「銀行」という言葉を聞くとどのようなことを思い浮かべますか?
低金利の預金や住宅ローン等の融資、また最近では投資信託をはじめとした運用商品を挙げる方が多いかもしれません。ただ、銀行の本来の役割はその国の経済全体に影響を与えるような大きなものです。
そこで、今回は銀行の本来の役割と存在意義について改めて考えていきましょう。
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血液を送り出す心臓!?銀行本来の役割とは
現在の銀行には様々な役割がありますが、銀行本来の役割といえば、
『「人」・「企業」・「国・自治体」などにお金という血液を送り込む心臓のような存在として、世の円滑な経済活動を支えること。』となります。
銀行はお金という血液を送り込む心臓のような役割を担っている
「人」・「企業」・「国・自治体」はお金の流れが止まれば活動がストップしてしまいます。そんな重要な役割を果たす銀行も仕組みは一つの会社と同じです。
会社には自己資本(自分のお金)と負債(借金)があります。この借金の返済がどうしようもなくなった場合会社は倒産してしまいます。
特に銀行は借金をするだけでなくそのお金を貸し出しにも回すので貸したお金が返ってこないというリスクも多々あります。
借金は何も日々の経営がうまくいかず赤字だからするとは限りません。黒字でも事業の拡大をしようとする時にはするものです。
銀行が倒産してしまえば人間でいえば心臓が停止してしまうのと同じことですから、経済にとっては大打撃です。ですから、世界では銀行が倒産して経済に大打撃を与えないように自己資本規制というルールを作っています。
自己資本規制とは、貸出金や、持っているリスクのある資産(株・債券などの値動きする資産)に対して自己資本を一定以上確保しておかなければならないというルールです。特に倒産した場合にインパクトの大きい巨大銀行に対して適用されます。
元々は、1988年に作られたルールですが、そのあとの幾度の経済危機のたびに、規制が強化されていきました。銀行でしばしば問題になる、不良債権(貸したお金が返ってこないこと)の処理を行う際には自己資本が用いられます。
自己資本を多く保持しているということはそれだけ不良債権処理力が高く、安全性が高い銀行だと判断することができます。
2008年のリーマンショックを境に世界的に自己資本規制は強化されました。リスクのある投資をやればその分自己資本を積み増さなければならないのが世界の巨大銀行なのです。
巨大銀行が倒産しないようになれば安泰か?銀行の存在意義とは
確かに、巨大銀行が倒産しないようになれば人々の預金は守られ最悪の事態は防げると思われます。
ですが、冒頭にも述べた通り銀行は心臓の役割を果たしています。人体であれば心臓が停止したら血液が流れなくなり死に至りますし、心臓が止まらなくても悪影響は出ます。
血流は弱くなったら栄養分の伝達も低下して体調不良になったりもします。全体的に血流あっても、行き渡らないところが発生すればその部分は壊死してしまいます。
それは経済も同じことなのです。
景気が良いうちは自己資本を積み増してもリスク資産が値上がりしますから、銀行は健全度を保ちながら成長することができます。
ですが、不景気になったらどうでしょうか?銀行の財務は健全ですが、保有しているリスク資産は値下がりしてきます。
値下がりすればその損失を自己資本で埋めなければなりません。自己資本を使ってしまえば結局規制の対象になってしまします。
そうなれば貸し出しを減らさなければなりません。貸し出しを減らす、すなわち血流を弱くしたり血を一部せき止めることに他になりません。
では不景気には規制を緩くすればどうでしょうか?
確かに規制が緩くなれば無理に貸し出しを減らさなくても大丈夫なような気もします。しかし、そもそも規制を緩くするための景気の判断はどうするのでしょうか?
また、銀行によって経営状況も違います。不景気の煽りを受けやすいところとそうでないところ様々です。
現実問題として規制を緩くしていくことは事後対応しかできないといえます。つまり事が大きくなってからしか動けないということです。
更に規制がなかったとしても、当然銀行という会社を経営する立場からすれば世の中の景気が悪い状況で無理に帰ってくるかわからないお金を貸し出したくはありません。
自己資本を減らしたくないのが銀行の本音だからです。以上のことから銀行が健全であればあるほど経済は安泰とは限らないのです。
あくまでも最悪の事態は防げるというレベルでしかないということなのです。つまり、銀行の存在意義について、過小評価してはいけないのは言うまでもなく、過大評価してもいけないということです。
資産形成や資産運用する立場からは、銀行がどういう行動をとっていくのかをよく観察し、世のお金の流れを注視しておくことが肝要です。