物価、需要と供給、インフレとデフレ。これらはよく耳にすることの多い用語かと思います。
ではそれぞれどういう意味で使われているか聞かれたら皆さんは正しく答えることができるでしょうか?案外インフレとは?デフレとは?といきなり聞かれても戸惑ってしまう方が少なくないかもしれません。
そこで今回はこれらの用語を事例を交えながら簡単にわかりやすく解説していきます。
参考記事:インフレとデフレとは?~どちらが良いか含めわかりやすく解説~
物価の意味、需要と供給とは?
物価とはその国で1年間生活するために必要な商品、サービス等の価格を合計したものという意味になります。
上記が少しわかりづらいなと感じたら、もっと簡潔にモノやサービスの価格と言い換えてしまっても良いでしょう。
ただしここで気をつけていただきたいのは上記で説明した物価は正確には一般物価と呼ばれるものであって、これとは別に個別のモノやサービスの価格のことを相対価格と呼びます。
最近はアベノミクスが取りざたされることが多いですから、「デフレ脱却」とか「インフレターゲット」とか物価に関する話題が新聞やニュース等で目にする機会が増えたかと思いますが、ここでいう物価とはすべて一般物価のことを指します。
相対価格はあくまでも個別の価格ですから、たとえば家電が値下がりし続けているから物価が下がっているとか、ガソリン価格が上がっているから物価が上がっているというのは根本的には誤りですので気をつけましょう。
それではこの物価の上昇と下落はどうやって決まるのでしょうか?
これは端的にいえば需給、つまり需要と供給によって決まります。
それではこの需要と供給とは何でしょうか?
需要とはモノやサービスに対する購買力の裏付けのある欲望のことです。
供給とはモノやサービスを提供しようとする経済活動のことになります。
需要については購買力の裏付けのあるという箇所がポイントですね。
いくらこれを買いたい、あれを買いたいと思っても、実際に購入できるモノやサービスでなければ需要には含まれませんので。
一方で、供給はその購入できるモノやサービスをどのくらい提供できるかということですね。
ここからわかることは需要と供給の相対的なバランスによって物価が上下するということです。
具体的には需要が増えてモノやサービスを欲しいという欲望が高まっているのに対して供給がそれに追いつかず提供するモノやサービスが足らない場合は物価は上昇、その一方で供給が十分で提供するモノやサービスが有り余っているのに需要が減ってそのモノやサービスをほしいという欲望が低下している場合は物価は下降します。
これをまとめると以下のようになります。
物価上昇 需要>供給
物価下降 需要<供給
ここまでが物価の基本的な考え方です。
よく聞くインフレとデフレの意味とは?
インフレとデフレ、正式にはそれぞれインフレーション、デフレーションといいます。
それではそれぞれどのような意味なのでしょうか?
インフレとは(一般)物価が継続的に上がり、貨幣価値が下がっていく状態のことです。
一方、デフレとは(一般)物価が継続的に下がり、貨幣価値が上がっていく状態のことになります。
ここでいう物価は個別のモノやサービスである相対価格のことではありません。
あくまでもモノやサービスの価格を合計したものである一般物価を指しています。
そして需給でこの関係性を示せば以下のようになります。
需要>供給 → インフレ
需要<供給 → デフレ
ここまでは比較的わかりやすいかと思います。
それでは貨幣価値が上がっていく状態、下がっていく状態とはどういう意味でしょうか?
貨幣価値というとわかりづらいかもしれません。これを現金価値と少し言葉を変えてみましょう。
実は物価(モノやサービスの価値合計)と貨幣価値(現金の価値)とは相対関係にあるのです。
ここは大事なポイントです。この関係を表すと以下になります。
インフレ = 物価↑ = 現金価値↓
デフレ = 物価↓ = 現金価値↑
ちょっと抽象的な表現になってしまいましたので、相対価格と誤解しないように前置きした上で以下の図をご覧いただければと思います。
上記のように現在1000万円の現金を保有していて、イラストでは自動車を用いていますが、モノやサービスの価値合計が現在1000万円だったとします。
これが左側では年率2%ずつ物価上昇(インフレ)したすると10年後にはモノやサービスの価値合計は1219万円になり、一方で右側では年率2%ずつ物価下降(デフレ)したとすると10年後にはモノやサービスの価値合計は817万円になります。
現金は現在も10年後も1000万円は1000万円のままです。
すると左側のインフレになった10年後ではモノやサービスの価値合計が上がったために保有している現金では購入することができなくなり、その一方で右側のデフレになった10年後ではモノやサービスの価値合計が下がったために保有している現金で購入しても余りが出ることになります。
これがインフレ、デフレによる物価と現金価値の変化を表しています。
このようにしてインフレ、デフレはモノやサービスの価値合計と現金価値の相対関係による上下によってもたらされるものです。
そしてもう少し踏み込むと経済学的に多少議論があるところではありますが、モノやサービスの量はすぐに大きく増減するものではない前提でお話しすれば、現金の量によってインフレ、デフレが決定されるということできます。
これを経済学では少し難しい言い回しになりますが、貨幣数量説といいます。
モノやサービスの量 一定 現金の量↑ → インフレ
モノやサービスの量 一定 現金の量↓ → デフレ
ここまでがインフレ、デフレについての基礎になります。
物価指数の代表格、消費者物価指数とは?
物価を測る指標のことを物価指数といいます。
卸売物価指数、小売物価指数、輸出入物価指数、etc.と様々ありますが、もっともよく使われる物価指数は消費者物価指数です。
ちなみに名目GDPから実質GDPを算出する時にはGDPデフレーターという物価指数を用います。
消費者物価指数とは全国の世帯が購入するモノやサービスの価格の平均的な変動を測定したものです。
わが国では総務省が毎月発表しています。
みなさんが家計において購入するモノやサービスの直接的な価格変動を表していますので、消費者物価指数は経済の体温計といわれることもあります。
ちなみにこの消費者物価指数を英語で表すと”Consumer Price Index”というのですが、わが国でもアルファベットの頭文字をとって略称としてCPIという言葉が専門家の間ではよく使われます。
どのように作成しているかについてはかなり込み入った話になるのでざっくりとだけいいますが、総務省が調査している小売物価統計調査の小売価格の平均から個別の指数を作成し、これも総務省が調査している家計調査からウェイトを作成、統合して全体の指数を作成しています。
それでここからが少々ややこしくなるのですが、わが国ではこの消費者物価指数をさらに3つに分けてその時々で使い分けしています。
その3つとは総合指数(CPI)、コアCPI、コアコアCPIと呼ばれるものです。
先ほどお話した消費者物価指数は総合指数(CPI)のことを指しています。
これを基準として生鮮食品を除いた指数をコアCPI、食料(酒類を除く)及びエネルギーを除いた指数をコアコアCPIとしています。
これをどのように使い分けているかといいますと、よく新聞やニュース等で「物価が◯%上がった」というようにいわれる時は総合指数、最近アベノミクスへの期待等で経済政策に注目されることが多くなりましたが、この経済政策上では天候等の条件によって価格変動が激しい生鮮食品を除いたコアCPIが使われます。
また2014年後半から原油が大幅に下がっていますが、原油価格を含めたエネルギー価格と食料(酒類を除く)を除いたコアコアCPIはたとえばG20財務大臣・中央銀行総裁会議のような国際会議の場で議論される際によく使われています。
ここで注意しなければならないのは、日本でいうところのコアコアCPIが世界的にはコアCPIと呼ばれているということです。
こんなところにも良くも悪くも日本の常識は世界の非常識がありましたね。
もちろんこの常識はあくまでも専門家の間での話ではありますが・・・
ここまで物価、需要と供給、インフレとデフレについてお話してきましたが、皆さんが資産形成や資産運用をする上で、今後インフレに転換するのか、あるいはデフレが継続するのかというのは深い関わりを持っています。
何度も読み返してぜひ理解を深めてください。