実際に資産運用に入る前に初心者の方はまず日本経済がどのような経過を辿る可能性があるかについて勉強しておくことをおすすめします。2016年5月現在の日本経済を語る上でのトピックとして大きなテーマの一つがマイナス金利になります。そこで今回はこのマイナス金利の影響、メリットやデメリットについてわかりやすくお話していきます。
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資産運用前に初心者が押さえておきたいマイナス金利の基礎知識
マイナス金利が導入された背景
マイナス金利がどういうものかのお話をする前にマイナス金利が導入された背景について簡単にお話していきましょう。
下の図をご覧ください。
日経平均株価の超長期チャート(1986/4/1〜2016/4/1)
これは日本の代表的な株価指数である日経平均株価の30年間の推移を表した超長期チャートです。
このチャートでは、1989年12月の38,957.44円をピークとして、その後長期にわたって右肩下がりの経過を辿り、2007年のサブプライムショック、2008年のリーマンショックによって同年10月には6,994.90円というピークの1/5を割り込む価格まで下落してしまったことが見て取れます。
この間、日本経済は日経平均株価の推移と歩調を合わせる形で長期不況に陥っていました。
この長期不況のことを巷間よく失われた20年と呼ばれることがありますから、皆さんもこれは耳にしたことがあるかと思います。
それではなぜ失われた20年とも言われる長期不況に陥ってしまったのでしょうか?
その要因を根っこから考えていくと複合的な要素が絡み合っています。
ただ、これだけ長期にわたって不況が継続してしまった背景にはデフレ(物価下落)があるというのが通説になっています。
このデフレについては今さら聞けない物価、需要と供給、インフレとデフレの意味をお読みいただきたいのですが、デフレになると、モノやサービスの価格が下がることによって、このモノやサービスを提供する企業の業績が悪化し、そこで雇用されている方たちの所得が減り、結果として所得を消費に回せなくなるので、またさらにモノやサービスが売れなくなって価格が下がるという悪循環に陥ります。
ですから、直近20年以上にわたる日本経済最大の課題はこのデフレをいかに抜け出すかということにあったわけです。
そこで、デフレ脱却を掲げて2012年末に誕生したのが現政権である安倍政権になります。
この安倍政権の経済政策を総称してアベノミクスと呼ばれていますが、具体的には当初よりアベノミクス3本の矢として大胆な金融政策・機動的な財政政策・民間投資を喚起する成長戦略を行うことを公言していました。
アベノミクス3本の矢の解説については今さら聞けない!?アベノミクスとは?〜成功か失敗かを語るその前に〜をご参照ください。
今回のマイナス金利に関わる経済政策で、アベノミクスの中枢をなす政策が第1の矢・大胆な金融政策になります。
この金融政策を主導して行うのが日銀です。
安倍政権は政権誕生の翌年に当たる2013年3月に元財務官僚でアジア開発銀行総裁を務めたこともある黒田東彦氏を日銀総裁に推し、国会の採決によって正式に決定しました。
これによって現在(2016年5月現在)の黒田日銀がスタートしたわけです。
黒田日銀では、デフレ脱却のために「2年で年2%物価を上昇させる」という物価安定目標を立て、そのためにマネタリーベースを2年間で従前の2倍にするという量的・質的金融緩和を打ち出しました。
このマネタリーベースとは日銀が供給する通貨のことです。
では、なぜマネタリーベースを増加させることがデフレ脱却につながるのでしょうか?
それは、物価はモノやサービスとお金(通貨)の量のバランスで決まるという考え方(貨幣数量説)に基づいて、お金(通貨)の量が増えることで、様々な経路でお金(通貨)が使われるようになる(と目論んだ)からです。
ところが、現実はそう甘いものではありませんでした。
日銀はたしかにマネタリーベースを増加させてはいますが、思ったようにお金(通貨)が使われていかないのです。
ですから、デフレを脱却し、インフレに転換することができていません。
これはなぜでしょうか?
これを説明するにはマネタリーベースを増加させるとはどういうことなのかを知る必要があります。
民間の銀行は日銀に当座預金を保有しています。
日銀は民間の銀行が保有している国債等を購入することで、その対価として日銀当座預金残高を増加させます。
これをイメージ図にすると以下のとおりになります。
これがマネタリーベースを増加させる仕組みです。
ここでお気づきになられた方もいらっしゃるかもしれません。
そう、マネタリーベースを増加させるだけでは、民間の銀行が保有している日銀当座預金残高が増えるだけで、お金が出回って使われるとは限らないということです。
そして、この懸念が現実のものとなっています。
そこで導入が決定されたのが、マイナス金利政策というわけです。
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マイナス金利とは
マイナス金利政策は、2016年1月29日の日銀金融政策決定会合で導入が決定され、同年2月16日に開始されました。
日銀の発表によれば、正式名称は「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」とされています。
資金の貸し手と借り手の関係は、借り手が貸し手に対して利息を支払うのが通常です。
これが、マイナス金利の場合、逆転する、つまり、貸し手が借り手に対して利息を支払うことになります。
ここで勘違いされやすいのは貸し手と借り手が誰なのかということです。
この貸し手と借り手には個人、つまり皆さんは含まれていません。
マイナス金利政策に関係するのは、貸し手が民間の銀行、借り手が日銀の場合です。
もう少し具体的にお話すると、先ほどのマネタリーベースを解説する際に登場した民間の銀行が保有する日銀の当座預金には従来年0.1%の金利がついていました。
つまり、民間の銀行は日銀の当座預金にお金を預けておくだけで利子を受け取ることができたということです。
これが、マイナス金利政策を導入することで、日銀当座預金残高の一部には従来と逆に民間の銀行が年0.1%の利息を支払わなければならなくなったというわけです。
これをイメージ図にすると以下のとおりになります。
このマイナス金利政策によって、これまで民間の銀行が保有する日銀当座預金残高に滞留していたお金を、銀行が企業などに貸出(融資)をすることで、市中にお金が出回るようにするという意図があります。
今のところ日銀の思惑通りにいっているとは言い難いですが、少なくとも日銀にしろ、ひいては国(政府)にしろ、デフレ脱却のためのあらゆる措置を講じているということは疑いようのないところです。
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マイナス金利の私たちへの影響〜メリットとデメリット〜
それでは本稿の最後にマイナス金利によって私たちの生活にどのような影響が出るかについてお話していきましょう。
先ほどからお話しているようにマイナス金利は金融緩和の一環になります。
ですから、その影響として全般的に金利を低下させることになります。
住宅ローンをはじめとしたお金の借り手からすると、利息の支払い負担が減ることになるわけですから、メリットがあるといって良いでしょう。
一方で、預金金利や国債をはじめとした債券の利回りも低下するわけですから、お金の貸し手、預金者や債券の投資家にとってはデメリットといえます。
このようにお金の借り手と貸し手によって明暗がはっきりと分かれることになります。
資産運用初心者の皆さんにとっては、マイナス金利によってお金の置きどころとして安全性が高い預金や債券は損失にこそならないものの、より利益を生むことが難しくなってきているということを念頭に置く必要があります。
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