資産運用を検討する方なら、一度は仕組債という商品を聞いたことがあるでしょう。
利回りが高い商品も多く、魅力もある商品ではありますが、中身が複雑でリスクも高い商品です。
ということで今回は、その仕組債のカラクリとリスクについて解説します。
当記事を読むことで資産運用における選択肢や注意点が広がるかと思いますので、最後までお付き合いください。
仕組債とは?
仕組債とは、一般的な債券の特徴に加えてスワップやオプションなどのデリバティブ機能を活用することにより、発行者や投資家のニーズにあわせて年限等を、設定できる債券です。
債券とデリバティブを組み合わせることにより、一般的な債券よりも高い利回りを出すことができますが、その分普通の債券よりもリスクは高まります。
仕組債は主に海外で発行されており、アレンジャーと呼ばれる日本の証券会社が投資家のニーズを把握してアレンジ(調整)して販売会社を通じて販売しています。
仕組債の手数料は?
仕組債には表面上、目に見える形での手数料はかかりません。しかし、実は証券会社には莫大な手数料が入るカラクリになっています。
多くの仕組債はデリバティブの機能により、株式などの指数に連動するように設計されており、証券会社がその際の仕切り価格を決めて運用を行います。そのため、連動する指数が上がっても下がっても利益を抜けるように仕切り価格を決定しているのです。
また、この利益も証券会社が決めることができ、利回りが確保できて販売できる自信があれば、利益を大きくして証券会社の儲けを増やすことも可能です。
仕組債には表面上、手数料が無いように見えますが、証券会社が非常に儲けやすい商品と言われています。そのため、証券会社等の金融機関では仕組債を積極的に販売する戦略がとられているのです。
仕組債は何種類ある?
仕組債と一口に言ってもその種類は様々です。どのような種類の仕組債があるか確認して見ましょう。
①為替系
為替系仕組債は、外国通貨の為替と連動する債券です。
代表的なものは「デュアルカレンシー債」と呼ばれるもので、償還時に大幅な円高になっていなければ損失は発生せず、クーポンを得ることができる債券です。
ただしデュアルカレンシー債は、償還時に基準を超える円高になった場合には参照通貨で償還されるため、為替による損失を被ることになります。
②株式系
株式系は株式指数を参照価格として変動する仕組債です。
代表的なものは「日経リンク債」と呼ばれるもので、日経平均がノックイン価格と呼ばれる水準まで下がらなければ高いリターンを得ることができます。
③金利系
金利の変動と連動して価格や利回りが変動する金利系と呼ばれる仕組債もあります。
特に「リバースフローター債」が金利系の代表的な仕組債です。リバースフローター債は固定金利(LIBOR)で短期金利が下落すると利回りは上昇し、逆に短期金利が上昇すると利回りが低下します。
なぜ利率が高いのか?カラクリとリスクを知ろう
仕組債はなぜ利回りが高いのかカラクリを知っておきましょう。
まず仕組債は債券+デリバティブで構成されています。債券の利回りは発行体の信用度によって異なります。
そしてデリバティブは様々な為替や株式、金利等に連動して様々な値動きをするように設計された商品です。そのリスクを取る代わりに高いリターンを得る仕組みとなっているのです。
つまり、仕組債は債券とデリバティブ両方のリスクを取る商品となっているのです。
また、デリバティブのリスクは多種多様なリスクをとっています。
一見安全そうに見えても、非常に高いリスクを抱えている商品もありますので、注意が必要な投資対象ですね。
仕組債の「ノックイン」とは
仕組債を理解する上で欠かすことのできない、「ノックイン」についてご説明します。
「ノックイン」とは、株式や為替などのあらかじめ定められた価格を下回ることを言います。そのため、「ノックイン」してしまった場合は基本的に預け入れた元本より、目減りしてしまうと考えておくと良いでしょう。
つまり、ノックイン価格を確認する際はその価格まで下落することが無いか?を判断する価格となります。
仕組債の「ノックアウト」とは
「ノックアウト」は、ノックインとあわせて知っておきたい仕組債における重要な用語です。
「ノックアウト」は株式や為替などの価格が、あらかじめ定められた金額を上回ると早期償還する金額です。参考とする株式や為替の価格が上昇し過ぎると、早期償還することが仕組債の一つの特徴でもあります。
「ノックアウト」する場合は、ノックインのように元本が毀損するわけではありませんが、早期償還により高いリターンを得続けることができなくなってしまいます。
仕組債はトラブル・訴訟になりかねない
仕組債は、非常に複雑な商品設計がされている金融商品です。また、仕切り価格を金融機関が自由に設定できるため、金融機関は損をせずに手数料を取れる仕組みになっています。
さらに、仕組債は為替や株が一定価格を下回らない限り元本を毀損せずに高い利回りを得ることができるため、安全性が高い金融商品だと思われている方も多くいます。
しかし、債券とデリバティブの性質をあわせ持つ仕組債は、決して安全性が高い商品ではありません。
また、リスクが高く複雑な仕組みの商品であるにもかかわらず、そのことをしっかり説明しない金融機関の営業員がいることも事実で、トラブルになることも多い商品です。
『こんなはずではなかった』とトラブルにならないためには、しっかりとした知識を身につけるしかありません。
仕組債の商品の説明を受けたらその場で契約することはせず、一度持ち帰ってその商品の特徴や想定されるリスクをしっかりと検討した方が良いでしょう。
金融商品のプロでも仕組債のような複雑な商品を、一回の説明で完全に理解することは容易ではありません。
一度の説明では理解できないのが普通だと考え、わからない箇所は何度も質問すると良いでしょう。
仕組債の税金について
仕組債の税金はどのようなものになっているのでしょうか。
株式や為替が一定額以下に下がらない限り、仕組債は元本と利子を受け取ることができます。その利子は一般の債券と同じく利子所得となりますので20.315%の源泉徴収となります。
ただし当該税金について詳細は、税理士等に確認するようにしましょう。
まとめ
今回は仕組債の特徴やカラクリについてご説明しました。仕組債は金融機関がルールを決め販売する商品です。そのため金融機関は儲けることができますが、投資家にとっては必ずしも安全な商品ではありません。
さらに、仕組債はその複雑な商品性から理解をすることが非常に難しい商品です。普通の債券とは一線を画すものであることは、しっかりと理解して投資をした方が良いでしょう。
一方、リスクが高いものであることは間違いありませんが、全ての仕組債が悪い商品というわけではありません。
うまく運用をすれば相応のリスクで、高金利を得られる商品でもありますので、商品性をよく理解して購入を決めるようにしましょう。