昨今、資産形成の一環としてワンルームマンション投資をされている、あるいは考えている方も増えています。
また、ワンルームマンション投資を「生命保険の代わりに・・・」といったような、首をかしげる勧誘を受けている人がいるのも耳にするケースが。
本当にそうなの?
ということで今回は、ワンルームマンション投資が生命保険の代わりになるか検証していきます。
ワンルームマンション投資のどの部分が生命保険の代わりとなるのか?
結論から申し上げますと、ワンルームマンション投資が生命保険の代わりになるのは、一理あると言えます。
では順を追って説明しますが、ワンルームマンション投資をする場合、全額を現金一括で購入できる人はほとんどいません。
ワンルームと言っても新築の場合は価格帯が数千万円程度するからです。
そしてほとんどの方は銀行のローンを活用して投資するはずです。
不動産購入のために銀行のローンを組む際には、ローン金額に応じた担保を差し出すか、あるいは団体信用生命保険に加入することになります。
この団体信用生命保険とは、ローンでお金を借りた人が途中で亡くなってしまった場合、保険会社が銀行に対して残りのローン相当額(残債務)を支払うという形態の生命保険のことです。
ですから、ワンルームマンション投資をしてローン返済中に万が一のことが起こってしまっても、保険会社が残債務を負担してくれるので、残されたご家族はローンを支払う必要がありません。
そうなると、毎月入ってくるワンルームの賃貸料はローン返済に充当する必要性がありませんので、残された家族が賃料を毎月生活費として受け取ることができます。
そういった意味では、生命保険の分野に当てはめれば収入保障保険と似た性質がある保障ということができます。
続いて、ローン返済中に万が一が起きず、20〜35年程度のローン返済期間を全うし、ローンを全額返済し、当該ワンルームが自分の物になった時のことを考えてみましょう。
20〜25年後の不動産価格を予想することはとてつもなく難しいですが、仮に築30年程度経っていても、しっかりとした良質のマンションであれば、ある程度の資産価値になります。
売却した場合、500万円や1000万円、1500万円といった価値のある資産となり得ますし、売却せずに貸し出し続ければ、毎月の賃料を老後の生活資金の足しにすることができるはずです。
そういった意味では、資産性もあり保障もある貯蓄型の終身保険と似た性質があると言えなくはありません。
まとめると、ワンルームマンション投資の営業パーソンがよく、「生命保険の代わりになりますよ」と言っていることに関しては一理あると言うことができます。
ただ、ここからが大事なところなので、ここまでで読むのを止めてしまわないでくださいね。
ぜひこの先をお読みください。
団体信用生命保険があるから生命保険の代わりになる・・・とは限らない
そもそも、ワンルームマンション投資が生命保険の代わりになると言われるのは、団体信用生命保険に加入するからです。
とすると、結局のところ生命保険を活用するから保障が得られることに違いはありません。
代わりになるどころか、結局は生命保険なのです。
もっと言ってしまえば、生命保険における保険金の行き先が変わるだけです。
万が一があった際に生命保険金が遺されたご家族に直接届くのか、残債務の返済のために銀行に届くのか、の違いしかありません。
ここでよく考えてみてください。
残債務返済のため生命保険金が銀行に届いた後に、ご家族にはワンルームマンションが残ることは良いことかもしれませんが、家族は手元に残ったワンルームマンションを活用して生活していかなければなりません。
活用の方法としては、物件自体を売却するか、継続して賃貸業をしていくという選択肢となります。
遺族が売却する場合
売却して現金化するならば、その時の時価での売却になることでしょう。
好不況の波に激しく左右される不動産市況に、売却価格は影響を受ける可能性が極めて高いです。
さらに、不動産はインフレに強い実物資産であるがゆえに劣化もします。
築5年、築10年というように、物件自体が古くなればなるほど、その資産価値は下がっていく可能性が高いでしょう。
もちろん、当該マンションの周りが再開発されて資産価値が購入価格を上回ったという場合も稀にはありますが・・・。
どの道まとまったお金が必要なタイミングで、残されたご家族が売却して現金化するならば、相対取引である不動産売買では買い手がつくかわからないリスクが発生します。
一言で言えば、買い手がつかないなら売却できない、ということです。
そういった意味では、安定していつでも契約時点で決めた保険金額が受け取れる終身保険の代わりになるというセールストークは、言い過ぎであると私には感じられるのですが、皆さんはどう思いますか?
残されたご家族が賃貸業を継続するケース
続いて、残されたご家族が賃貸業を継続する場合です。
遺されたご家族が賃貸を継続してどなたかにワンルームマンションを貸し続けたとすると、借主を見つけてくるのでしょうか。
違いますよね。
おそらく近くの不動産会社や管理会社等にお願いするはずです。
となると、手数料や管理料といった諸費用が発生することもあり、当初の想定よりも収入が減るかもしれません。
さらに今まで住んでいた人が転勤で引っ越すことになり、次の入居者が現れるまでの2〜3ヶ月間の賃料が入ってこないケースも想定されます。
また物件が古くなってしまい、長期的に借主が見つからない場合は、当然ですが賃料を取れませんので、賃料を生活費の足しにすることはできないことも想定されます。
とはいえ最近では賃料保証というサービスもありますが、2年ごとに保証する賃貸料の見直しが実施されるタイプが多いです。
そういった意味でワンルームマンション投資は保険会社が倒産しない限り、契約時点で決めた保障期間中、ずっと安定して毎月保険金を受け取れる収入保障保険の代わりというセールストークも、言い過ぎな気がしてなりません。
ワンルームマンション投資は資産形成として有効か?
不動産は実物資産ですのでインフレ対応ができる資産です。
インフレリスクの軽減のための資産形成における投資として、ワンルームマンション投資を検証してみましょう。
確かに資産家や富裕層の方がポートフォリオの一環で不動産を取り入れるなら話は別ですが、まだ20〜40代の資産形成段階の方が借金をして、ワンルーム投資をするというのはいかがなものかと思います。
「銀行のローンを利用してレバレッジを効かせて資産形成ができる」と言えば聞こえは良いですが、借金は借金です。
そしてご自身の現在の収入の中から毎月数千〜数万円を拠出することができれば、株式や投資信託を毎月少しずつ購入していき、インフレに負けない資産形成や資産運用をすることは十分に可能です。
また、インフレ対策として見られる貴金属や宝石類も、夏か冬のボーナスで購入することもできます。
支払ったお金以上に損する?しない?貯蓄型の終身保険とワンルームマンション投資を比較
最後に損益の観点で、貯蓄型の終身保険とワンルームマンション投資を比較してみましょう。
まずはじめに貯蓄型の終身保険は、契約から支払期限の満了を迎えるまでの間に解約をした場合、支払った保険料よりも戻ってくる解約返戻金が大幅に少ない場合があります。
つまり、損をしてしまう可能性があるということです。
しかし、ポイントは支払ったお金以上に損をすることはないということです。
それに対して、ワンルーム投資でローンを活用した場合で途中売却を考えるケースには、残債務額よりも高い値段で売却できることもあります。
そうなれば銀行に残りのローンを返済した後に、手元にお金が残ることがあります。
しかし残債務額よりも低い値段で売却した場合には、銀行へ残りのローンを返済しようと思ってもお金が足りずに、数百万円~数千万円分のローンが残る結果に。
そういった意味では、支払ったお金以上に損をしてしまう恐れがあるということです。
ただしここで勘違いしないでいただきたいのは、不動産投資よりも積立投資によって株や投信を購入するほうが良いと言っているわけでも、貯蓄型の生命保険のほうが良いと言っているのでもありません。
投資対象によって一長一短はあると言っているのです。
資産形成は、しっかりとご自身に合った手法で行うことが一番望ましいのです。
さいごに
私たちは様々な場所で何度も申し上げていますが、正確かつ出来るだけ多くの選択肢をお客様へ提供することが使命だと思っています。
そこで当記事を読まれたあなたには、
「ワンルーム投資は生命保険の代わりになるので、生命保険を解約して不動産オーナーになりませんか」
「毎月3万円も保険料を払うよりも、賃貸収入を得ながら資産形成ができる方が良いのではないでしょうか。」
といった表面的なトークに惑わされることなく、ご自身のライフステージに合わせた方法で、大きな資産を形成されることを願っております。