、少なくとも満期(償還)時には元本満額が返ってきます。
※ 債券の場合は発行体の信用リスクがありますので、償還時までに発行体が破綻や債務不履行に陥らなければという前提で元本満額が返ってきます。
ですから、投資信託の分配金利回りと預金や債券の金利を単純比較することは意味がありません。
この点は非常に重要なところですので、よくよく注意するように心がけてくださいね!
投資信託の分配金利回りランキングは参考までに!
ここまでのお話を十分ご理解いただけたら、もうお分かりではないでしょうか?
投資信託の分配金利回りランキングはあくまでも過去1年間の分配実績と最近の一時点の基準価額から算出された分配金利回りを基に高い利回りの順に並べただけのものです。
このランキングの上位にランクインしているからといって、運用がうまくいっている優秀なファンドとは限りませんし、そもそも過去の実績ですから今後の利回りが約束されているわけでもありません。
ですから、投資信託の分配金ランキングを頼りに購入する投資信託を選択するのは危険であるといえます。
むしろ、このランキングの上位にランクインしている投資信託は、分配金の出しすぎで基準価額を下げ、元本をすり減らす可能性があるものと警戒した方が良いでしょう。
そういう意味では、投資信託の分配金利回りランキングは参考にすべきです。
資産形成に高利回りの毎月分配型投信は不要!
毎月分配型投信は投資効率が悪い金融商品です。
くどいようですが、投資信託の分配金は、預金や債券の利子のように元本とは別ではなく、元本から出ているものです。
そうである以上、仮にまったく同じ投資信託が2本あって、一方が毎月分配型、もう一方が一年分配型であった場合、複利効果を見込めるのはあきらかに後者の方です。
ここで、資産形成の意義について振り返っておきましょう。
資産形成とは〜資産形成の定義〜
将来の自分と家族を養っていく資産を形成する(つくる)こと
資産形成というと四字熟語だしすごく難しい話でしょといった声が聞こえてきそうですが、まず言葉の定義をはっきりさせてみればどうということはない、上記のたったこれだけのことなんですね。
要は”将来の備えを早いうちからしっかりしましょうよ!”という話です。
上記のように資産形成は将来のために長期的な観点から資産をつくっていくことですから、投資信託でこれを行っていくに際しては投資効率の良し悪しを重視すべきです。
こう考えると、毎月分配型投信、とくに分配金の高い(高分配の)毎月分配型投信は、ファンドマネージャーの運用の巧拙や相場の動向以前に商品の仕組み自体が投資効率を悪くしているわけですから、資産形成を行う上で不要であると言い切ってしまっても差し支えないでしょう。
もちろんこれはあくまでも資産形成を行う上でのお話です。
とくに中高年以上の方が資産運用を行う上で、たとえばインフレ対策としての運用と同時に公的年金等の補填の役割として目先の現金が毎月必要な場合は、毎月分配型投信が最も役に立つ場面といえます。
このように、ご自分が投資信託を購入する目的を明確にしてから、ご自身に合った投資信託を選別していくことが大切です。