「老後破産」を避けるための対策としては”老後資金の準備”が欠かせません。今回は老後生活資金の総額の目安から「定年退職をする60歳までに5000万円を貯める」というゴールを前提として「老後資金準備のための貯蓄/運用方法」の基本的な考え方についてお話していきます。あくまで一例ではありますが、ぜひご参考にしてみてください。
【老後破産対策】老後資金準備のための貯蓄方法
冒頭で老後資金準備のゴールとして「定年退職をする60歳までに5000万円を貯める」とお伝えしました。
ここではみなさんの年齢が現在30歳であるとしましょう。
そうするとこの老後資金準備のゴールは「30年間で5000万円を貯める」と言い換えることができます。
この場合、まず一切運用を考えずに毎月の収支差額(収入-支出)の黒字分で貯めていくとすると月いくらを貯蓄に回す必要があるか考えてみましょう。
これは約14万円/月(=5000万円÷30年÷12ヶ月)です。
ちなみに年間では約167万円/年(=5000万円÷30年)となります。
これはかなりハードルが高いと思われたのではないでしょうか?
仮に年2回のボーナスで調整をかけるとして毎月の貯蓄を5万円/月に抑えた場合でも、約167万円/年から年60万円(=5万円/月×12ヶ月)の差額100万円超をボーナスから貯蓄に回さなければならないわけですから、現実的に無理があると言わざるをえないでしょう。
そこで単純な貯蓄に運用を加えることがこの問題を解決する糸口になります。
そうするとこの場合、「毎月5万円ずつ貯蓄し、運用利回り年6%で運用すれば、30年後に5000万円貯まる」ことになります。
これだと毎月の貯蓄の観点から見ればだいぶ気が楽になったのではないでしょうか?
先ほどのようにさらに年2回のボーナスで調整をかけるとすると、毎月の貯蓄を2万円/月、年2回のボーナスでの貯蓄を1回につき18万円(=(5万円/月ー2万円/月)×12ヶ月÷2)すれば良いことになります。
これでだいぶ気が楽になったのではないでしょうか?
それではここから貯蓄の方法について考えていきます。
ここでのポイントは「自動的に貯蓄できる仕組みをつくる」ということです。
30年間というのは長期間にわたるものですから、いくら”継続は力なり”と意識的に根気強く貯蓄していこうと思っても”言うは易く行なうは難し”というのが現実でしょう。
そこで、たとえば給与天引きで自動的に貯蓄できる仕組みを作ってしまえば、普段から意識していなくても勝手に貯蓄されていくわけですから、努力感なく貯蓄ができるというわけです。
それではこの”自動的に貯蓄できる仕組み”とはどういったものでしょうか?
これは実に様々な方法が考えられます。
ここでは例として以下に3つ挙げておきます。
1. 確定拠出年金(401k)
2. NISA口座での株式や投資信託の積立投資
3. 月払いの変額保険
貯蓄だけを考えれば、他にも財形貯蓄制度の一般財形貯蓄や月払いの個人年金保険などもここに加えることができるでしょう。
ただその場合、次にお話する運用のことを考えると、財形貯蓄制度の一般財形貯蓄や月払いの個人年金保険の現状の利回りでは不可能と言わざるを得ませんので、この点は念頭に置いておいてください。
【老後破産対策】老後資金準備のための運用方法
まず、残念ながら「こうすれば目標とする運用利回りを達成することができる」という確実な方法は存在しません。
これは、当たり前と思われる方も多いでしょうが、運用するということは元本が保証されている現預金以外の金融商品や不動産等を保有することですから、絶対に〜という話はすべて嘘が入り混じっていると考えていただいて差し支えないでしょう。
ここは重要な点ですので必ず押さえておいてください。
これを踏まえた上で、もう一つ大事なポイントがあります。
それは「目標とする運用利回りを毎年達成し続けることはできない」ということです。
元本保証ではない=元本が変動する、ということに他なりませんから、元本額が変動する中で、目標とする利回り、今回の場合では年6%を上回る成果を出せる年もあれば、その一方で下回る、それどころか含みでの損失を抱えてしまう年もあることでしょう。
要は「結果的に目標とする運用利回りが年平均で達成できれば良い割り切ることが肝腎」ということです。
運用に確実性を持たせようと思っても、そもそも市場(しじょう)というものは我々の思い通りになることはありませんので。
仮にこの確実性のない、つまり不確実である運用をどうしても行ないたくないという方は、ご自身で定めた老後資金準備のゴールに基づいて、一般財形貯蓄や月払いの個人年金保険の月々ないしは年間の貯蓄額を高めに設定して積み立てていくと良いでしょう。かなりきついとは思いますが・・・
それでは少し具体的に「年平均6%の運用利回りを達成する運用方法」について考えていきましょう。
まずどの資産で運用すべきか、つまり資産配分についてです。
以下の表をご覧ください。
主要9資産 過去リターン(更新日 : 2015年6月)
- 主要資産の直近月までの過去実績リターン(円ベース)です。
資産名 | 年率平均リターン(%) | |||
---|---|---|---|---|
1年 | 5年 | 10年 | 20年 | |
現金 | + 0.1 | + 0.1 | + 0.2 | + 0.2 |
日本株式 | + 31.5 | + 16.6 | + 5.2 | + 3 |
外国株式 | + 22.5 | + 21.9 | + 8.3 | + 10.3 |
日本債券 | + 2 | + 1.9 | + 1.8 | + 2.3 |
外国債券 | + 12.4 | + 10.1 | + 4.9 | + 7.5 |
日本不動産 | + 16.5 | + 20.8 | + 5.8 | |
外国不動産 | + 22.7 | + 21.6 | + 7 | + 12.3 |
コモディティ | -23.6 | + 2.1 | -5.3 | + 3.8 |
円(対米ドル) | + 20.9 | + 6.7 | + 1 | + 1.9 |
http://myindex.jp/assets_i.phpより引用
上表はあくまでも過去の実績ですから、将来の実績を保証するものではありません。
ですが、将来のことは誰一人としてわからないわけですから、過去の実績から類推して資産配分を決めることになります。
この場合ですと、目標の運用利回りである年平均6%を表にある最長年数である20年間の年平均で達成しているのは、外国不動産(+12.3%)・外国株式(+10.3%)・外国債券(+7.5%)となります。
またこれらの次点としてはコモディティ(+3.8%)・日本株式(+3%)・日本債券(+2.3%)といったところでしょうか。
これら6つの資産のいくつかあるいはすべてを組み合わせて資産配分を決めていくとします。
その時に上表で見てきたリターンと合わせて重要になってくるのがリスクです。
これも過去20年間の実績で見てみると以下の通りになります。
外国不動産 リターン:+12.3%/リスク:21.0%
外国株式 リターン:+10.3%/リスク:19.2%
外国債券 リターン:+ 7.5%/リスク:10.9%
コモディティ リターン:+ 3.8%/リスク:24.5%
日本株式 リターン:+ 3.0%/リスク:17.9%
日本債券 リターン:+ 2.3%/リスク: 2.5%
出典:http://myindex.jp/assets_i.php
ここでいうリスクとは、統計学上の「標準偏差」のことで、リターンの変動幅(ブレ)のことをいいます。
どういうことかといいますと、日本株式の場合、上記の通りリターンが+3.0%、リスクが17.9%ですから、+3.0%±17.9%で、-14.9%〜+20.9%が想定しうる(損失も含めた)リターンの範囲となるということです。
このリターンの範囲を上記6つの資産で表すと以下の通りになります。
外国不動産 -8.7%〜+33.3%
外国株式 -8.9%〜+29.5%
外国債券 -3.4%〜+18.4%
コモディティ -20.7%〜+28.3%
日本株式 -14.9%〜+20.9%
日本債券 -0.2%〜+4.8%
上記をご覧いただいて6つの資産の中から一つだけに絞らなければならないとするとみなさんはどれを選びますか?
もし極力リスクの小さい安定的な運用で目標の年6%を達成しようと考えるのであれば「外国債券」を選択するのが最上ということになります。
この場合、次点では「外国不動産」ということになるでしょう。
リスクを最小限に抑えたいのであれば「日本債券」ですが、リターン幅の上限で+4.8%ですのでこれでは目標達成には心許ないといえます。
またコモディティと日本株式はリターン幅の上限の割に下限のマイナスが大きいのでリターンに対してリスクが過大といえますね。
さて、ここからさらに突っ込んでみていくと、6つの資産それぞれの価格の過去推移からどの程度相関(そうかん)するか、つまり一方が上昇している時にもう一方が同じように上昇するのかあるいは下落するのかの度合いを求めた上で、具体的にどの資産に何割入れるかという段階に入ります。
その時にはここまでお話してきた過去の推移などの数値上の定量的な判断だけではなく、現在の国内外の経済や政治の情勢を踏まえた上での定性的な判断を盛り込んでいくのが通常です。
ただここを詳しくお話すると定量的な部分については高等数学を使わざるを得ず、また定性的な部分については現状の世界経済や日本経済を政治的情勢を交えてお話しなければならないので、今回はこのあたりで止めさせていただきます。
ここではだいぶ突っ込んだところまでご説明しましたが、これはあくまでも一例として捉えていただきたい旨を再度申し上げておきます。
これを参考にしつつご自身やご家族のための老後資金の準備はいつまでにどのくらいの金額が必要なのかをしっかりと定めた上で、月々や年間の貯蓄額、また必要とする運用利回りとそのための運用方法の検討と実行をしていくことが大切です。
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