60代以降の老後世代は、20〜50代に貯蓄や投資によって築き上げた老後資金を、どのように資産運用すれば良いのでしょうか?
方法論としては資産ポートフォリオの見直しということになりますが、そこでできる限り失敗を避けるために念頭に置きたい点が2つあります。
それでは詳しく見ていきましょう。
参考記事:【準備が大事】老後破産を起さないために~原因を知り対策をしよう~
60歳を過ぎたら考えるべきは老後資金を「いかに使うか、いかに残すか」の2つ!
まずは60代以降の老後世代における、資産残高の推移のイメージをご覧いただきましょう。
生涯を通じた資産残高の推移
上図はあくまでも目安ではありますが20〜50代の現役世代での資産形成と、資産運用の実践によって現役世代の最後にあたるリタイア時点で、資産残高をピークに持っていったとしましょう。
60代以降の老後世代では老後資金の取り崩しにより資産残高が減少していき、その後人生を終える時点での資産残高がご家族等に受け継ぐ相続財産となります。
ここで重要になるのが人生を終える時点までに、資産残高が0となり不足が生じるという事態は避けなければなりません。
そのためにリタイア時までに、地道にコツコツと老後資金の準備をすることが必要不可欠といえるわけですが、人生90年時代と言われる現代において、それだけでは心細いでしょう。
そこで実践の必要性が出てくるのが60代以降、つまりは老後世代での資産運用です。
60代以降における資産運用は資産を増加させることが目的ではなく、これまでに築き上げた資産を極力減らさないようにすることが目的となります。
ですから20~50代、言い換えると現役世代においてリスクを取りながらも積極運用していたポートフォリオを調整し、徐々に元本確保を目指し安定運用していくのが主たる作業といえます。
つまりは元本変動リスクを取りつつ、増やすことを目指して積極運用する部分(リスク資産※1)から、元本確保を目指して安定運用する部分(無リスク資産※2)へ移行が必要と考えますが、目安として具体的なリスク資産と無リスク資産の年代別推移は以下の通りです。
※1 リスク資産は株式、社債、REITなどを指す
※2 無リスク資産は預貯金、国債などを指す
リスク資産と無リスク資産の割合の年代別推移
上図にあるように現役世代の終盤に当たる40〜50代、とくに最終盤の50代にそれまでリスク資産100%であった積極運用のポートフォリオから、リタイア時点でリスク資産と無リスク資産が半々の中立的なポートフォリオとなるように移行作業を実践しておきます。
60代以降の老後世代はその延長線上としてさらにリスク資産の比率を下げる一方で、無リスク資産の比率を上げ最終的にはリスク資産10%:無リスク資産90%という安定運用のポートフォリオを構築します。
いかに使うか、いかに残すか
しかしポートフォリオの調整前に、常に念頭に置いて考えていただきたいことがあります。
それは「いかに使うか、いかに残すか」という2つのことです。
人生を終える時点というのは、誰にもその時が訪れるまでいつになるかはっきりとは分かりません。
その前提で、どの程度の生活水準で暮らしていくか等の資産を使う部分と、ご自身が亡くなった際に遺されたご家族等に資産を残す部分とを、老後世代に入ってできるだけ早期のうちから考えておきましょう。
その結果、老後生活の途中で資産残高が0となり、不足が生じてしまうような最悪の事態を避ける予防策が取れるはずです。
いかに残すか=相続対策
このうち後者の”いかに残すか”の考えに基づいて実践するのが相続対策です。
これらの考えがしっかりと固まっていない状態で、いくら積極運用から安定運用への移行作業や相続対策を行ったとしても、資産全体のうちの使う部分と残す部分それぞれに過不足が生じてしまうおそれも。
これではせっかく現役世代のうちから、地道にコツコツと資産形成や資産運用について学び実践してきたにもかかわらず、最後の最後で満足のいく結果が得られないことになりかねません。
そこで「いかに使うか、いかに残すか」を老後世代に入って、できるだけ早期のうちから十分に練るようにしてください。
年代ごとに実践すること〜60代以降は「いかに使うか、いかに残すか」が最重要!〜
最後にまとめとして、20~60代におけるロードマップを参考に用意しました。
60代以降の資産運用、そして相続対策はその準備いかんによって、ご自身のみならずご家族等の近しい方たちにとっても、大きな影響を与える可能性があります。
最後の最後で詰めを誤るというようなことのないように、しっかりと準備することを心がけてください。