資産運用をする上で初心者にとって投資信託は便利ですが直近で6,000本超に上る本数からどれを選べば良いか悩ましいもの。そこで金融機関で相談すると新商品のテーマ型投資信託を勧められるということが少なくありません。しかしこれは場合によって大損を被るおそれすらあるあまりおすすめできない選択といえます。なぜでしょうか?
前の記事:資産運用で毎月分配型投資信託をおすすめしない理由とは?
テーマ型投資信託とは?金融機関からおすすめされる理由とは?
テーマ型投資信託とはその時々に世の中で話題になっているテーマに関連する資産に的を絞って投資するタイプの投資信託の総称です。
たとえば2001年頃のBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の資産に投資するファンドや2010年頃のクラウドコンピューティング・SNSの技術に関連する企業等に投資するファンド、2012年頃のシェールガス開発に携わる企業等に投資するファンドなどがこれに該当します。
上記にあるようにテーマ型投資信託は「その時々に世の中で話題になっていること」が特徴です。
この特徴からとくに新商品のテーマ型投資信託は金融機関にとって顧客に対して販売しやすい金融商品といえます。
ここからは2016年に開催されたブラジルのリオデジャネイロ五輪を例にとって説明していきます。
リオデジャネイロ五輪は実際に開催されたのは2016年8月ですが、招致決定されたのはそれから遡ること約7年、2009年10月になります。
このリオデジャネイロ五輪が招致決定された後から多くの金融機関が開催国のブラジルの株式に投資するテーマ型投資信託を新たに発売しています。
オリンピック(五輪)は世界的なニュースですので、当時は連日のようにTVや新聞、雑誌、インターネットを通じて盛んに報じられていました。
こういった時に金融機関のセールスは担当する顧客に新商品のブラジル株式に投資するファンド(テーマ型投資信託)の資料を持参してたとえば以下のようなセールストークを展開していたようです。
「最近ブラジルのリオデジャネイロで開催することが決定したことでTVや新聞、雑誌などでオリンピック(五輪)の特集が組まれたりしてとても話題になっていますよね。過去を振り返ってみるとオリンピック(五輪)を開催する国の株式は上昇しやすいですよ。このチャートをご覧ください。」
ここで以下のチャートを顧客に見せた上でさらにセールストークが続きます。
過去の五輪開催国の招致決定日から開催日までの株価推移
「このチャートは2000年に開催されたシドニー五輪の開催国であるオーストラリアの株価指数(S&P/AX200指数)の推移を招致決定した1993年9月を100として表したものです。ご覧のとおり招致決定から実際の開催までの7年間で株価は80%近く上昇しています。この資料にあるように次に開催されるブラジルの株式を組み入れた投資信託を新たに設定することになりましたので購入されてはいかがですか?」
このように目の前で過去の実績を示された上でセールストークを展開されると「これは利益が出そうだしいいかもしれない!」と思ってしまいがちなものです。
しかもその時々に各所で話題になっているテーマで、このようなセールストークを聞く前から顧客自身が知っているニュースであれば尚更でしょう。
資産運用にあたって新商品のテーマ型投資信託がおすすめできない理由とは?
しかしこれには落とし穴があります。
まずは論より証拠ですから、ブラジル株がその後にどのような経過を辿ったか、以下のチャートをご覧いただきましょう。
リオ五輪開催をテーマにブラジル株に投資していたら・・・
上図のチャートはブラジルを代表する株価指数であるボベスパ指数の直近10年間の推移を表したものです。
リオデジャネイロ五輪の招致決定(2009年10月)から実際の開催(2016年8月)までの値動きに注目してください。
たしかに招致決定から数ヵ月の間は上昇していますが、その後高値を付けてからは実に-49%と半値になってしまいました。
さらにその後実際の開催までの数ヵ月間は上昇に転じていますが、招致決定時の水準にさえ戻していません。
このように先ほど一例としてご紹介したセールストークに乗って新商品のブラジル株式に投資するファンド(テーマ型投資信託)を購入していた場合、購入直後に売却するでもない限りは大きな損失を被ってしまった可能性が高いといえます。
それではなぜこのような事態が生じてしまったのでしょうか?
これを説明するにあたっては以下の図をご覧いただきましょう。
新商品のテーマ型投資信託が商品化されるまでのイメージ
上図は新商品のテーマ型投資信託が商品化されるまでの投資対象の価額の推移をイメージとして表したものです。
まず青の丸印で示した段階では話題性がない代わりに価額も低い水準にあります。
しかし話題性がないわけですから、この段階では一般的に商品化を検討すらされません。
次に緑の丸印で示した段階では話題になり価額もこれに乗じて上昇していきます。
この段階こそ商品化が検討されやすい時点になります。
ただ、商品化が検討されたからといってすぐに商品化できるわけではありません。
実際にはオレンジの丸印で示した段階でやっと商品化されるのが一般的です。
この段階は悪くすると上図にあるように価額のピークに当たります。
つまり新商品のテーマ型投資信託は商品化された時点で既に価額のピークかそれに近い水準となっている可能性が高いということになります。
それではなぜこのような商品化の流れになってしまうのでしょうか?
それは金融機関にとってみれば、顧客がその投資信託を通じて利益を享受できるかどうかよりも、その投資信託が顧客に購入していただけるかどうか、つまりより多くの残高を集めることができるかのほうが優先されがちだからです。
その投資信託がより多くの残高を集めることができれば、購入時の買付手数料や保有期間中の信託報酬などが金融機関の収益として見込めます。
だからこそ、新商品のテーマ型投資信託は金融機関のセールスにとって販売しやすい商品設計を採用し、顧客に対しておすすめすることが必然的に多くなりがちというわけです。
こういったところから新商品のテーマ型投資信託を購入することは極力避けて通ったほうが賢明といえるでしょう。
次の記事: アクティブ型投資信託での資産運用がうまくいかない理由
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