今回は確定拠出年金(401k)のメリットとデメリットについてお話していきます。ただ確定拠出年金(401k)にのみ焦点を当ててお話しても制度自体の良し悪しが掴みづらいかと思いますので、今回はまず現行の企業年金で確定拠出年金(401k)と対をなす確定給付年金の中でもとくに確定給付企業年金の制度概要を説明した上で、確定拠出年金(401k)と確定給付年金、それぞれのメリットとデメリットを比較できるようにお伝えしていきます。それではまずは確定給付年金のお話からしていきましょう。
確定給付年金とは
確定給付年金とは、確定給付企業年金法に基づいて実施される企業年金制度で、制度資産の利回りではなく、加入者の勤務期間や給与等に基づく計算式で規定される年金です。
少しややこしい言い回しをしましたが、つまりは給付金額があらかじめほぼ確定している年金です。
この確定給付年金、以前は厚生年金基金がその役割を一手に担っていましたが、2002(平成14)年4月からはこの厚生年金基金に確定給付企業年金が加わりました。
従来からある「厚生年金基金」は、公的年金である厚生年金保険の一部を代行するものという位置付けです。
では2002年に新設された確定給付企業年金とはどういったものなのでしょうか?
次にこれについてみていきます。
確定給付企業年金について知ろう!
確定給付企業年金には、「規約型企業年金」と「基金型企業年金」の2つの種類があります。
以下それぞれの特徴について説明します。
規約型企業年金
労使が合意した年金規約に基づいて、企業と生命保険会社や信託銀行などが契約を締結し、母体企業の外で年金資産を管理・運用し、年金給付を行うものです。
基金型企業年金
母体企業とは別の法人格をもった基金を設立した上で、基金において年金資産を管理・運用し、年金給付を行うものです。
加入者
確定給付企業年金は厚生年金保険の被保険者等が加入対象者となっています。
厳密には、企業側が年金規約において加入資格を定めることができますが、ただし、その場合は加入資格は特定の者について不当に差別的なものであってはならないとされています。
給付
確定給付企業年金の給付額は、定額または給与および加入期間等の合理的な基準に基づいて算定されます。
これも当然の話ですが、特定の者について不当に差別的なものであってはならないことなどとされています。
給付には、老齢給付金・障害給付金・遺族給付金(および死亡一時金)・脱退一時金があります。
一つずつ説明すると、以下のとおりになります(障害給付金と遺族給付金(および死亡一時金)は地続きとなっているため一括りにまとめます)。
老齢給付金
加入者が60歳以上65歳以下の年金規約で定める年齢に達したときに年金として支給されます。
ただし、企業側は規約に一時金との選択支給を定めることもできます。
障害給付金・遺族給付金(および死亡一時金)
企業側が年金規約に支給を定めた場合、加入者等が高度障害または死亡した場合に、それぞれ障害給付金または遺族給付金が支給されます。
なお、規約に定めることにより、それぞれ一時金(遺族給付金は死亡一時金)として支給することもできます。
脱退一時金
加入期間が3年以上の退職者で、年金給付が受けられない場合、脱退一時金が支給されます。
確定給付企業年金のメリットとデメリット
ここまでお話してきた確定給付企業年金について加入者側のメリットとデメリットをまとめると以下のようになります。
メリット
- 老後の生活設計が立てやすい
- 給付金額の変動リスクを負わなくて済む
- 60歳前でも退職時には受給可
デメリット
- 年金原資の個人持ち分が不明確な場合が多い ※明確なタイプもある
- 転職の際の移換に制限がある
- 資産運用に意思を反映できない
確定拠出年金(401k)のメリットとデメリット
一方でここからはいよいよ確定拠出年金(401k)について加入側のメリットとデメリットをまとめてみます。
以下のとおりになります。
メリット
- 年金原資の個人持ち分が明確
- 転職の際に移換できる
- 自分の意思で資産運用できる
デメリット
- 老後の生活設計が立てづらい
- 給付金額の変動リスクを負う
- 60歳まで資産を引き出せない
徹底比較!確定給付企業年金と確定拠出年金(401k)
ここまでで確定給付企業年金と確定拠出年金(401k)、各々のメリットとデメリットについてまとめました。
これをご覧いただいて気づくことはありませんか?
そう、確定給付企業年金のメリットと確定拠出年金(401k)のデメリット、確定拠出年金(401k)のメリットと確定給付企業年金のデメリットが背中合わせになっていますよね。
ここで端的に両者の最大の違いをいってしまえば運用にあります。
確定給付企業年金は運用についてはいわばお任せです。
その一方で、確定拠出年金(401k)は自分の意思で運用しなければなりません。
この点をどう捉えるかはみなさん各々違うことでしょう。
「運用なんて面倒・・・勝手にしてくれるほうがいい!」という方も少なくないかもしれません。
ただそもそもですが、加入者のみなさんのお勤め先によって両者のどちらか、ないしは両者とも導入されている、されていないというのが企業側に決められてしまうのが企業年金制度です。
もし確定拠出年金(401k)のみ導入されている場合は否が応にも運用を考えなければなりません。
こうした方には「面倒」という後ろ向きな一言で済ませてしまうのではなく、「これを資産形成や資産運用について考えるきっかけにしよう!」と前向きに捉えていただきたいところです。
資産形成や資産運用は正しい手順で学んで実践していけばそれほど難しく考える必要のないものです。
喰わず嫌いにならずに、一緒にしっかりと学んで実践していきましょう。