皆さんは銀行預金に対してどのようなイメージをお持ちでしょうか?おそらく金利が低いけれども元本保証なのでお金を預けておくのに安心だという方がほとんどでしょう。たしかにその通りではあります。しかし、多くの方が意識してか無意識かは別として銀行預金を特別視しすぎているように見受けられます。これは資産形成をする上でマイナスとなることが少なくありません。そこで今回は「銀行預金に対する誤解を解く」をテーマにお話を進めていきます。
なぜ銀行預金は”元本保証”で”低金利”なのか?
冒頭で銀行預金のイメージとしてほとんどの方から挙がるとお伝えしたのが元本保証と低金利の2つです。
実はこの2つには通常のリスクリターンとは別の部分での関連性があります。
元本保証とは、すべての運用期間にわたって元本割れしないことを保証していることで、また払出時に元本が満額支払われることを保証していることです。
元本保証の代表的な金融商品としては、預貯金、債券、保険が挙げられます。
ただし、これらの金融商品の種類の中には元本保証でないものもありますので注意が必要です。
それでは、この保証とは誰がするのでしょうか?
答えは預け先です。
たとえば、債券の中で国債の場合であれば国ということになりますし、社債の場合であれば企業ということになります。
預金の場合は銀行が保証しています。
ですから、これらの預け先が破綻してしまった場合には、元本割れする可能性があるということです。
ただ、預金については預金保険制度でカバーされている部分があります。
預金保険制度とは、銀行などの預金取扱金融機関が預金保険料を預金保険機構に支払い、万が一金融機関が破綻した場合に本機構が一定額の保険金を支払うことにより預金者を保護する仕組みのことです。
注意点としては、預金の種類によって預金保険で保護される範囲が異なるということです。
当座預金や無利息型普通預金等の決済性預金は全額保護、普通預金や定期預金等の一般預金は合算して元本1000万円までと破綻日までの利息等を保護となっています。
ここからは銀行の預金金利の決まり方についてお話します。
銀行の預金金利は無担保コール翌日物金利に連動して決定されています。
無担保コール翌日物金利とは、短期金融市場におけるインターバンク市場(市場参加者は金融機関のみ)のひとつであるコール市場の代表的な取引で、金融機関同士が「今日借りて、明日返す」、「今日貸して、明日返してもらう」といったような1日で満期を迎える超短期の資金調達や資金供給を、借り手が貸し手に対して担保を預けずに行う取引の金利のことです。
この無担保コール翌日物金利は日銀が金融政策によって誘導している政策金利で、短期金利の代表格です。
現状、日銀はこの無担保コール翌日物金利をゼロ近傍に誘導していまから、銀行預金が低金利なのは当然とも言えます。
さらに、ざっくり言うと、先ほど申し上げたように銀行などの預金取扱金融機関は預金者保護の観点から預金を元本保証とするために預金保険料という一定のコストを支払っていますから、これが預金者である皆さんにとっては低金利に甘んじなければならないという側面もあります。
皆さんの多くが銀行預金に対して抱いている誤解とは?
ここまでで、銀行預金に対する皆さんのイメージである元本保証と低金利についてお話してきました。
預金保険制度による預金者保護はともかく、元本保証は預貯金だけのものではなく、債券や保険も元本保証型の金融商品です。
また、銀行預金は預金保険制度によって預金保険料をいう銀行からするとコストを預金保険機構に支払う関係で、より低金利とならざるを得ないところがあります。
これは裏を返すと、同じ元本保証でも債券や保険のほうが有利と言える場合が大いにあるということです。
それでも銀行預金に多くの方がご自身のほとんどの資産を預けている理由とはどこにあるのでしょうか?
おそらく人によって様々考えられるかと思います。
ただ、一つ共通点を挙げると、皆さんの多くが銀行預金を金融商品の一つとしてではなく、現金の置きどころとして考えていることにあります。
これが銀行預金に対して抱いている誤解と言えます。
たしかに普通預金や期間の短い定期預金は低金利とはいえ、元本保証ですし、流動性(換金性)が高いというメリットはあります。
通常のお金を出し入れする先としては悪くないでしょう。
ただ、たとえば住宅購入などの大きな出費があるわけでもないのに、何百万円も何千万円も銀行預金に預けておく理由にはなりません。
むしと普段使いの出し入れするお金を除いた資産については、銀行預金以外の金融商品に預けるほうが有利な場合が多いです。
つまり、大切なことは銀行預金も金融商品の一つに過ぎないという認識を持つことです。
銀行預金は特別視してしまいやすい金融商品ですが、この点を念頭に置くことによって、資産形成における金融商品への投資が決してハードルの高いものではないことをご理解ください。