20〜40代、とくに30代の方を中心に人気が高まっているFX(外国為替証拠金取引)。少額で手軽に始められることから、資産形成方法の3つの基本ステップ(※)における「投資」ツールの一つとして取り組んでいる方が多いようです。しかし、レバレッジをかけすぎて大損、果ては借金を負ってしまったなんて失敗話も後を絶ちません。そこで、今回は注意喚起を込めて、初心者の方がFXで資産形成すべきでない、あるいはできない理由についてお話していきます。
※ 資産形成の方法 3つの基本 稼ぐ・節約・投資【まとめ】を参照のこと。
20代・30代・40代の若者に人気のFXとは?
FXとは、”margin Foreign eXchange trading”の略で、外国為替証拠金取引のことを指します。
ちなみに、”Foreign exchange”は外国為替(※1)、”margin”は証拠金を意味しています。
※1 今さら聞けない「円安」と「円高」の意味〜外国為替の基礎〜を参照のこと。
ここで、外国為替取引についておさらいしておきましょう。
たとえば、現在、手元に12万円あり、ドル円の為替レートが1ドル=120円だとして、円をドルに交換すると、1,000ドル(=12万円÷120円/ドル)手に入ります。
半年後、ドル円の為替レートが1ドル=140円(ドル高円安)となった場合、手元の1,000ドルをドルから円に交換すると、14万円(=1,000ドル×140円/ドル)手に入り、2万円(=14万円-12万円)の利益が生まれます。
一方、半年後、ドル円の為替レートが1ドル=100円(ドル安円高)となった場合、手元の1,000ドルをドルから円に交換すると、10万円(=1,000ドル×100円/ドル)手に入り、2万円(=12万円-10万円)の損失が生じてしまいます。
このように、円から外貨に交換後、円安になるか、円高になるかによって、円に戻した時に利益が生まれたり、損失が生じてしまうというのが、外国為替取引の基本です。
そして、これはFX(外国為替証拠金取引)の基本でもあります。
それでは、証拠金取引とは一体どういうものなのでしょうか?
証拠金取引とは、取引業者に対して差し入れる担保金(これを「証拠金」といいます)を元手に、この証拠金の数倍〜数百倍の金額を運用する取引のことです。
このように、小さな金額を元手に大きな金額を動かす原理を、小さな力で大きな力を持ち上げる梃子(てこ)の原理(” principle of leverage”)になぞらえて、レバレッジ効果といいます。
つまり、FX(外国為替証拠金取引)とは、少額の証拠金にレバレッジをかけて多額の資金として運用する外国為替取引といえます。
失敗すると借金を負う可能性もあるFXにおけるレバレッジの怖さ
ここからは、FXにおけるレバレッジの怖さについてお伝えしていきます。
たとえば、先ほどと同様、元手は12万円、ドル円の為替レートが現在1ドル=120円だとしましょう。
この元手を証拠金として10倍のレバレッジをかけると、120万円(=12万円×10)で運用することになります。
円からドルに交換したとすると、10,000ドル(=120万円÷120円/ドル)手に入ります。
半年後、1ドル=140円(ドル高円安)となった場合、ドルから円に戻すと140万円(=10,000ドル×140円/ドル)手に入りますから、20万円(=140万円-120万円)の利益が生まれます。
この場合、元手はあくまでも証拠金の12万円ですから、12万円の投資で20万円儲けることができたということになり、率にするとなんと約167%(≒20万円÷12万円×100)ものリターンです。
濡れ手で粟、すごく旨みがあると感じたかもしれません。
それでは、一方で半年後、1ドル=100円(ドル安円高)となった場合はどうでしょうか?
この時にドルから円に戻すと100万円(=10,000ドル×100円/ドル)手に入りますから、20万円(=120万円-100万円)の損失が生じてしまいます。
あれ?
この場合も元手はあくまでも証拠金の12万円ですから、これが0円になってもまだ8万円(=20万円=12万円)足りませんよね。
そう、この8万円は追加で入金しなければなりません。
このように、FXにおいてレバレッジをかけることは、利益が何倍にもなる代わりに損失も何倍にもなる可能性のあるハイリスクハイリターン(※2)の運用、いわゆる”諸刃の剣”なのです。
※2 リスクリターンについてはこちら(投資のリスクとリターンについて考える)を参照のこと。
上記の例がレバレッジ100倍だったとしたら、どのような結果となるか考えてみてください。
この時にご自身の思惑が裏目に出てしまって1ドル=120円から100円に円高になってしまったとしたら、200万円の大損失、元手の12万円が0円になってしまった上に追加で188万円(=200万円=12万円)も入金しなければなりません。
少額で手軽に始めることができるからといって、レバレッジをかけすぎてしまい、追加入金する資金が底を突いて、結局借金する羽目に陥るなんてこともザラにあるというのがお分かりいただけたのではないでしょうか?
FXが初心者にとって資産形成に向かない本当の理由は・・・
ここまでで、FXにおけるレバレッジの怖さについて十分ご理解いただけたかと思います。
しかし、冒頭でFXが資産形成に向かないとお伝えした理由はこれだけではありません。
むしろこちらの方が本質を突いたものですが、それは何か分かるでしょうか?
一言でいってしまえば、FXは投資ではなく投機(※3)的な取引に陥りやすいからです。
※3 投資と投機の違いについてはこちら(「投資」と「投機」の違いとは?)を参照のこと。
では、なぜFXは投資ではなく投機的な取引に陥りやすいのでしょうか?
これは、とくに初心者の方は経験がないが故に陥りがちですが、理性よりも感情が勝って、どうしても短期間で多額の利益を追ってしまうことが多いからです。
そして、短期間で多額の利益を出そうとすればするほど、無理にレバレッジをかけてしまうことになりますし、また取引もゼロサムゲームの世界、つまり投機的なものになってしまいます。
たしかに、FXにおいても、証拠金に余裕をもたせて、かつレバレッジをかけない(=1倍にする)ことによって長期投資することは可能ではあります。
しかし、少額の元手で多額の利益を出せる可能性を目の前にして自制を効かせるというのは、皆さんが思っている以上に難しいということをぜひ肝に銘じていただきたいと思います。
誰もが合理的な判断を下せるのであれば、決して宝くじに手を出すこともない(※4)でしょうから。
※4 宝くじ買うなら投資すべき!?「投資=ギャンブル」は大いなる誤解!を参照のこと。