金利と利子の違い、単利と複利の違いがどこにあるかご存知ですか?お金を貯める、増やすにしても、お金を借りるにしても、金利の基礎知識と基本的な計算方法を理解しておくことは非常に重要です。そこで今回は金融市場とはどういった場所かを含めて金利の基礎知識と基本的な計算方法を学んでいきましょう。とくに72の法則はとても便利ですのでぜひご活用ください。
金融市場とは〜短期金融市場と長期金融市場〜
市場とは狭義の意味と広義の意味でそれぞれ以下のとおりになります。
狭義の市場の意味・・・専門業者の仲介で不特定多数の者が取引を行う場のこと
広義の市場の意味・・・狭義の市場と売り手一人と買い手一人の相対(あいたい)取引の場、さらに証券取引所のような特定の場所で行われない取引、銀行の店頭で行う預金取引、電話回線を通して行われる取引を加えたもののこと
広義の市場の意味は幅が広い上に曖昧でわかりづらいと感じるでしょうが、そもそも広く捉えると「市場」という言葉は曖昧に使われているということを理解してください。
ここではそんなものだというくらいで結構です。
上記で市場の意味を一応理解していただいたところで、ここからお話したいのは金融市場という金融機関を主な取引参加者としてお金の貸し借りを行う場についてです。
この金融市場は取引の長短によって2つに大きく分けることができます。
期間1年未満の金融取引が行われる市場を短期金融市場、期間1年以上の金融取引が行われる市場を長期金融市場といいます。
短期金融市場
この短期金融市場はみなさんが直接関わることはほとんどない市場ですので、ざっくりとだけお話します。
短期金融市場は大別すると、取引参加者が金融機関に限定されるインターバンク市場と一般の事業法人(通常は会社のこと)が自由に取引に参加できるオープン市場の2つに分けることができます。
ここから深入りするとさらに細分化されて・・・となりますのでここまでにします。
ただ一つだけ覚えておいていただきたいのは、この短期金融市場のインターバンク市場で取引されている無担保コール翌日物金利が日本銀行が金融政策において現在、政策金利としているものだということです。
ちなみにこの無担保コール翌日物金利とは無担保で借りて約定(契約が成立)した際の金利を指します。
長期金融市場
長期金融市場は資本市場とも呼ばれます。
この長期金融市場の代表格といえるのが証券市場です。
ようやく少し聞いたことのあるところにきたかもしれませんね。証券市場とは有価証券の売買を行う市場のことです。
この証券市場は株式市場と公社債市場の2つに大別することができます。
株式市場 ・・・企業が発行する株式を取引する市場
公社債市場・・・国債や社債等の債券を取引する市場
ここでお伝えしたいのはこの株式や公社債は、みなさん自身、証券会社を通じて売買することが可能であるということです。
そしてこの株式や公社債の取引は直接金融に属します。
この資産形成を行う上で直接金融による金融機関が取り扱う金融商品、つまり株式や公社債は検討する必要があるものです。
金利と利子の違いとは?
金利とはお金の貸し借りに対する資金の使用料(賃借料)のことで、賃借料の元本に対する割合で表したものです。
ここで注意したいのは元本に対して受け取る使用料(賃借料)の金額は、金利ではなく、利子と呼ばれます。
銀行預金では、みなさん預金者がお金の貸し手、銀行がお金の借り手となって、銀行がみなさんに対して利子を支払っているということです。
この時にみなさんが預けた元本に対してどのくらいで利子が支払われたかの割合を金利というわけです。
この金利は通常1年あたりの割合で示します。
これを年利といいます。
一つ例を出しましょう。
今、銀行に預金を100万円したとします。
これが1年後に101万円になったとします。
そうすると増えた1万円が利子というわけです。
ですから年利は、1%(=1万円÷100万円×100)となります。
よってこれを算式に表すと年利(%)=1年間の利子(円)÷預入元本(円)となるわけです。
これが金利を計算する時の基本となります。
ただ実際にみなさんが利子を受け取る時には上記の例でお伝えしたように1万円を受け取れるわけではありません。
なぜかわかりますか?
そう、利子には税金が取られるからです。
現在、銀行預金等の利子に対する税金の率(税率)は原則20.315%です。
とすると、先ほどの例のように1万円の(税引き前)利子だとすると、7,968円(=1万円×(100%-20.315%)÷100)になります。
※ 小数点以下は切り捨て
よってこれも算式に表すと、受取利子(円)=税引き前利子(円)×(100%-20.315%)÷100 となります。
ちなみにかなり細かいところですが、年利を計算する場合、国や地域によって1年を360日とするところと365日とするところがあります。
日本は1年を365日として計算しています。
金利の単利と複利の違いと計算方法
単利(たんり)と複利(ふくり)の考え方は非常に大切です。
まずはそれぞれどういうものかについて見ていくことにしましょう。
単利・・・元本のみに対して利子がつく計算方法
複利・・・元本と前回までについた利子の合計額に対して利子がつく計算方法
言葉での説明だけだと少しわかりづらいかもしれません。
一つ例を出して実際に計算してみましょう。
元本100万円で年利10%の銀行預金をしたとします(税金は考えないものとします)。
※ 単利と複利の違いを明確にするためにあえて高い年利にしています。
<単利>
1年後の利子は「年利(%)=1年間の利子(円)÷預入元本(円)×100」を変形して「1年間の利子=預入元本×年利(%)÷100」で求めることができます。
ですから、10万円(=100万円×10%÷100)となります。
単利では、元本のみに対して利子がつくので、利子は2年後も3年後もその先もずっと変わらず10万円ずつです。
これを表にまとめると以下のとおりになります。
よって、単利によるn年後の元利合計を算式にするとn年後の元利合計(円)=預入元本(円)+預入元本(円)×年利(%)÷100× n(年)となります。
<複利>
1年後の利子は単利と同様の計算で10万円になります。
2年後の利子は元本100万円に前回の利子10万円の合計額110万円に対して年利10%がつきますので、11万円(=110万円×10%÷100)となります。
3年後の利子は元本100万円に元本100万円と1年後、2年後の利子の合計額121万円に対して年利10%がつきますので、12.1万円(=121万円×10%÷100)となります。
4年後以降もこれの繰り返しです。
これを表にまとめると以下のとおりになります。
※ 小数点以下四捨五入
よって、複利によるn年後の元利合計を算式にすると、n年後の元利合計(円)=預入元本(円)×(1+年利(%)÷100)^n となります。
単利と複利では年数を追うごとに元利合計がどんどん開いていくことがお分かりいただけるでしょう。
ここでは預金金利というみなさんが利子を受け取る側でのお話をしました。
この場合は単利より複利の方が年々増え方が大きくなるのですから嬉しいですよね。
ただみなさんが利息を支払うお金を借りる側だったらどうでしょう?
当然複利だとどんどん支払の負担が大きくなって苦しくなります。
この単利と複利の違いは冒頭にもお伝えしたように非常に重要です。
しっかり理解するようにしていただければと思います。
複利を用いた便利な法則「72の法則」とは?
ここで問題です。
今100万円の預金を保有していたとしましょう。
預金の年利は2%です。
さてこの預金が複利で金利がつくとすると元本の100万円が2倍の200万円になるのは何年後でしょうか?
これを計算で求めようとすると複利の算式(n年後の元利合計(円)=預入元本(円)×(1+年利(%)÷100)^n)から逆算すれば(高等数学が必要ですが)求めることは可能です。
また求めることだけ考えれば、地道に電卓を使って1年後は102万円、2年後は104万円、3年後は106万円、4年後は108万円、5年後は110万円、・・・と続けていけばいつか答えにたどり着きます。
ただ上記の2つの方法だと、前者は高等数学を使うので数学があまり得意でないといった方には難しいですし、後者はかなり面倒ですよね。
この問題の答えをいってしまえば36年後になります。
ここで私は一切高等数学も使っていないですし、地道に電卓を叩いたわけではありません。
ではどのように計算したか?
実は冒頭にお伝えしたようにこの計算をするときにはある法則が使えるのです。
これを72の法則といいます。
この法則は以下のとおりになります。
下記にあてはまるaとzの場合、z年後の元利合計は預入元本の2倍になる
年利a(%、複利)×z(年)=72
つまり先ほどの問題の場合ですと、a = 2(%、複利)ですから、z=72÷2=36(年)となるわけです。
これだと簡単に計算することができますよね。
ちなみにこの法則通りに計算すると、現在の銀行の普通預金の金利の平均は年利0.02%ですから、この72の法則を用いて計算すると、たとえ複利で利子が増えていったとしても元本が2倍になるのに実に3,600年も掛かってしまいます。
これではそれまで生きているかどうかといったことを考える水準ですらないですよね・・・。
この72の法則は今後具体的に資産形成をしていく際にすごく役に立つ法則ですので、この機会に覚えてしまってください。