日本の株式市場の動きを知る上でよく用いられる株価指数に日経平均株価があります。しかしこの日経平均株価だけを見て株式投資を実践するのはとくに初心者が陥りやすい間違いといえます。それはなぜか?今回は日経平均株価ともう一つの日本の代表的な株価指数である東証株価指数(TOPIX)を比較しながらお話していきましょう。
日経平均株価とは
まずはそもそも日経平均株価とはどういったものかについて説明していきます。
日本を代表する証券取引所に東京証券取引所(以下、東証)があります。
東証の第一部には2016年8月31日現在で1,976社の株式会社が上場しています。
これらは日本を代表する大企業です。
日経平均株価とはこの東証一部上場銘柄から日本経済新聞社が市場流動性の高い(日々の取引量の多い)銘柄を中心に業種間のバランスに配慮して選定した225銘柄の平均株価のことです。
ちなみに1950年9月7日から算出が開始され、以降毎営業日算出、公表されています。
日経平均株価の推移(月足、2011/9〜2016/8)
それでは日経平均株価の値はどのように計算されているのでしょうか?
これは、まず日経平均株価を構成する225銘柄の各々の株価を銘柄ごとに定められたみなし額面で旧50円額面水準に引き直した修正株価を算出し、次に225銘柄の修正株価の合計を除数で割ることで求めます。
ある構成銘柄の修正株価(①)と日経平均株価(②)の計算式は以下のとおりになります。
① ある構成銘柄の修正株価=同銘柄の株価×(50÷同銘柄のみなし額面)
② 日経平均株価=全構成銘柄の修正株価合計÷除数
みなし額面や除数といったわからない言葉が出てきたかと思いますが、ここでは日経平均株価は「株価」に基づいて計算されていることがご理解いただければ十分です。
日経平均株価と東証株価指数(TOPIX)の違い
次に日経平均株価とともに日本を代表する株価指数といえる東証株価指数(TOPIX)とはどういったものかについて説明していきます。
TOPIXとは東証が東証一部に上場する全銘柄を対象として算出する浮動株ベースの時価総額加重型の株価指数のことです。
元々は1968年1月4日の東証一部上場全銘柄の時価総額(=株価×上場株式総数)の指数を100として算出されていましたが、2006年6月以降は上場株式数の代わりに浮動株式数を用いる方式に変更されています。
ちなみに浮動株式数とは安定株主を含めずに市場に流通する可能性の高い株式数のことです。
東証株価指数(TOPIX)の推移(月足、2011/9〜2016/8)
TOPIXは東証一部上場全銘柄の浮動株ベースの「時価総額」に基づいて算出されています。
これが東証一部上場銘柄のうち225銘柄の「株価」に基づいて算出される日経平均株価との違いということになります。
日経平均株価とTOPIXを徹底比較!
なぜ日経平均株価だけを見て株式投資をしてはいけないのか?
それではここからは日経平均株価だけを見て株式投資してはいけない理由について説明していきます。
ここまでで日経平均株価とTOPIX、各々の過去5年間の月足チャートを提示しました。
まずはこれを重ね合わせて見てみましょう。
日経平均株価とTOPIXの推移(月足、2011/9〜2016/8)
2011年9月末を100として算出
上のチャートをご覧いただくと、2013年半ばまでは日経平均株価、TOPIXともにほぼ同様に上下動しています。
しかしそれ以降は日経平均株価のほうがTOPIXよりも大きく上昇していることが見て取れるでしょう。
これはNT倍率の推移を見るとよりはっきりします。
このNT倍率とは日経平均株価(N)をTOPIX(T)で割ったものです。
NT倍率の推移(月足、2011/9〜2016/8)
NT倍率はこの5年間右肩上がりとなっているのが一目瞭然ですね。
それではなぜこのような推移となっているのでしょうか?
これを解き明かすには日経平均株価、TOPIX各々を構成する銘柄の割合を見ていく必要があります。
日経平均株価とTOPIXの構成割合の違い(2016/8/31現在)
日本取引所グループおよび日経平均株価プロフィールのサイト情報を基に作成
上図は日経平均株価、TOPIX各々の構成割合上位10銘柄を表したものです。
ソフトバンクグループとKDDIの2銘柄以外は重複がありません。
業種別では日経平均株価とTOPIXともに通信、また日経平均株価は電気機器、TOPIXは自動車と銀行が複数銘柄ランクインしています。
そしてここからが大事なところです。
TOPIXが構成割合上位5銘柄で11.50%なのに対し、日経平均株価は構成割合上位5銘柄で23.69%と全体の1/4弱に上っています。
とくに日経平均株価の構成割合トップのファーストリテイリングは実に8.42%も占めています。
つまり日経平均株価はファーストリテイリングをはじめとした上位5銘柄に構成割合が偏っているということです。
そのためこれらの銘柄の株価に応じて日経平均株価の値動きが左右されやすいというわけです。
要するに2013年半ば以降日経平均株価がTOPIXを上回って推移してきたのはここに理由があります。
ここで一つ素朴な疑問が出てきます。
冒頭にお伝えしたように日経平均株価は日本の株式市場の動きを知る上でよく用いられる株価指数とお伝えしました。
しかしこのように構成割合が大きく偏った状態で日本の株式市場の動きを知ることができるでしょうか?
答えは否であり、そうであるが故に日経平均株価だけを見て実際に株式投資をすると間違いを起こしやすいのです。
もちろんTOPIXもあくまでも東証一部に限定された株価指数ですから、これを見ても日本の株式市場全体の動きを知ることはできません。
しかしながら少なくとも日経平均株価だけを見るよりも、より広い視野で日本の株式市場を見渡すことができるでしょう。
初心者をはじめとした皆さんはこれから少なくとも日経平均株価とともにTOPIXの動きも気にして見ていただければと思います。