REIT(リート)への投資の際、どうしても分配金利回りにのみ注目してしまいがちです。しかし、REIT(リート)も株式と同様に日々価格変動している以上、利回りのみではなく価格自体の水準が割高、割安どちらかを事前に調べておく必要があります。そこで今回はこれを調べる指標としてNAV倍率とはどういったものかについてお話していきます。
REIT(リート)比較のための指標
NAV倍率とは
まず、NAVとは、”Net Asset Value”の略で、REIT(リート)の保有不動産の鑑定評価額の合計から負債を差し引いて算出する純資産価値のことです。
REIT(リート)が保有している資産はそのほとんどが不動産と現金です。
NAVは不動産の時価評価額からREIT(リート)の価値を示すものといえます。
NAVの計算式は以下のとおりになります。
NAV(円)=REITの資産額(円)-REITの負債額(円) ※ 資産額、負債額ともに時価換算
たとえば、あるREITの不動産が時価90億円、現金が10億円、借入金が時価50億円とすると、NAVは50億円(=90億円+10億円-50億円)となります。
それではNAV倍率とは何かというと、NAVに対して投資口の時価総額が何倍かを算出したものです。
これは、NAV、投資口の時価総額をそれぞれ投資口総数で割って、1口あたりNAVに対して投資口価額が何倍かを算出したものと言い換えることもできます。
NAV倍率の計算式は以下です。
NAV倍率(倍)=投資口価額(円)÷1口あたりNAV(円)
上記で算出したNAV50億円に加えて、このREITが10,000口の投資口で構成されており、投資口価額が400,000円だとすると、NAV倍率は何倍となるでしょうか?
1口あたりNAV=5,000,000,000円÷10,000口=500,000円
NAV倍率=400,000円÷500,000円=0.8倍
よって、この場合のNAV倍率は0.8倍となります。
REIT(リート)のNAV倍率はどのように見ればいいのか?
再度NAV倍率の定義を振り返ってみましょう。
1口あたりNAVに対して投資口価額が何倍かを算出したものでした。
そして、NAVとはそのREITの純資産価値でしたね。
これって何かに似ていると思いませんか?
そう、株式投資を行う際の代表的な指標の一つPBR(株式純資産倍率)(※)に似ていますよね。
※ PBR1倍割れは買いの目安!?PERとPBRの違いとは?を参照のこと。
実はNAV倍率の見方はPBR(株価純資産倍率)とほぼ同様に考えていただいて良いです。
つまり、NAV倍率が1倍の時が皆さんにとって理論上損も得もない状態であり、これを目安として、1倍超が割高、1倍未満が割安ということです。
こう考えると、基本的にはNAV倍率が1倍未満のREITは買いといって良いでしょう。
ただし、PBR(株価純資産倍率)について解説した際にお伝えした内容に近しいですが、NAV倍率が1倍割れになっているということは将来的にREITの投資口価額が下落することを暗示している場合もあり得ます。
これを見分けるためにはNAV倍率のみならず他の指標も見ながら判断する必要があります。
REITを比較するにあたって分配金利回りのみを見て売買の判断を行うべきではないのと同様、どの指標もそれのみを見て売買の判断を行うのは危険ということです。
これはNAV倍率も例外ではありません。
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