先日、米国のGameStopという会社の株価が2021年年初と比べ約20倍になるという出来事がありました。
なぜGameStop株は急騰したのか?そこには、複雑かつ現代的な理由が潜んでいます。2021年に起きた波乱を簡単に紐解いていくことにしましょう。
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「ロビンフッド」と「レディット」
今回の出来事を話すには、「ロビンフッド(robinhood)」という投資アプリと、「レディット(reddit)」という交流サイトの内容を先に話しておく必要があると思います。
「ロビンフッド」は無料投資アプリ
「ロビンフッド」は、ロビンフッド証券という米国の証券会社が提供している手数料無料の投資アプリのことです。
新型コロナウイルスの影響により、このロビンフッドを使って株式投資をする若い個人投資家が増えたといわれており、彼らのことをロビンフッド族と呼んだりしています。その半分は、株の取引が初めてという投資家が多いのもポイントです。
「レディット」は掲示板サイト
「レディット」は、米国の掲示板型サイトのことです。日本でいえば、5ちゃんねる(昔の2ちゃんねる)みたいなものと言えば、わかりやすいかもしれませんね。
書き込みには登録が必要ではありますが、閲覧は自由にできることや、好きな話題を自由にやりとりができることから、月の利用者は4億人を超える、いわば巨大SNSのようなものです。
そして、レディットの投資コミュニティー「ウォールストリートベッツ(WallStreetBets)」には、前述のロビンフッド族の投稿が非常に活発に行われています。
今回の出来事には、この巨大SNSと無料投資アプリの存在が際立っています。どのような背景で、GameStop株は急騰することになったのでしょうか?
個人投資家 vs ヘッジファンド
今回の出来事には、実は主役が二人います。個人投資家とヘッジファンドです。この個人投資家というのは、先ほどお話したロビンフッド族です。出来事の背景は、分かりやすく言えば個人投資家 vs ヘッジファンドだったということです。
ヘッジファンドとは?
ヘッジファンドとは、様々な投資手法を駆使して市場が上がっても下がっても利益を追求することを目的としたファンドです。元々は、「ロングポジション(買い)」と「ショートポジション(売り)」を両方保有することで、リスクを回避するという発想から始まりましたが、今では、ハイリスク・ハイリターンの投資のひとつとなっています。「ショートポジション(売り)」を持つことも可能な投資なので、割高だと判断した株については、売建をすることで利益を取ろうとします。
※ヘッジファンドの詳しい解説については、別記事で記載する予定です。
ヘッジファンドの空売りにSNSを通じて個人投資家が対抗
今回の出来事の中心にあるGameStopという会社は米国のゲーム小売会社で決算も赤字でした。そのため、現在の株価は割高であると判断したヘッジファンドは空売りを仕掛けていました。
そんな時、レディットの投資コミュニティーに「空売り勢を締め上げろ!」と書き込みがあり、ロビンフッドを利用している個人投資家が共闘をしてヘッジファンドに立ち向かうことになりました。
個人投資家がGameStopの株を買う、もしくはコールオプション(買う権利)の買いをすることで、株価が急騰すると、空売り(売建)をしているヘッジファンドは損が拡大していきます。すると、売っている株を買い戻しせざるを得なくなり、さらに株が買われて上がることになります。
つまり、個人投資家が空売りをしているヘッジファンドを標的に攻撃、買い戻しをさせることで巨額の資金が動き、株価が急騰したというのが、今回の出来事の急騰の全容だったというわけです。
いわば相場操縦的な動きではありますが、このようにヘッジファンドを攻撃する動きが強まってきているのです。
ロビンフッドはGameStop株の取引を制限
この事件を受け、アプリ提供会社であるロビンフッドは、GameStop株などの取引を制限することを決定しました。
すると、GameStopの株は急落、そして乱高下することとなり、高値で購入した個人投資家は損をすることになったわけです。
この制限について、個人投資家は取引を制限されたと反発し、米国の議員からも批判が上がりました。米国証券取引委員会(SEC)もロビンフッド側の取引制限についても特定銘柄の取引を「不当に阻害する」可能性があると調査をすることとなりました。
今後の動きが注目されます。
まとめ
GameStop株乱高下の背景には、SNSやアプリを活用し、共闘をした個人投資家によるヘッジファンド潰しがあったということです。
SNSでのやり取りが活発に行われる、現代社会ならではの事件と言えるでしょう。しかしながら、相場操舵的な動きでもあることもあること、証券会社側が個人投資家に対して、個別銘柄の取引を停止する行為が不当かどうかなど、当局などの今後の動きが注目されます。