好景気や不景気とはよく聞く言葉だと思いますが、一体景気とはどういう意味を持つものなのでしょうか?
また、景気はよく波があると言われます。これを景気循環と呼びますが、なぜ起こるのでしょうか?さらには、こういった景気の動向はどのように測られているのでしょうか?
そこで今回は景気をテーマに話を進めていきます。
参考記事:今さら聞けない物価、需要と供給、インフレとデフレの意味
好景気や不景気ってよく聞くけど、景気の意味とは?
景気とは経済活動全般の動向のことを意味しています。
これだと少々わかりづらいかもしれませんが、簡単にいってしまうと経済活動の勢いということになります。
この勢いが活発な状態を「景気が良い」= 好景気(好況)、勢いが沈静している状態を「景気が悪い」= 不景気(不況)と考えると理解しやすいでしょう。
日本では1990年代初頭までのいわゆるバブル景気とよばれる好景気以後、長らく失われた20年などと表現されるとおり不景気が継続しているものと捉えられる向きがありました。
ただしこの失われた20年については、いつ誰が名付けたのかすら分かっていないのが正直なところで、しかも2000年代初頭には長期的な好景気が存在することから、眉唾なところもあることは付言しておきます。
ここで言いたいのは日本で起こった過去の好景気、不景気についてではなく、景気とは期間に長短はありますが、常に上昇と下降を繰り返しているということです。
これを景気循環と呼びます。
それではもう少し具体的に、この好景気(好況)と不景気(不況)ではどのような経済状態になるのでしょうか?
簡単にですが流れを示すと以下のとおりになります。
好景気(好況)
①需要増→②モノやサービスが売れる→③企業の利益増→④企業の生産増→⑤雇用増→⑥家計の所得増→①に戻る
不景気(不況)
①需要減→②モノやサービスが売れない→③企業の利益減→④企業の生産減→⑤雇用減→⑥家計の所得減→①に戻る
このように好景気、不景気どちらも循環していますので、好景気はより好景気に、不景気はより不景気になっていくのが通常です。
ここで「ちょっと待てよ・・・この流れのとおりだといつまで経っても好景気は好景気だし、不景気は不景気じゃない。景気循環なんて起こらないんじゃないの?」と思いませんでしたか?
そう、この流れが継続したら景気循環は生まれません。
では景気循環が生まれる、つまり好景気が不景気に、不景気が好景気に転換するのはなぜでしょう?
なぜ景気は循環するのか?景気循環の種類
なぜ景気循環は起こるのでしょうか?
そのメカニズムをお話していきます。
好景気のサイクルが繰り返されていく中でモノやサービスが売れすぎる状態になると、モノやサービス全体の価格が上昇していきます。
これは需要>供給によるインフレ(物価上昇)になるということです。
するとやがてインフレが行きすぎた状態となり、モノやサービスが徐々に売れなくなっていって、それが企業の利益減、企業の生産減、家計の所得減、雇用減、そして需要減へと繋がっていくのです。
もうおわかりかと思いますが、これが好景気から不景気への転換がなされる過程になります。
逆に不景気のサイクルが繰り返されていく中で、モノやサービスが売れなくなっている状態にあるとモノやサービス全体の価格は下降していきます。
これは需要<供給によるデフレ(物価下降)になるということですね。
するとやがてデフレが行きすぎた状態となると、十分な安価でモノやサービスが購入できるようになるので、モノやサービスが売れるようになって、それが企業の利益増、企業の生産増、家計の所得増、雇用増、そして需要増へと繋がっていきます。
これが不景気から好景気への転換がなされる過程になります。
ただこれは理論上の話であって、現実の経済ではここまで理路整然とした経路で、景気循環がなされるわけではないということは注意が必要です。
とはいえ、景気循環にはいくつかの特徴的なパターンがあり、以下のようになります。
1. キチンの波(キチン循環)
約40カ月の周期を持つ景気循環。企業の在庫投資が起因すると考えられている。
米国の経済学者キチンによって明らかにされた。
2. ジュグラーの波(ジュグラー循環)
約10年の周期を持つ景気循環。企業の設備投資が起因すると考えられている。
仏国の経済学者ジュグラーによって明らかにされた。
3. クズネッツの波(クズネッツ循環)
約20年の周期を持つ景気循環。
建築物の需要が起因すると考えられている。
米国の経済学者(ノーベル経済学賞受賞者)クズネッツによって明らかにされた。
4. コンドラチェフの波(コンドラチェフ循環)
約50年の周期を持つ景気循環。技術革新が起因すると考えられている。
ソ連の経済学者コンドラチェフによって明らかにされた。
上から順に景気循環の周期が短期から長期に流れている形式になります。
それぞれ起因しているものを細かく見ていくのは別の機会に譲りますので、ここでは長短あれども景気循環は実際に起こり続けているということだけ、覚えていただければ結構です。
現実の経済、景気というものも諸行無常(あらゆるものは生じ、そして滅するという理(ことわり))ということなのでしょう。
景気の動向をみるための統計「景気動向指数」とは?
景気を測る指標を景気統計と総称します。
日本の景気統計には、景気動向指数、景気ウォッチャー調査、消費者態度指数、消費者物価指数、etc.が用いられています。
この景気統計の中でも代表的なものが景気動向指数です。
景気動向指数とは、景気の動きを見るためにいくつかの指標を組み合わせたもので毎月、内閣府より発表されています。
この指数は景気上昇の上限点である「景気の山」と、景気の下降の下限点である「景気の谷」を判定するのに用いられています。
景気動向指数にはコンポジット・インデックス(CI)とディフュージョン・インデックス(DI)があるのですが、これらはその測定する目的に違いがあります。
コンポジット・インデックス(CI)・・・構成する指標の動きを合成することで、景気変動の大きさやテンポ(量感)を測定することを目的とする。
ディフュージョン・インデックス(DI)・・・改善している指標の割合を算出することで景気の各経済部門への波及の度合い(波及度)を測定することを目的とする。
それぞれの測定方法や測定結果の見方については、少々複雑なものになりますのでここでは省略します。
そして、CIとDIは以下の通り3つに分類することができます。
・景気に対して先行して動く先行指数
・ほぼ一致して動く一致指数
・遅れて動く遅行指数
さいごに
景気にしろ、物価にしろ、目に見えない捉えがたいものになりますので、みなさんの中には説明をお読みいただいてもなかなか「わかりづらい」「難しい」「実感がわかない」という感想を持つ方も多いことでしょう。
ただここまでで、あえてこうした現実には捉えがたい経済、とくに経済学的にはマクロ経済といわれるところに踏み込んで説明してきたかというと、あなたに「鳥の目」を持っていただきたいからです。
物事を捉えるときに「鳥の目」「虫の目」と言ったりしますが、これは「鳥の目」が全体像の把握、「虫の目」が細かい部分の把握という意味です。
とかく資産形成や資産運用のお話になると、どうしてもみなさん自身やご家族といった家計から出発してその範囲内でのみ判断してしまいがちです。
とはいえ、私たちは自宅から一歩出れば地域社会や所属する会社や学校等のコミュニティの一員ですし、日本という国の一員ですし、もっといえば世界の一員でもあります。これが動かしがたい事実なわけです。
ですから、日本経済や世界経済における環境変化の中で、自身やご家族の資産形成や資産運用を行っているのだという視点を、常にお持ちいただければと思います。