多くの方が60歳払いの貯蓄型終身保険に加入してしまう理由はどこにあるのでしょうか?
結論からお伝えすると、貯蓄型終身保険に加入する際に貯蓄だけでなく保障にも着目してしまったからです。
「保障にも着目してしまった」とはどういう意味なのかを具体的に解説していきましょう。
たとえば、30歳の男性が貯蓄型終身保険に60歳払い込みプランに加入したケースと15年払い込みプランに加入したケースの保障額の違いを見ていきましょう。
毎月の支払い保険料を双方のプランともに月々2万円に設定したとすると、60歳払いのプランの方が保障額は大きくなります。
生命保険は、保険料の総支払額で保障額が決まりますので、保険料を多く支払ってくれるお客様(契約者)の方が保障額も大きくなります。
上記の例だと60歳払いの方は、月々2万円を30歳から60歳まで30年間支払うわけですから、トータルで720万円(=2万円/月×12ヶ月×30年)の保険料を保険会社に支払うことになります。
一方、15年払いの方は、トータルで360万円(=2万円×12ヶ月×15年)の保険料を保険会社に支払うことになります。
保険料の総支払い額が720万円と360万円で大きく違うわけですから、720万円を支払う60歳払いのプランの方が保障額は大きくなります。
「生命保険なんだから万一の時の保障額が大きい方が良い」という観点に立てば、月々2万円を30年間支払う60歳払いのプランの方が良いといえるでしょう。
しかし、保障が大きいプランが良いのであれば、貯蓄型終身保険とは別口で保障に特化した保険に加入した方が圧倒的に良い場合が多いです。
貯蓄型終身保険で60歳前後の払い込みプランに加入しているほとんどの方が、保険会社の営業の方からこう言われたのではないでしょうか?
「一生涯の保障があって貯蓄もできる貯蓄型終身保険(60歳払い)がおすすめです!」と。
たしかに一理はありますが、実はこれではどっちつかずのプランになってしまう可能性が高いのです。
そもそも貯蓄の目的って、貯めたお金をいずれ使うためですよね?
使うということは、いつかは保険を解約してお金を取り出すわけです。
そして、当たり前ですが、お金を取り出すために保険を解約したら保障は無くなってしまいます。
ということは、保障を得たいなら保障に特化した保険に加入し、いずれ使うための貯蓄が目的なら貯蓄に特化した保険に加入することが重要なのです。
このように総合的に勘案すると「60歳払い」の貯蓄型終身保険を選択することは誤りである場合が多いといえます。
貯蓄型終身保険の、というよりは保険全般にいえることですが、保険を正しく選ぶには目的を明確にすることが何よりも大切です。
保障額が大きいプランが良いのであれば、先日特集した収入保障保険等の「掛け捨て型」で「有期型」の保険の方が保障は圧倒的に大きいです。
貯蓄型の保険で月々2万円の保険料なら、契約年齢にもよりますが20〜30年間支払っても保障額はせいぜい1000〜1500万円程度が通常です。
一方で、収入保障保険なら月々2万円も保険料を支払えば、1億円以上の保障額になりますし、年齢によっては月々5,000円前後の保険料で5000万〜7000万円程度の保障が得られます。
以上の状況から考えても、貯蓄目的であれば貯蓄型終身保険を10〜15年の短期払いにして、保障が必要なのであれば保障目的で収入保障保険に別口で加入する方が、貯めたお金をいつでも使える状況を早く作り出せる上に、保障額もしっかり確保できます。
貯蓄に特化させることなく、保障に特化させるでもないままに両方を得ようとすると、むしろ貯蓄でも使いづらく、保障額も十分な金額にならないという中途半端な保険になってしまう可能性が高いのです。
ここまででおわかりいただけたかと思いますが、貯蓄型の終身保険の正しい選び方は「貯蓄目的で貯蓄に特化すること」にあるといえます。
最後に「貯蓄目的で貯蓄に特化すること」を前提として10〜15年の短期払いの貯蓄型終身保険を選択した場合、さらにその中から特定の保険を選ぶ際のポイントをお伝えしましょう。
そもそもですが、10〜15年支払いができる終身保険は、60歳払いや55歳払い、65歳払いで加入することも基本的には可能です。
さらに、一般的に保険に詳しいとされる方もなかなか思い浮かばないことですが、同じ保険会社の同じ貯蓄型終身保険に、プランを分けて2本3本と加入することが可能なのです。
これはたとえば、「マイホーム(住宅)購入資金」と「子育て(教育)資金」のことを考え、一本は15年支払いにして、もう一本は60歳払いにすることが可能だということです。
正直にいうと、最初から10〜15年の短期払いの貯蓄型終身保険に加入すれば、払い込みを終えた後に「いつでも使える状態」にしておきながら、解約さえしなければ「長期運用のメリットを享受した状態」で老後の生活資金に充てることができます。
ですから、10〜15年の短期払いの貯蓄型終身保険に一本だけ加入すれば良いのですが、月々支払える保険料に限界がある中で貯蓄効率も保障も確保したいというのが現実ともいえるでしょう。
これは、長期的に時間を活用した賢い貯金をしていきたいけれど、お子さんがまだ小さいといったケースなどが該当します。
仮に、月々の保険料2万円が限界であれば、貯蓄型終身保険を2本に分けて契約し、月々1万円を「マイホーム(住宅)購入資金」や「子育て(教育)資金」に充当できるように10〜15年の短期払いにして、もう1万円分を「老後の生活資金」を念頭に置きながら、ある程度保障が大きくなる60歳払いのプランにするといったような、みなさん一人ひとりの状況や家族構成に応じたオーダーメイドのプラン設計が必要な場合もあります。
短期払いの貯蓄型終身保険への加入を検討する際、もしくは見直しを検討する際には、同じ保険会社の同じ終身保険に2本3本と支払い込み期限を変えて複数本加入することができるということはぜひとも覚えておいてください。