資産形成や資産運用する上で安全性が高いといわれる債券投資を考えている方が少なくありません。しかし、以前の記事(※)でお伝えしたようにこのタイミングで主軸に据えるべきは株式投資と私たちは考えています。それはなぜか?今回は金利・債券価格・利回りの関係性、利回りの計算方法をお伝えしつつ、債券投資の魅力が失われていく理由についてお話していきます。
※ 投資初心者におすすめの金融商品の選び方を参照のこと。
金利・債券価格・利回りの関係ってどうなっているの?
まず、金利・債券価格・利回りの関係性についてお話する前に、それぞれがどういうものかについて説明していきます。
金利とは
金利とは、ここでは市場金利のことで、具体的には、日本国内の場合、長期金利(※)の代表格である新発10年国債利回り(※※)のことを指しています。
※ 長期金利とは、取引期間1年以上の金利のこと。
※ ※ 新発10年国債利回りとは、新規に発行された、償還期間10年の国債の流通利回り(市場で流通している債券を時価で購入し、満期まで保有した場合に得られる年利回り)のこと。
債券価格とは
債券価格とは、一般に「債券単価」とも呼ばれ、市場で形成される債券の価格(単価)のことをいいます。
この債券価格は、新発債(新規に発行される債券)か既発債(既に市場に流通している債券)かによって価格決定の方法は異なります。
新発債の場合、債券の発行者が価格を決めるため、「発行価格」とも呼ばれます。
日本国内の債券の場合、債券価格の基準となる価格である額面が100円と規定されているため、「発行価格」は額面と同一の100円が基本です。
ちなみにこの額面に申込単位を掛け合わせたものを「額面金額」(=額面×申込単位)といいます。
たとえば、額面100円を発行価格として発行された債券を10,000単位購入する場合、額面金額100万円(=100円×10,000単位)を支払う必要があるということです。
また、既発債の場合は、流通市場で(市場)金利を反映して売買されているため、債券価格は常に変動し、必ずしも額面(100円)とは一致しません。
これについては、額面を「パー」として、債券価格が額面を下回ることを「アンダーパー」、逆に債券価格が額面を上回ることを「オーバーパー」といいます。
利回りとは
利回りについては以前お話したことがありますので、以下に引用します。
利回りとは、投資金額に対する利子も含めた年間の収益の割合のことです。
たとえば、額面100円で保有している方に年間3円の利子を支払う債券を償還(満期)の1年前に99.1円で購入したとしましょう。
この場合、償還(満期)時に元本は99.1円から100円に値上がりして戻ってくることになりますから、利子3円に元本の値上がり分0.9円(=100-99.1)を足し合わせたものに投資した金額である99.1円を除した約3.9%(=3.9÷99.1×100)が利回りということになります。
これが上記と同条件の額面100円、利率(クーポン)3%、期間1年として、今度は103円で購入したとしましょう。
この場合、計算方法は同様ですから。利子の3円に元本の値下がり分-3円(=100-103)を足し合わせたものに投資した金額である103円を除した0%(=0÷103×100)が利回りということになります。
ちなみにここで出てくる利率(クーポン)とは、額面金額に対する毎年受け取る利子の割合のことで、利回りとは異なったものです。
金利の動向によって債券価格と利回りは決まる
ここからは、金利・債券価格・利回りの関係性について説明していきます。
まず、押さえておきたいのは、金利の動向、つまり金利が上がるか、下がるかによって債券価格と利回りの上下は決定されるということです。
次に、では金利の動向が債券価格と利回りの上下にどう関わっているかについてです。
結論からお話すると、以下の通りになります。
金利 上昇 → 債券価格 下降 → 利回り 上昇
金利 下降 → 債券価格 上昇 → 利回り 下降
上記のように、金利が上がると、債券価格は下がります。
これは保有する債券を売却して他の有利な金利の金融商品に乗り換える動きが出るためです。
一方で、金利が下がると、債券価格は上がります。
これは金利が下がっても債券の利率(クーポン)は固定されていますから、その債券が相対的に魅力が増すためです。
それでは、金利の動向によって、債券価格が上下動した結果、利回りはどのようになるでしょうか?
これについては、上記で結論だけ押さえていただいて、次の利回りの計算方法のところで、実際に計算してみましょう。
債券の利回りの計算方法は?
一口に利回りといっても、定期的(半年ごとや1年ごと)に利子を受け取る債券(これを「利付債」といいます)には、「応募者利回り」・「最終利回り」・「所有期間利回り」・「直接利回り」の4種類あります。
ここでは金利の動向によって債券価格が上下動した結果利回りがどのようになるかを調べたいので、これに最低限必要な「応募者利回り」と「最終利回り」の2つについてお話していきます。
応募者利回りとは
応募者利回りとは、新発債を償還期限(満期)まで所有した場合の利回りのことです。
計算方法は以下のとおりになります。
応募者利回り(%)={利率(%)+(額面100(円)-発行価格(円))÷償還年限(年)}÷発行価格(円)×100
たとえば、償還年限が5年、利率1%、発行価格が額面と同一の100円の債券の場合で考えてみましょう。
上記の計算式に当てはめると、応募者利回りは
{1(%)+(100(円)-100(円))÷5(年)}÷100(円)×100=1(%)となります。
最終利回りとは
最終利回りとは、既発債を時価で購入して償還期限(満期)まで所有した場合の利回りのことです。
計算方法は以下のとおりになります。
最終利回り(%)={利率(%)+(額面100(円)-購入価格(円))÷残存年限(年)}÷購入価格(円)×100
たとえば、先ほどの償還年限が5年、利率1%、発行価格が額面と同一の100円の債券が1年経過し、市場金利が上昇したために、債券価格が98円に下がったとしましょう。
そうすると、残存年限は4年、購入価格は98円になりますから、上記の計算式に当てはめると、最終利回りは
{1(%)+(100(円)-98(円))÷4(年)}÷98(円)×100≒1.53(%)となります。
一方、先ほどの償還年限が5年、利率1%、発行価格が額面と同一の100円の債券が1年経過し、市場金利が下降したために、債券価格が102円に上がったとしましょう。
そうすると、残存年限は4年、購入価格は102円になりますから、上記の計算式に当てはめると、最終利回りは
{1(%)+(100(円)-102(円))÷4(年)}÷102(円)×100≒0.49(%)となります。
このように、利回り(応募者利回り)が1%の債券が、1年後、市場金利が上がったために債券価格が下がった場合は利回り(最終利回り)は1.53%へと上昇し、市場金利が下がったために債券価格が上がった場合は利回り(最終利回り)は0.49%へと低下します。
債券投資の魅力が失われていく理由は・・・
再度金利・債券価格・利回りの関係性を以下に表します。
金利 上昇 → 債券価格 下降 → 利回り 上昇
金利 下降 → 債券価格 上昇 → 利回り 下降
以前の記事(投資初心者におすすめの金融商品の選び方)でもお伝えしたとおり、金利は1989-1990年をピークとして下降に転じ、現在では長期金利の代表格である新発10年国債利回りが10月末現在で0.30%と超低金利となっています。
ここから考えれば、今後、遅かれ早かれ長期的な金利上昇期が訪れる可能性が高いとみて良いでしょう。
そうすると、「金利 上昇 → 債券価格 下降 → 利回り 上昇」が長期継続することになります。
ということは、金利が次のピークをつけるまでは、債券価格が下降し、現在よりも将来の利回りの方が高くなるわけです。
これが、金利・債券価格・利回りの関係性を現状に照らし合わせた結果導き出された債券投資の魅力が失われていく理由です。
もちろん、資産運用においてポートフォリオの一部に債券を組み入れた方が良い場合も考えられるでしょう。
ただ、大きな流れの中で、現在は、あくまでも債券投資よりも株式投資を主軸として、資産形成や資産運用を考えた方が得策であることは念頭に置いていただければと思います。