株式や債券、投資信託といった金融商品に投資することは資産形成や資産運用を行っていく上で必要不可欠です。ただ投資初心者の方の中には「投資ってリスクがあって怖い」と感じている向きが少なくありません。そこで今回はリスクの本当の意味、リスクとリターンの関係性やバランス、またどのように計算するかについてわかりやすく説明していきます。
投資の「リスク」=”危険性”は間違い!?
冒頭の「投資ってリスクがあって怖い」の「リスク」とは、投資における「リスク」と別の意味で使われていることがほとんどです。
では、投資における「リスク」とは本来どういう意味で使われるものなのでしょうか?
これについては以前の記事でお伝えしていますので、以下に引用します。
まずはじめに正しく理解しておいていただきたいのはこの「リスク」という言葉についてです。
一般に「リスク」というと直訳して”危険性”という意味で使われる場合が多いですが、株式投資をはじめとした投資の世界でのリスクとは”不確実性”のことをいいます。
ですから、「この株は下がっているのでリスクがある」といった使い方は正確にいえば誤りです。
投資した金額に対してどのくらいの収益が得られるかの割合を表す「リターン」という言葉がありますが、このリターンが将来的にどのくらい期待できるか(これを「期待リターン」といいます)の不確実性がリスクというわけです。
少々わかりづらいと思いますので一つ例示しましょう。
ある株式Aがあって年間の期待リターンが年率5%、リスクが10%だったとします。
この時、期待リターンの幅を「期待リターン±リスク」で計算すると、5%±10%=ー5%〜15%となります。
ちなみに銀行預金のようにこの”不確実性”としてのリスクが0の場合、期待リターン=年利となって、上記の例のような幅はもちません。
上記のように投資における「リスク」=”不確実性”が正解です。
この点を十分ご理解いただいた上で次に話を進めていきましょう。
「リスク」と「リターン」は切っても切り離せない関係!
投資における「リスク」とは”不確実性”を示す一方で、「リターン」とは、投資をすることで得られる収益のことをいいます。
上記でもお伝えしていますが、「リスク」が”不確実性”であって、具体的には「リターン」に対するブレ幅を指すわけですから、この投資における「リスク」と「リターン」は密接不可分、切っても切り離せない関係にあるということができます。
ここからはもう少し踏み込んでお話していきましょう。
代表的な金融商品に「株式」と「債券」があります。
この「株式」と「債券」をここではさらに「国内株式」・「外国株式」・「国内債券」・「外国債券」に分けたとしましょう。
ここで過去の計測結果から「リスク」と「リターン」の高低をそれぞれ並べていくと以下のとおりになります。
リスク
低い 国内債券 < 外国債券 < 国内株式 < 外国株式 高い
リターン
低い 国内債券 < 外国債券 < 国内株式 < 外国株式 高い
上記の関係性は非常にわかりやすいですよね。
リスクが低い金融商品はリターンも低く、一方でリスクが高い金融商品はリターンも高いという関係性があります。
よく「ローリスクローリターン」・「ミドルリスクミドルリターン」・「ハイリスクハイリターン」といったことが言われますが、この関係性を表しているというわけです。
たまに「”ローリスク”だけど、”ハイリターン”の金融商品があります」などと言って勧誘してくる金融機関の担当者がいますが、厳密にいえばそのような金融商品は存在しません。
もしあるとすれば、各金融商品を組み合わせて資産分散を図ることによって一定程度リスクを抑えつつリターンを狙うことができるというだけです。
その場合でも、「ローリスクローリターン」・「ミドルリスクミドルリターン」・「ハイリスクハイリターン」の枠組みを飛び越えることはできません。
このように「リスクによってリターンが決まる」または「リターンによってリスクが決まる」というのは重要な考え方ですので、ぜひ覚えておいてください。
さらに厳密にいうと、ではどこからどこまでが「ローリスクローリターン」で、どこからどこまでが「ハイリスクハイリターン」なのかというお話になってきますが、ここから先は少々複雑な計算が必要となりますので、今回はここまでにしておきます。
投資では「リターン」→「リスク」の順に計算する!
投資における「リスク」と「リターン」を考える場合、「リスク」=”危険性”という誤解が多いためか、「リターン」よりもまず「リスク」を考えてしまいがちです。
そうすると、できる限り「リスク」=”危険性”のないものを、という考えが先立って、結局は元本保証の銀行預金や償還まで保有すれば元本割れのない国債や地方債、社債といった選択肢しかないと錯覚しやすくなってしまいます。
ここで再度念押しでお伝えしておきます。
投資における「リスク」とは”不確実性”であり、リターンに対するブレ幅です。
この観点から考えると、まずご自身が必要とする「リターン」を基にして「リスク」を計算する必要があります。
手順は「リターン」→「リスク」であって、決して「リスク」→「リターン」ではないということですね。
一例を示しましょう。
たとえば30歳の方が老後資金準備として「定年退職する60歳までに5000万円を貯蓄する」と目標を立てたとします。
この時、毎月5万円ずつ貯めていくとした場合、年間の利回り(複利)は何%必要となるでしょうか?
これを計算するには金融電卓[モーニングスター]が便利です。
これを使って計算すると年6.0%の運用利回りが必要であることがわかります。
これがご自身が必要とする「リターン」となるわけですね。
その後はたとえばこちらのページで各金融商品(資産)ごとの過去20年間のリスクリターンを確認した上で、どういった金融商品に投資すれば良いか検討するします。
今回の例の場合でいえば、年6.0%のリターンを過去実績から達成可能なものを国内株式・国内債券・外国株式・外国債券から選択すると「外国株式」(+8.6%)と「外国債券」(+6.5%)となります。
この両者の「リスク」を上記のページで確認すると「外国株式」が19.2%、「外国債券」が10.7%ですから、リターンの幅を計算すると「外国株式」が-10.6〜+27.8%(+8.6±19.2%)、「外国債券」が-4.2〜+17.2%(+6.5±10.7%)となります。
この結果、仮に一つの金融商品を上記4つから選択すると、過去20年間の実績値を基に考えれば「外国債券」で運用するのが最も適しているということになります。
リターンの幅から考えるとリターンの最大値では「外国株式」のほうが「外国債券」よりも上回っていますが、両者ともに目標利回りである年6.0%を上回っていることから、リターンの最小値であるマイナスのリターン、つまり損失がより少ない確率で済む「外国債券」に投資するほうが良いということです。
もちろん現実の投資は、過去の実績とおりに各金融商品が値動きをするわけではなく、将来の見込みを考えつつ行うことが重要ですので、今回のように定量的な評価のみで決めるべきではありません。
ただ、このような「リターン」→「リスク」の手順でリスクリターンのバランスを定量評価し投資先の金融商品を取捨選択していくことも重要だということはぜひご理解ください。
今回のお話は少し難しい箇所もあったかもしれませんが、とにかく「リスク」=”不確実性”であり、リターンのブレ幅であるということだけは必ず覚えておくようにしていただければと思います。
ここのところを勘違いしたままだとご自身で選択肢を狭めることになってしまいますので。