資産運用の前段階に当たる資産形成を実践するにあたって積立投資は初心者の方にとって主軸に据えるべき方法です。積立投資というと定額積立投資(ドルコスト平均法)を思い浮かべる方が大半かと思います。しかしそれ以外におすすめの方法はないのでしょうか?今回はこれについてシミュレーション比較しつつお話していきます。
資産運用の前段階の資産形成では積立投資が基本!
冒頭でお伝えした通り資産運用の前段階である資産形成を実践するにあたって積立投資は初心者の方にとって主軸に据えるべき方法です。
資産形成は毎月の収支差額を安定的に黒字化した上でその黒字分を使ってお金がお金を生む仕組みを作ることによってはじめて成果が期待できます。
このお金がお金を生む仕組みというのが積立投資というわけです(※1)。
※1 資産形成から資産運用へ〜初心者におすすめの目安〜を併せて参照のこと。
それではまず積立投資の中でも代表格ともいえる定額積立投資(ドルコスト平均法)についてお話していきましょう。
定額積立投資(ドルコスト平均法)とは株式や投資信託等の金融商品を一度に全額購入せずに毎月など定期的に一定の金額を継続して購入する投資方法のことです。
「定期的」・「一定の金額」・「継続して」という3つのポイントを押さえる必要があります。
この投資方法は投資対象に選んだ株式や投資信託等の金融商品の価格が高い時には少ない数量(株数や口数)を、価格が高い時には多くの数量(株数や口数)を購入することに自動的になりますので、とくに相場が大きく上下動するような場合には平均購入価格を低く抑えることができるというメリットがあります。
ここからは一つ例を出して説明していきます。
以下の図は日経平均株価とともに日本の株式市場を代表する株価指数TOPIX(※2)に連動するETF(※3)、TOPIX連動型上場投資信託(銘柄コード:1306)の2012年4月から2017年3月までの直近5年間の値動き(各営業日の終値)を追ったチャートです。
※2 日経平均株価だけを見て株式投資してはいけない理由を参照のこと。
※3 手数料も信託報酬も安い投資信託!?ETFってなに?を参照のこと。
1306 TOPIX連動型上場投資信託(2012年4月〜2017年3月、5年)
この局面で定額積立投資(ドルコスト平均法)した場合を考えてみます。
ここでは2012年4月〜2017年3月の5年間、毎月初めの営業日に購入上限金額を10万円の定額としてTOPIX連動型上場投資信託を継続購入するものとします。
購入上限金額を定額としたのはTOPIX連動型上場投資信託は先ほどお伝えした通りETFであり、個別の株式と同様に取引時間中(9:00〜11:30、12:30〜15:00)は取引価格が変動する上、売買単位が10口と定められているため、実際の購入金額そのものを定額とすることができないからです。
これを踏まえてTOPIX連動型上場投資信託の取引価格(終値)と平均購入価格、また累積購入口数を表したのが以下の図になります。
定額積立投資(ドルコスト平均法)の場合
左軸:取引価格、平均購入価格 右軸:累積購入口数
注:上図はあくまでもシミュレーションです。この期間中に発生した受取可能な分配金については考慮しておりません。また実際の取引にあたっては売買手数料が掛かる場合がございます。予めご了承ください。
上図で取引価格と累積購入口数の推移を見比べると、取引価格が上昇している局面では累積購入口数の増加は緩やか、一方で取引価格が下落している局面では累積購入口数の増加は急になっているのが微妙な差異ではあるもののお分かりいただけるかと思います。
これに伴って先ほど申し上げた通り平均購入価格は低く抑えられています。
ここで最後に購入した2017年3月1日時点の各数値をお伝えしておくと、取引価格1,594円、平均購入価格1,198円、累積購入口数4,680口です。
ここから運用利回りを計算すると5年間トータルの運用利回りは33.06%、これを年複利に直すと5.88%となります。
ちなみに金額ベースでは累積購入金額が560万円に対し、2017年3月1日時点の時価は732万円となりますから、含み益は172万円です。
こう見ていくと悪くはない運用成績とはいえるでしょう。
ただ、他に良い投資方法はないものかと考えてみることが大事です。
そこで次に変額積立投資について定額積立投資(ドルコスト平均法)とシミュレーション比較しながら見ていきましょう。
シミュレーション比較!定額積立投資(ドルコスト平均法)と変額積立投資
定額積立投資(ドルコスト平均法)のデメリットといえるのは一本調子の上昇相場や下落相場に弱いということが挙げられます。
投資の基本原則は「価格が安い時に買って高い時に売る」ですから、事前に上昇相場が想定されるのであれば価格が安いうちにまとまった金額を購入したほうが良いですし、一方で事前に下落相場が想定されるのであれば下がりきるまでは価格が高いので購入を見送ったほうが良いことになります。
先ほどシミュレーションで示したTOPIX連動型上場投資信託は2012年4月〜2017年3月の5年間ほぼ一本調子に上昇相場を形成しています。
その証拠に最初に購入した時点(2012年4月2日)の取引価格(終値)は877円、最後に購入した時点(2017年3月1日)の取引価格(終値)は1,594円と大きな差が生じています。
ここで仮に最初に購入する時点でまとまった金額を購入し、その後は一切継続購入しなかった場合、最後に購入した時点で5年間トータルの運用利回りは81.76%、年複利の運用利回りは12.69%です。
先ほどの定額積立投資(ドルコスト平均法)の場合では5年間トータルの運用利回りが33.06%、年複利の運用利回りが5.88%でしたから、運用成績に大きく差をつけられることになります。
もっとも、これはあくまでも結果論に過ぎず、最初に購入した時点で5年後にこれほどの上昇相場になると先読みするのは容易にできることではありません。
ただ、そうはいってもこの差を少しでも縮めて定額積立投資(ドルコスト平均法)を超える運用成績を出す可能性の高い投資方法があればそれに越したことはないでしょう。
そこで考案したのが変額積立投資になります。
変額積立投資とは株式や投資信託等の金融商品を一度に全額購入せずに毎月など定期的に相場の値動きに応じて異なる金額(変額)を継続して購入する投資方法のことです。
「定期的」・「相場の値動きに応じて異なる金額(変額)」・「継続して」という3つのポイントを押さえる必要があります。
定額積立投資(ドルコスト平均法)を比較すると定期的に継続購入する金額が一定か、変化するかの違いであることがすぐに分かるでしょう。
いたってシンプルなものですね。
定額積立投資(ドルコスト平均法)と変額積立投資の違い
定期的に購入する金額を変化させるのは投資の基本原則である「価格が安い時に買って価格が高い時に売る」を実践するためのものです。
この変化のさせ方は様々に工夫することができますが、ここでは上図にあるように毎月の継続購入にあたって前月比-5%〜5%を基準として、これを上回って上昇した場合は購入しない、一方でこれを下回って下落した場合は下落率に応じて2倍、3倍、4倍と増やしていくことにします。
それでは、ここからは先ほどの定額積立投資(ドルコスト平均法)と同様に、2012年4月から2017年3月までの直近5年間、TOPIX連動型上場投資信託に今度は変額積立投資した場合を見てみましょう。
ここでも毎月初めの営業日にTOPIX連動型上場投資信託を継続購入しますが、購入する金額は上図に倣って基準額を上限10万円に設定した上で、前月比+5%〜→購入しない、前月比-5%〜+5%→上限10万円購入、前月比-10%〜-5%→上限20万円購入、前月比-15%〜-10%→上限30万円購入、前月比〜20%→上限40万円購入することにします。
これを踏まえてTOPIX連動型上場投資信託の取引価格(終値)と平均購入価格、また累積購入口数を表したのが以下の図になります。
変額積立投資の場合
左軸:取引価格、平均購入価格 右軸:累積購入口数
注:上図はあくまでもシミュレーションです。この期間中に発生した受取可能な分配金については考慮しておりません。また実際の取引にあたっては売買手数料が掛かる場合がございます。予めご了承ください。
上図で取引価格と累積購入口数の推移を見比べると、取引価格が上昇している局面では累積購入口数の増加は緩やか、一方で取引価格が下落している局面では累積購入口数の増加は急になっているのが、定額積立投資(ドルコスト平均法)の場合よりもはっきりした形でお分かりいただけるかと思います。
これに伴って変額積立投資は定額積立投資(ドルコスト平均法)に比べて平均購入価格はより低く抑えられることになります。
定額積立投資(ドルコスト平均法)vs 変額積立投資
注:上図はあくまでもシミュレーションです。この期間中に発生した受取可能な分配金については考慮しておりません。また実際の取引にあたっては売買手数料が掛かる場合がございます。予めご了承ください。
変額積立投資で最後に購入した2017年3月1日時点の各数値をお伝えしておくと、取引価格1,594円、平均購入価格1,151円、累積購入口数4,440口です。
ここから運用利回りを計算すると5年間トータルの運用利回りは38.49%、これを年複利に直すと6.73%となります。
ちなみに金額ベースでは累積購入金額が511万円に対し、2017年3月1日時点の時価は695万円となりますから、含み益は184万円です。
定額積立投資(ドルコスト平均法)では5年間トータルの運用利回りが33.06%、年複利の運用利回りが5.88%、含み益が172万円でしたから、変額積立投資のほうが運用成績が上回る結果となります。
平均購入価格をより引き下げるために毎月の購入金額を変動させているわけですから当たり前といえば当たり前ですね。
ただ、万能の投資方法というものはないもので、この変額積立投資にもデメリットがあります。
お気づきの方もいらっしゃるでしょうが、それは継続購入を終える時点まで投資金額の総額が定まらないことです。
今回の例のように上昇相場が長期化すると投資総額は少なくなりますし、逆に下落相場が長期化すると投資総額は多くなります。
そのため変額積立投資を実践するにあたっては基準額をかなり余裕をもった金額に据える必要があります。
上昇相場が長期化するなどして購入していない資金はいざという時に備えて現預金に待機させておくのが基本です。
もちろん、あまりにも現預金で寝かせる期間が長期化しそう、あるいは既に長期化してしまっている場合は他の金融商品を購入することを検討しても良いでしょう。
ここでは変額積立投資についてお伝えしましたが、最も重要なのはこのように工夫次第で定額積立投資(ドルコスト平均法)を上回る運用成績を狙える投資方法を考案することも可能だということです。
ここまでを踏まえて皆さんもぜひご自身に合った投資方法をあれこれ工夫しながら見出していってください。
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