債券投資をするにあたって、まずは債券の仕組みを理解しておく必要があります。そこでここでは利率と利回りの違い、債券市場とは株式市場と比較してどのくらいの規模の市場なのか、また金利、利回りと債券価格はどのような関係があって、債券を中途売却する際の債券価格はどう形成されるかといった基本的な事項についてお話していきます。
債券の「利率」と「利回り」の違い
債券のお話をすると「利率」と「利回り」という言葉がよく出てきます。
この2つの言葉、同じ意味だと思いますか?
実は投資の経験が豊富な方でも混同してしまっている方が非常に多いですが、これらは違う意味を持っています。
利率とは、額面金額に対する毎年受け取る利子の割合のことです。クーポンともいいます。
たとえば、額面金額100円の債券が、保有している方に年間3円の利子を支払うとした場合、この債券の利率は3%ということになります。
※ ここでは税金は考えないものとします。これ以下についても同様です。
利回りとは、投資金額に対する利子も含めた年間の収益の割合のことです。
たとえば、額面100円で保有している方に年間3円の利子を支払う債券を償還(満期)の1年前に99.1円で購入したとしましょう。
この場合、償還(満期)時に元本は99.1円から100円に値上がりして戻ってくることになりますから、利子3円に元本の値上がり分0.9円(=100円-99.1円)を足し合わせたものに投資した金額である99.1円を除した約3.9%(=3.9円÷99.1円×100)が利回りということになります。
これが上記と同条件の額面100円、利率3%、期間1年として、今度は103円で購入したとしましょう。
この場合、計算方法は同様ですから、利子の3円に元本の値下がり分-3円(=100円-103円)を足し合わせたものに投資した金額である103円を除した0%(=0円÷103円×100)が利回りということになります。
要するに利率は表面的な利益のことを指し、一方、利回りは実質的な利益を指します。
ですから、しっかりと計画的な資産形成や資産運用をしていくには、利率よりも利回りを見ることのほうが大切です。
債券市場の規模
債券市場の規模は株式市場の規模と比較しても圧倒的に大きいです。
日本ではおそらくみなさんが取引しているであろう銀行・証券会社・保険会社等金融機関はみな債券を購入しています。
「日本の借金が1000兆円に到達!」などと脅しとも取れるようなニュースが聞かれるようになって久しいところですが、このニュースは正確に表現すれば「日本国債の発行残高が1000兆円ある」ということです。
さらに世界に目を向けてみましょう。
世界の債券の市場規模は2012年段階で100兆ドルといわれています。
現在の為替で計算すると、日本円で1京2000兆円ですから、とてつもない数字ですよね。
これ、同じように2012年という同じ年の株式市場の規模が55兆ドル程度ですから、実に株式市場の2倍超の規模があることになります。
今まで債券のことを知らなかったという方も、こうして見てみると興味が湧いてきませんか?
さっき少し触れましたが、みなさんが銀行や保険会社等に預けている預金や保険料の大部分はその金融機関が債券で運用しています。
銀行や保険会社に預けるメリットはもちろんありますが、ただ中抜きのコスト負担があることを考えると、自ら直接債券を購入するという選択肢を加えておくのも一つの手でしょう。
金利、利回りと債券価格の関係、計算方法
債券の価格形成には、様々な要因があります。
ですが、その要因の本質は以下のとおり、シンプルなものです。
買い手が多ければ価格は上昇し、売り手が多ければ価格は下降する
これに尽きます。
債券の値動きは自然現象ではありません。
あくまでも取引する人たちが価値を決めているのです。
その点では株式の価格形成の要因と本質的には同様といえますね。
それでは次にもう少し具体的な債券の価格形成の要因を探っていくことにしましょう。
具体的な債券の価格形成の要因としては以下の2つが関わってきます。
1. 世の中の金利動向
2. 発行体の信用リスク
上記の1と2を総合して、債券価格は以下のように動きます。
金利が上昇すると、債券価格は下降
金利が下降すると、債券価格は上昇
これについて具体的にみていきましょう。
額面価格100円で発行された償還(満期)まで10年、利率が年3%の債券を例にとります。
債券の利率は、その債券をどこの国の通貨で発行するかによって、その国の長期金利(一般的には10年もの国債利回り)を基準として、発行体のリスク分の金利を上乗せすることで決まります。
この発行体のリスク分を上乗せする金利のことを、少々難しい用語で「リスクプレミアム」といいます。
今回の例の場合では、日本円建てで発行されていますから、日本の長期金利0.35%(2015年4月2日現在)を基準として、これを利率の年3%から差し引いた2.65%がリスクプレミアムということになります。
この債券を額面価格100円で購入して保有していたとして、1年後、基準金利である日本の長期金利が0%まで下がり、かつリスクプレミアムも1%に下がったとします。
そうすると、この時点で、この債券の計算上の利回りは1%ということになります。
ただ、元々の債券は利率が3%で固定されていますから、債券の価格が100円のままでは利回りは変わらず3%のままですので、計算上の利回りと比較して2%も高くなります。
そうするとどうなるか分かりますか?
答えは、
「魅力的な投資なので、買い手が多く集まる。そして債券の価格が上がる」
です。
要するに、利率は3%で固定されていても、計算上の利回り1%と同じ価値になるように債券価格は上昇していくということです。
これが債券の価格形成のメカニズムです。
今回の例では利回りが下がった場合でお話しましたが、利回りが上がった場合はこれと逆の動きになります。
今回は少し複雑で難しかったかもしれません。
ただこのメカニズムがわかってしまうと、他の金融商品(たとえば株式)の価格形成にも使えますので、ぜひ理解するようにしてくださいね。
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