以前、投資上手な人は損切りできるというお話(※)をしました。この損切りは株式投資を行う上でも非常に重要と言われています。今回はインフレに負けないために資産形成や資産運用を行う上で鍵となる株式投資において損切りが重要と言われる理由について考えていきたいと思います。
※ 投資の上手・下手の見分け方3つのポイント【資産形成】を参照のこと。
株式投資における損切りとは?
まず、株式投資における損切りとはどういったものかについてお話していきます。
株式投資における損切りとは、購入した株式が下落した場合、これ以上の損失(含み損)の拡大を防ぐために、その株式を売却し、損失額を確定させることをいいます。
この時に重要なのは、株式を購入する前に、買値に対して何割下落したら売却するかを決めておくことです。
たとえば、「買値に対して1割(10%)下落したら売却する」と事前に決めておいたとしましょう。
この時、A社株を株価100円で購入したとして、株価が1割(10%)下落して90円以下となった場合、売却して損失を確定する、つまり損切りするということです。
株式投資において損切りが重要なのは・・・
資産形成や資産運用では、長期投資が基本なので、株価が買値よりも下落してしまっても、気長に株価が回復するまで待てば良いという声が少なくありません。
これは、一見するともっともらしいようにも思えます。
しかし、下落が下落を呼んで想定以上の含み損を抱えてしまった場合、株価が回復するまで待つというのは実は容易なことではありません。
ここで一つ問題です。
B社株を株価1,000円で購入したとします。
これが、買値の30%下落してしまって、その下がった状態から30%反転上昇した場合、その時の株価は買値の1,000円よりも①高い、②同じ、③低いのどれになるでしょうか?
答えは③低いです。
まず、買値の株価1,000円に対して30%下落するわけですから、最安値は株価700円(=1,000円×(1-0.3))ですね。
次に、その下がった状態から、30%反転上昇するわけですから、現在の株価は910円(=700円×(1+0.3))となります。
よって、現在の株価910円は、買値の株価1,000円に対して90円低い、つまりまだ含み損の状態ということになります。
ちなみに、この場合、下がった状態から買値の株価1,000円に回復するためには、株価は約43%(≒(1,000円-700円)÷700円×100)上昇する必要があります。
このように、一度下がった状態の株価から買値の株価まで回復するために必要な上昇率を上記に倣って【-30% → +43%】といった形式で表すと、以下の通りになります(小数点以下四捨五入)。
-10% → +11%
-20% → +25%
-30% → +43%
-40% → +67%
-50% → +100%
-60% → +150%
-70% → +233%
-80% → +400%
-90% → +900%
上記をご覧いただいてどのように感じられますか?
おそらく大多数の方が、マイナスが10%や20%のうちは何とか取り戻せそうでも、30%や40%になってくるとかなり厳しい、50%以上となると最安値から倍以上回復しなければならないため絶望的と言わざるを得ない水準と感じたのではないでしょうか。
このように、損失を回復するのはその損失が大きくなればなるほど極めて難しくなるというのが現実なのです。
ですから、損切りを事前に自分自身で定めたルールに従って損失が小さいうちに行うことは、現実に元本が回復できる程度の損失に止める意味で大きな役割を果たすといえます。
また、損切り自体は精神的に負担が大きいですが、これを事前に定めたルールとすることで軽減し、また損切りした後は一拍置くことができるので、精神的な余裕を生むことに繋がります。